2010年06月06日

Angel Beats! 第10話感想

Angel Beats! 1 [Blu-ray]
Angel Beats! 1巻 [Blu-ray]



いままでの感想はこちら



さて、前回の展開にもの凄い不安を感じ、酷い展開になる危惧を覚えつつ迎えた、第十週「Goodbye Days」です。
そしてその不安は見事的中し、もうどうしようもないところまで行ってしまいました。



初っ端から、「ユイはもう十分に幸せなはずだから、最初にポアして上げましょう」と言う趣旨のセリフをのたまう主人公に、天を仰ぐ事に。
人の心が解らないどころか、ここまで完全な独善は…… 慈悲深い笑顔に、戦慄を覚えます。


一方、天使ちゃんは何を考えているか不明ですね。結局、目的が同じで協力しているだけで、音無のことなどなんとも思っていないのではないのではないか、とも思わせます。



この辺の描写については、今一作者の意図が読めません。
間抜けに失敗することを前提とするギャグ描写?少なくともこの作戦、視聴者の好感度を稼げる内容ではありません。騙して情報を聞き出し、相手を消す。何というか……

なお、今回はオープニングムービーは無し。



かくして引き出されたユイの過去は、この通り。脊損による四肢体幹機能障害かよ!いや、策略弄して聞き出して良い内容じゃないだろうと。



その後のユイの希望完遂ツアーは、定型どおりのギャグ展開。面白いんですが、笑って良いものかどうか悩むところ。



作画も気合が入って、思いの外可愛らしいユイが見ていて飽きませんが、やはり乗れません。何しろ、音無がやっているのは、こんな魅力的な彼女を本人の意志とは無関係に、消滅させようとする行為なのですから。



そして、ユイに残された最後の希望は「結婚」。
いや、女の究極の幸せ云々にジェンダー的ツッコミを入れるつもりはありません。テレビで振りまかれる幸せな結婚像に憧れていた彼女の思いは、誰にも否定できないはずですから。

ただ、これは多分制作者が考えた以上に「重い」願いだと言う事は、指摘しておく必要があると思います。重い障害を持った人は、普通の生活はできません。その中で、家族と本人が願う切実な思いが、「したいけれどもできるわけがない結婚」と言う形で、良く口に出されます。
本人にとっては、障害(特に後天であればなおさら)によって失われた、「普通の日常・人生」の象徴として。家族(特に親)にとっては、家族亡き後の不安と表裏一体な感情として。
また、本人にとって、障害によって失われた家族以外との人間関係の象徴としての意味も持ちます。多くの場合、重度障害は人生を閉ざしてしまいます。その「閉じる」ものの中で、一番大きいのが人間関係です。なにしろ、家族(および施設職員)以外との関係は消滅してしまいますから。
遮断された外部、つまり社会や豊かな人間関係の象徴として、「結婚」は強く希求される場合が多いのです。死海のリンゴと言うか、ユダヤ人にとっての聖地位の勢いで。

だから、普通の日常を奪われたユイがこれを望み、昇天へのキーとしていることは、非常に説得力があります。取材の結果だとすれば、良くやったと思います。

ですが、だからこそ、この展開には許し難い物を感じるのです。

何故なら、この世界において願いである「結婚」の先に待つのは、真の死なのですから。「結婚できたら死んでも良い」と言うのは、慣用句や自虐としてならともかく、事実にするには酷すぎます。そもそも、ユイやあるいは現実の重度障害者は、結婚ができれば良いのでしょうか?至る過程はともかくとして(それは、ユイが既に得ている豊かな人間関係で代替されます)「死が二人を分かつまで」と言う濃密な(ま、多くの場合悲惨なドロップアウトに終わるわけですが!)関係性が「続くこと」こそ、重要な要素のはずです。

また、こう言う展開を見せられると、この学校をもした死後世界自体が、幸せな夢を見せて成仏させる、悪質な洗脳装置にしか見えなくなってきます。

これって、正に現実の宗教がやってる事なんですよね。現実の理不尽さも、社会の矛盾も、怒るべき悪でも戦うべき対象でもなく、死後の幻想で代替される物として受けいれるように迫る。神をぶん殴りたいという、SSSの身を切るような怒り・悲しみに対置される物がこれでは、悪質な宗教作品にしか見えません。



「じゃあ先輩、私と結婚してくれますか?」
涙をためてそう問いかけるユイの目線は、見事に音無の偽善を射貫いています。
満足させる、成仏するのが一番良いなどと言って近づいておいて、ではどれだけその行動に責任を持てるのか?

