2010年05月06日

B級ハリウッド映画的アニメ 「いばらの王」 感想

いばらの王
いばらの王


↑は原作のマンガですが、未読なので映画版でどう変わったかは解りません。


GWは原義に忠実に、映画を見てきました。と言うわけで、ハルヒを観た時に予告編に惹かれた「いばらの王」です。ネタバレ有りですので、これから見る人は最初の結論部分以外は読まない方がいいですよ。

舞台は、メデューサと呼ばれる石化症候群が流行し、人類が滅びに瀕した近未来。大手製薬会社が計画した、患者の冷凍睡眠による治療法開発までの時間稼ぎ計画に当選した人々が、目覚めた時変わり果てていた施設からの脱出を目指す、娯楽大作です。


でまあ、いつもどおり結論を先に。

1,娯楽映画として凄く面白い。映像も音楽も良くできていて、ワクワクしながら楽しめる。
2,しかし、細部はかなりグダグダ。突っ込みだしたらきりがない。
3,つまりは、B級ハリウッド映画そのもの。


さて、順番に見ていきましょう。

1のは娯楽映画としての完成度ですが、これは非常に高いです。生存・脱出・真相究明という三つの大目標を最初から提示して観客を引き込みつつ、伏線は画面できちんと強調して解りやすく展開させます。
個々のアクションシーンも、絵面を毎回変えて飽きさせず、考え抜かれた構成。背景からして、「汚れた睡眠施設」→「崩壊しつつある研究施設」→「中世の城」→「開放空間」と展開させ、主人公達の武器もそれに合わせて変化させるなど、とても巧み。予告編を見た時の、「ゲームにしたら凄く面白いんじゃないか」と言う感想は、外れていません。
また、シナリオは、後ろの観客が終わったあと言っていた言葉を借りると「フラグを裏切らない展開」。「あ、やられるー!」と言うシーンでは毎回きちんといわゆる「騎兵隊」が到着しますし、「こいつ、もうダメだ」と言うキャラは、きちんと退場していきます。
いやまあ、毎回溺れるヒロインとか、繰り返しギャグになりかかっている所もありますが、安心して見ていられます。勿論、「ご都合主義が過ぎるだろ!」とか怒り出す人も多いとは思いますが。

しかし、問題は2。もう何というか、シナリオの細かい整合性や大目標については、かなりグダグダです。
結局双子については最後まで良く解らなかったんですが、(以下反転)
実は死んでいたのがシズク(姉)で、主人公カスミは二つに分裂。片方がシズクを装う形で城の中で眠り姫となり、もう一人のカスミに「シズクの居る世界」を提供しようとした。
って事でいいんでしょうか?姉と妹のどっちがどっちか解らなくなる(生存メンバーが主人公を名前で呼ばないため)事も含めて、無駄に混乱を振りまいているようにしか見えません。
あとは、結局ロシア人は何がやりたかったのかとか、S級適合者がどこへ行って何をしようとしていたのかとか、疫病全く解決しないですよね?とか、もうグダグダ。本当に言い出すときりがなくて、なんで後詰めの兵力が来ないのかとか、そもそもマルコがSASで作戦担当がNSAなら、両者の目的は実は違っていたんじゃないかとか、伏線っぽいアレコレもことごとくスルーされております。
まあ、そんな細かい所は置くにしても、想像を実現化するウィルス(伏線無し。そもそも、「どうやって」実現化しているかを軽くでも説明しないと、敵の能力の限界が解らずハァ!?となってしまう)とか、メドゥーサまいたのは製薬会社だったのかとか、治療法はあるのかとか、基本的な事が抜けすぎていて訳が分かりません。
画面上では、なんかいい話でハッピーエンドになっているっぽいのですが、何一つ解決していないという投げっぱなしジャーマンは何なんでしょう?

