2010年05月30日

Angel Beats! 第9話 感想

Angel Beats! 1 [Blu-ray]
Angel Beats! 1巻 [Blu-ray]

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今回の副題は「In Your Memory」。なぜ「MY」ではなく「YOUR」なのかは、見終わっても謎。

今回は先に結論を書かせていただくと、「何この独善的な主人公?」。そして、「そんな流れで最後まで行ったら、一気に駄作に落っこちるぞ」です。

以下、流れに沿った細部を。



主にシリーズの落としどころについて不安を孕みながら迎えた9週目。とりあえず前回の天使の人格統合については、一旦気絶という無難な流れで間を置きます。
珍しく、と言うかはじめて、ゆりが反省してますね。今まで散々天使ちゃんをいじめ倒して来ただけに、逆に新鮮に感じたり。まあ、これまでは誤解とは言え「敵」だったので、仕方のない所でしょうが。




さて、物語は「目覚めた天使はどうなるのか」を主眼に進むわけですが、やはりここで物語に乗りきれない感じが強くなります。
Keyのゲーム中盤のいつものアレですね。ヒロインの命運や主人公の恋愛はとりあえず置いておいて、世界の秘密はどうなってるの?と言う。リトルバスターズ!の、ヒロイン個別ルートが正にこれでしたが。

とは言え、前回の次回予告で出ていた「全部思い出した」という音無の言葉がある以上、そっちの話も出てくるのは必定。最後の方かなあ、などと思っていたわけですが……



いや、そんな唐突な!
天使を看病しながら居眠りしていた音無君は、そのまま夢の中へ。そして、回想。おいおいなんだこの適当さ、と思いつつ、天使が意識不明になっている事との関連性をまずは疑うところ。回想シーンではなく、音無が一時的に現実に「戻った」と解釈するならば、やはりこの世界は、天使が作り上げた、リトルバスターズ!で言う虚構世界と言う可能性も出てきます。天使が世界の根幹に関わりのある特別な存在である可能性は、まだ捨てたくないところ。



ところで、リトルバスターズ!のように爆発の危険があるならともかく、最優先すべきは応急手当ではなく救助要請じゃないかと思うのですが。整備用通路とかさがして、とにかく外部と連絡を取った方が、素人手当をするより多くの人を救えそうです。医学部だって、実践的な手当ができるようになるのは、甘く見積もって卒業直前。単なる受験生の音無にできる程度の手当では、生き死にには影響しません。


どう見ても内臓か幹血管が傷ついてます。本当にありがとうございました……

ところで、この事故のモデルは豊浜トンネル崩落事故ですかね。バスじゃなくて電車だけど。あっちは即死だけど。



この回想シーンが今一盛り上がらないのは、オチが解っていると言うこと以上に、回想で悲惨、というのが食傷気味だからじゃないかと思います。特に音無は、既に一回回想をやって居るわけで。

ところで、食料なんか1月食べなくてもとりあえず死にませんから、問題は水だけ。リサイクル方式(尿は出た直後なら単なる濾過された血。数日なら問題無く生きられます)なら、三日どころじゃなく生き延びられるはずですが。外気が通っているなら、トンネル内に結露も出ますし。

と言うか、7日経っても内部に連絡もないほど救助が遅れた理由は謎だったり。複線化されているJRのトンネルであれば、なおさら復旧は早そうですが。



そして、問題となるのは回想シーンのクライマックス。
ここで、「お前ら、救助されれば助かるし、救助されなかったら脳死の前に死んじゃうから、それ無意味」というのはっちゃいけないんでしょうか?でもなあ……臓器移植って、そう言う物じゃないしなあ。

臓器移植は「脳だけ死んで、臓器は無事」が基本条件です。具体的には、体はぴんぴんしてるけど脳は死んでて生命維持装置を外したら死ぬ、と言う状態で判定が行われます。つまり、極めて特殊な死に方をした人間だけが可能なのです。これが、症例が一向に増えないことの理由です。一応普通の心停止後も法的には可能ですが、普通は脳が死ぬ前、あるいは脳が死ぬと同時に臓器が死にますからね。

勿論、彼自身は誤解を抱いたまま幸せに逝ったのかもしれませんが、それじゃ悲しすぎるじゃないですか。リーダーシップを発揮し、多くの被災者を救助まで助けた、だけじゃダメだったのでしょうか?あの部分は、無意味さを前提とした伏線でないなら、蛇足だと思うのですが。