現実の重度障害者が、遠巻きに同情を向ける相手に投げつける言葉と、これはパラレルです。




そして、これに頷く事ができない音無は、覚悟の無さを露呈するわけです。少なくとも、「安易に頷いてやればいい、どうせユイは消えるのだから」という風に行動できない時点で、彼は自分の欺瞞性に気づいていることになります。



ただ、こう言った葛藤や音無が自覚すべき自らの矛盾も、日向の乱入に助けられて立ち消えになってしまいます。
ついでに言うと、日向の感情がまるで描けていないので、このシーンの不発具合もひどい事に。いくら音楽で盛り上げても、0は何倍しても0。今まで、日向は音無はともかくユイに対するフラグ描写は圧倒的に足りません。

しかも、ユイはここで生前の自分を前提に語るのですが、これに対する日向の答えなど、もう!!
「どんなハンデを抱えていても」って、目の前のユイにはハンデなど無いのですから、いくらでもきれい事は言えるんですよ。だって、ハンデなんて実際問題抱えてないんですから!!

この辺りで、さすがにふざけるなと画面に向かって絶叫したい気分に。何ですか、このくっだらねえ綺麗事で構成された白々しいセリフ群は?

ここで、野球回のようにオチを付けたら逆に絶賛するところでしたが、そう言うオチもなく、ユイは昇天。



つまるところ、望んでいた生活を手に入れて楽しく過ごしていた少女を、一時の夢と引き替えにあの世へ叩き込んだわけです。
これが幸せ?主人公が目指すべき道?と言うか、この世界の目的?そんな物、正にクソくらえでしょう。「いい話」っぽく描く演出が、度し難い傲慢さを醸し出しています。

はい、結論出ました。「ふざけるな」。この後の展開が大きく動かない限り、評価は変わらないと思います。



こんな光景は存在しなかったし、これからも存在する事はないんだよ!それに近い事が出来たかもしれない可能性は主人公が摘み取ったし、世界のシステムはそれが実現すれば対象を消すんだよ。
これ以上に理不尽な世界のシステムがありますか?反逆を謳うSSSへの感情移入はどんどん高まるのに、物語はそれを否定する。まあ、「価値観の違い」って言って良いんですかね?でも、これを良い話として描ける感性は、正直理解できないです。

だって、結局今回音無がやり、また世界がそうすることを求めている事は、直井が三回前にやっていた強制昇天と変わらないわけですから。


なんか、新展開が来るみたいですけど、そんな物もはやどうでも良いですよね。テーマがテーマな以上、期待する事などほぼありません。ゆりっぺは、超常現象なんか放っておいて、神(この世界)の論理の体現者となった音無を、とっととぶん殴るべきだと思います。
って言うか、そう言う展開で世界の秘密に迫るなら、主人公の宗教家クラスチェンジとか要らないでしょ?ユイ消して、作劇として何がやりたいんですか?


追記:
さすがにこの回では切れたり見限った人も多かったらしく、結構体系的な批判も出てきていますね。

神に反逆するアニメに反逆する(AS Days)
該当記事について(同上)

私がずっとしてきた批判と重なる点も多く、(私にとっては違うんじゃないか、と思うところも勿論ありますが)やっぱり違和感もつ人もそれなりにいますよね。
この辺は、多分プレイ時間と感情移入度の高いゲームであれば、力尽くでねじ伏せられたであろう「ひっかかり」を、アニメでは十分に解消しきれなかった、と言うのも大きいかもしれません。

しかしまあ、他の作品に関しても何度か書いてますが、「手抜きではないのに残念な内容」って、本当に悲しくなりますよね。今回の作画なんかもの凄く活き活きとしてましたし、音楽だって単品では悪くないんですよ。何より、プロモーションにもオリジナル作品としては破格なほど力が入っていた。
勿体ない話です。



その他のKey関係エントリーはこちら








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ユイを卒業させる!

音無がまず選んだ成仏ターゲットはユイにゃん!
ユイにゃん消えないでー(ノД`)
いや、成仏を応援するべき??
音無と...
Angel Beats! 第10話「Goodbye Days」【空色きゃんでぃ】at 2010年06月07日 21:29
Little BraverKeep The Beats!
このくらいの人並みの幸せが与えられればそれでもう充分でしょ?さあ笑って行こう?っていう主人公。何様か。僕があの世界に行ったら不死身なのをいいことに永遠...
Angel Beats! について、良い批評をされているブログをご紹介致します。ネオエクスデス・音無。【ねこねこブログ】at 2010年06月08日 04:03
Angel Beats!2 【完全生産限定版】 [Blu-ray]クチコミを見る

