2010年06月05日

友達100人できるかな 3巻感想


友達100人できるかな(3) (アフタヌーンKC)
友達100人できるかな(3) (アフタヌーンKC)


1巻の感想はこちら
(2巻は、印象が変わらなかったので感想を書いてません)


テーマと内容の齟齬が気になっていた「友達100人できるかな」ですが、この巻のラストで面白い事になってきました。

この巻でも、主人公は友達を作っていきます。鬼のような先生、少女マンガ好きの女の子、秀才の少年……
しかし、その方法論、さらには友達になるために必要だった心性自体が、主人公が未来から持ち込んだ物です。つまりここでも、主人公が作っている「友達」は、かなり不健全な印象になります。
鬼先生の話などが特にそうで、主人公が彼を尊敬できるのは、主人公が大人だからに過ぎません。しかも、先生が望んでいたことを考えれば、あれは先生を騙したに等しいわけです。
一巻にあったSF好きの少年との友情とのような、子どもに戻る事で見えてくる世界はありません。

そして、問題の三巻最終話。ここで、ついに「友達100人」を達成したプレーヤーが現われます。この彼の描き方は見事。現実で何も持たないが故に、過去世界に留まろうとするプレーヤー。タイムファンタジーとしては、これがむしろ正道です。
しかし、主人公は彼を未来へと帰すのです。時間切れによってそうせざるを得なかったというのは、実は余り意味がありません。過去をやり直し、望んだ生活を手に入れ、幸せを手に入れた元少年に、なんと残酷な事をするのか。

そしてさらに、この後「プレーヤーの抜け殻」が描かれます。ゲームが終わった時、プレーヤーが100人の友達を失うだけではありません。プレーヤーにとって100人の大切な存在が、余りに理不尽な形で友達を失うのです。

生きていれば友人ができたり去ったりするのは道理。しかし、親しければ親しいほどその存在は魂の一部となり、その理不尽な消失は正にトラウマとなる。これは、誰でも同意できることだと思います。死だったり下らない諍いだったり、あるいは原因が分からないまま音信不通になったり……
そもそも人生のつらさの爆心地は、いつだって人間関係がからむのですから。

閑話休題、今まで主人公がこの「ゲーム終了時の問題」に気づいていなかったのはボンクラも良い所ですが、とにもかくにも、認識してしまいました。以後は、単純に友達を作って喜ぶわけにはいきません。再度友人になれるのは別次元の別人である以上、「何度でも友達になる」は、何の解決にもならないのですから。

だとすれば、今後主人公は、何らかの形で人間関係を残したりする方法を探す必要があります。(まあ、宇宙人とは関係が残るでしょうが)

もっとも、このまま同じようにミッションを続けたあげく、「別れもまた成長となる」みたいなメッセージで終わらせてしまう可能性もあるのですが。
実際、他の上がりプレーヤーを出すのであれば、彼が何らかの方法でこの時代に残るのを描くべきだったのじゃないかと思うのですが。確かに、主人公は妻を元の世界に残していますが、友達100人と比較できるのか、という事になるわけで。

友達が、100人もいたことがありますか?私にはないし、それだけの物を一編に失うというのは、もはや死ぬのと変わらない気がします。死後に友人に忘れられるのが第二の死、と言う言葉がありますが、社会的生物である人間にとって、強固な人間関係は身体の延長と言っても過言ではないわけですから。


まあ、そう言ったテーマのブレとは関係なく、雰囲気や個々の話の作り方は相変わらず出色。良い意味で汚い絵柄が80年代の風俗と噛み合って、見事なノスタルジー空間を演出しています。
とりあえず、テーマ的にも主人公に悩む内容が出てきて深まる可能性が提示されましたし、やはり最後まで付き合おうと思います。

ええと、あと推定84話ですか。キングクリムゾン方式(「そして半年後」で最終回とか)で終わらせるのはいつでもできるので、その意味では打ち切られても安心という感じはしますが。



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