また、シナリオ面でも、状況を作るための進め方に強引な所があり、目覚めて数分で主要メンバー以外が全滅したり、特に理由もなくピンチから生還したり(マルコは不死身ですか?)と、さすがに突っ込みたくなる所多数。
そこは娯楽なので良いとしても、
格好良くヒロインが俗物キャラを説得成功→即死亡
命を賭して情報をヒロインに託す研究員→即メモリーカード焼失
大見得を切って敵役と相打ちになるマルコ→実は生きてました→でも即死亡
のように、直前のイベント内容をぶち壊しにする突発イベントが続くので、脱力感に襲われる事もしばしば。特に真ん中については、全くもって何がやりたかったか解らないシナリオで、頭を抱えました。そのメモリーカードを持って帰っていれば、普通にハッピーエンドって事になりましたよね?


とまあ、細かい事を言い出せばキリがないのですが、結局は3の結論。
これはハリウッド的な頭空っぽにして楽しむべき、B級娯楽アクションなので、細かい事言わずに楽しんだもん勝ちだと思います。実際、一緒に観に行った相手との感想戦がツッコミ大会になりつつも、十二分に楽しむ事が出来ましたから。その意味では、終わった後ネットでもリアルでも、感想を言い合える環境こそが重要だろうと感じました。

とりあえず、楽しめた事は間違いないので、私は満足ですよ。BLU-ray買おうとか、そう言う気は一切起きませんでしたけど。



5/9追記
公式サイトの隠しページに、謎の答えが書いてありました。パスワードは、カスミのキャラクター紹介ページに載っています。「こんなもん解るか!」と言う代物や、「何の説明にもなってませんよね?」という代物まで様々。って言うか、メドゥーサの正体……
結局の所エンディングで受けた印象は何も変わらず、むしろバッドエンド気分が大幅増。何だかなあ、という感じです。



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タグ :アニメ映画

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この記事へのコメント
あの描写で「死んだのがシズク」って解釈できるのが凄いですね。

突っ込まれるべきはあなたの理解力です。
Posted by com at 2010年07月09日 11:06
理解力ですか……
そもそも、後半しつこくカスミとシズクを混同させる描写を意図的に繰り返している上に、主人公が真相に気づくシーンが、「シズクがいるはずの場所に行ったら手首に傷のある死体」なわけですよ。崖下に落下したのはシズクと言う結論に至るのは、特に不自然ではありません。(正確には、どっちとも取れる)あそこが目指していた制御室ではなく単なるサンプル保管ルーム?何て事は、見ている人間にはわかりません。
実際、原作未読者の感想は「意味がわからない」と言うものが多く、わけてもあの双子の描写はよく指摘されているポイントです。
複数の取りようが可能な描写ですから、製作者の提示する「真相」と自分の「理解」が合っていても、自慢にはなりませんよ。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年07月09日 22:23
私も com さんと同じく、転落死したのはシズク(姉)ではないと思ってます。






転落死したのは、カスミ(妹でメガネのほう)。
(公式サイトの隠しページからもそれが確信できます。)

その瞬間、シズクは強大なトラウマ持ちとなりメドゥーサの適合者となり
自らの願いから暴走して、カスミの代替(オルタナティブ)を生み出しました。

それを知った研究所スタッフやヴェガは
シズクがアリス以来の第2の適合者であることを察知し
シズクをハイエンドラボ(LEVEL0 本編の最後のステージです)に搬入する。


以上です。
Posted by むぎちゃ at 2010年07月18日 02:38
RSS拝見。これはミスディレクションを誘う展開なのでそれにハマった人に対しては、製作陣は「してやったり」顔なんですわ。鑑賞者の理解力が求められる出来なのですが、このブログ記事でわからないと書いてらっしゃる部分は、原作を読んでない私ですが理解可能な範囲。おおかたのセリフと映像で説明がなされてましたよ。
Posted by ソーン at 2010年07月18日 03:37
「真相」なんぞ、説明されずとも知ってますよ。エントリーの中に、公式サイトの隠しページを見たと書いてあるでしょう?
ハンドルを変えて二度も書き込む前に、元のエントリー位確認したらどうですか?
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年07月18日 20:45
上記の恥ずかしい方は、懲りずに同じIPで美しくない言葉を書き込んで下さったので、削除・コメント禁止とさせていただきました。

なんでこの手の方々は、下手な一人二役がばれた途端に、逆ギレして更に恥をさらすのか……
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年07月19日 00:10
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