目覚めた音無を迎える天使。
ここは解釈のしようがあると思います。音無は、一度現実世界に戻り、人生の意味を得たのでしょうか?それとも、単なる回想だったのでしょうか?回想なら、彼がこの世界に来る理由が大幅に減殺されます。(彼自身は、救助が間に合ったことに気づかなかった、と言う間抜けな可能性もありますが)そうでないなら、音無がこの時点で成仏しないのが不思議です。何しろ、仲間への思い入れで成仏しないのなら、ほとんどの生徒は消滅しないはずなのです。
あとから天使が言うように、青春時代を過ごせなかった無念が世界に魂を縛っているなら、学生として得た友人や恋人をおいて(あるいは共に逝ったとしても、もはや一緒に過ごすことはできないでしょう)昇天するのは、本末転倒になるわけで。


一番自然に考えれば、見知らぬ人達を救っただけでは、彼は満足できなかったのでしょうか。まあ、そりゃそうです。彼の医者志望は、結局の所妹を救えなかったことの代償行為で、一番最初の後悔は時間が癒さない限り、何をやっても取り除けなどしないのですから。
そして、この構図で明らかなように、音無にとって天使は救えなかった妹のうつし身。音無が「救った」と満足して逝けるようになるための存在は、彼女しか居ません。そして、音無に「あなたは良くやった。もう休んでいいよ」と言えるのも、また彼女だけのはず。


そう、このように。
しかし、だからこそ、音無が悟りを開くポイントとなったドナー関連の設定のいい加減さは痛い。痛すぎる。音無のあの様子では、待っているのは普通の死であって、脳死ではありえません。ついでに、腹部の様子から見るに、敗血性ショックで臓器自体がボロボロになっていること請け合い。
勿論、制作者がそれを解った上で音無の偽りの救いを描いて居るとすれば、実に見事と言うしかないです。むしろ、それを期待している私がいます。
何しろ……


「あいつらも、俺と同じように満たされた気持ちになって、みんなで、この世界からされればいいな」
こうして彼は、天使の立場に身を置くことになるのですから。ゆりがクライマックスで彼の誤解を喝破できれば、最高の盛り上がりとなることでしょう。


「私、何か悪いことしたかしら?」と言いたげな天使ちゃんのこの仕草に、全部どうでも良くなりそうですが、勿論それで良いはずがありません。大体、物語としても、残り四話で「そして全員満足して成仏しましためでたしめでたし」では、安っぽいにもほどがありますし。


そしてまたここで、サラッと出てくる天使の問題発言。
「ここに来るのはみんな、青春時代をまともに過ごせなかった人達」
やはり、世界のシステムが気になります。一体この世界は何なのか?神はいない、いるのはPCだけだとしても、何らかの法則によって魂の振り分けが行われていることになります。
まあ、その辺をすっ飛ばすのがお約束ってのは解るのですが、SF好きとしては、そう言う根幹を置き去りにしたまま進まれるのは辛い物が。毎度おなじみKEYの「奇跡」については、まあファンタジーとして割り切れるんですが、世界の構造とか言う物を大きく提示しておいて、有耶無耶のままはちょっと勘弁。



ここで、結局音無は「この世界は魂の救済場所」と断言してしまうわけですが、そんな物、救済などされたくない心根の持ち主にとってみれば、大きなお世話なわけです。大体、生き甲斐・幸せを見いだした瞬間に消えるって、どんな嫌がらせ世界ですか?

と言うかですね!ここで音無が出す結論って、典型的な宗教家の押しつけ教義なんですよ。みんな満足して天国へと旅立つのが幸せだから、笑って一緒に逝きましょう、ってね。
これはやはり、上で描いたとおり、ゆりが音無の誤解と偽善性を喝破して、対立へとなだれ込む展開しか無いでしょう。
「救ってやりたい」とか、本当に何様のつもりかと。

まさか、このまま音無と天使のコンビが次々に魂を昇天させていく、シックスセンス中盤展開をやるとしたら、作品としては最低評価にならざるを得ません。しかも、音無は二重スパイとして過去を聞き出し昇天へと導くという、有り体に言って小ずるい役柄。え、そんな話で良いの?これだけの舞台を用意して、やりたかったのはそんな話じゃないですよね?

うーん、凄く不安になってきました。次回予告を見るに、本当に順次昇天ツアーで話が進みかねない雰囲気。
ちょっと、次週を楽しみに待つという感じではなくなってきました。単なるブラフであればいいんですけど……



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