次回予告で予想できた通り、特に捻りもなく、ゆいがこの世界から卒業していきました。以前から、ゆいのように明るく振舞っている...
(アニメ感想) Angel Beats! 第10話 「Goodbye Days」【ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人】at 2010年06月09日 07:09
この記事へのコメント
ヒット数稼ぎのトラックバックを否定する気は無いんですが、なんでボロクソに非難しているうちに、言及があるわけでもないのに、ベタ誉め萌え萌えな感想がトラックバックしてくるんだろう……
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年06月07日 22:09
 カルトも何も、天使とか出てきて、「亡者を成仏させる」のがテーマの作品なんですから、宗教臭くなるのは当然でしょう
(「亡者は成仏させるもの」というのは宗教の基本、つまりスタッフもそれが当然と考えていたということでしょう)
 ならば偽善臭く説教臭くなるのも当然、わからなかった方の読みが浅いだけでは?
 正直、今さら「裏切られた、こんな作品クソだ、もう見ない、スタッフ士ね」と騒ぐ方もどうよと思います

 あと、「永遠の青春の日々」というのも、一見幸せに見えます
 が、一見幸せでも変化も進歩もない日々というのは、実は不自然な「ある種の牢獄・いや地獄」であり、いつかは終わらせなければならない、脱出しなければならない、という発想、そういう発想に基づいて作られた作品もあります
 古くは押井守のビューティフル・ドリーマー、最近では谷川流の「学校を出よう!」がそうでした
(同じ谷川作品の涼宮ハルヒにも、そういう傾向が見られます)
 それをただ気に入らないから、クソ扱いするのは正直どうかと…
Posted by 通りすがり at 2010年06月10日 20:52
ええとね、こう言うことは言いたくないんだけど、ちゃんと色んな作品を見た方が良いですよ。

「亡者を成仏させる」作品は沢山ありますけど、普通それらは「成仏させることが良い事」だと言うのを最初に提示します。(と言うか、してないせいで読者が引くような作品が駄作。正にこの10話みたいに)典型的には、亡者は周囲に害を与える、とかね。

逆に、「亡者は成仏させるべき!」と言う価値観が、しっぺ返しを食う作品も沢山あります。幽霊と幸せに暮らしてる主人公の所に乱入してきて、独善的に「お前は間違っている!」とか喚く宗教関係者、なんてのは、ラノベでも鉄板展開ですよね。

>偽善臭く説教臭くなるのも当然

なんて言うのは、名作を残してきた先人に対する侮辱も良い所です。


>一見幸せでも変化も進歩もない日々というのは、実は不自然な「ある種の牢獄・いや地獄」であり、いつかは終わらせなければならない、脱出しなければならない、という発想

その発想が、全く共感できる形で描かれていないんですが?
普通停滞を脱して「先へ進む」向こう側には、帰るべき日常や今を失ってでも手に入れるべき何かが提示されます。

ビューティフルドリーマー、本当に見たんですか?あれは、「永遠に続く日常でも、思い人が居なければ意味が無い」と言って主人公が現世に帰還する話ですよ?
前提が全く違う。

学校を出よう!はどこが脱出か良く解りません。そもそもあの学園は、一時的に押し込められてる所でしょ。そもそも行き場所がない、成仏を避ける=生き残る事を希求してる戦線メンバーと、全く被りません。

と言うか、テーマ的にはもう完全に破綻してるんですから、天使ちゃんマジ天使という方向で楽しめる、と言う部分で一点突破した方が、擁護としては正しいと思いますよ。そっちは事実なわけですから。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年06月10日 21:48
あれ?

ユイの本当の願いは「ずっと看病してくれた母親を楽にしてあげる事」ではないの?

でなければ、「結婚してやんよ」→成仏で終るハズ。

ユイのさいごのセリフの「良かった・・・」は何に向けられているの?

自分は「結婚してくれる相手が出来た・・・・よかった」では無いと感じましたが。

結婚、「女の」究極のしあわせ。

「私の」ではなくて。
Posted by ばらんす at 2010年06月16日 21:19
10話までの自分の評価は10点中2点。
上手く言えないんですが全体の構成自体が酷くチープと思います
言葉一つ一つに対して深読みしちゃう人とかは疲れるでしょうね
今回の10話にしても日向が軽い気持ちでユイを成仏させたとしか思えませんでした
10話以前の二人のやりとりの中に、もう少しフラグを見せられなかったのか残念でなりませんでした
来週はいよいよ最終回ですが、もちろん最後の最後まで見るつもりです
だって最後まで見ないと自分の中でちゃんと批評は出来ませんから
Posted by 通りすがりの紳士 at 2010年06月19日 08:36
ブログ主の意見には概ね同感ですわ

ただ
>望んでいた生活を手に入れて楽しく過ごしていた少女を、一時の夢と引き替えにあの世へ叩き込んだわけです。
>これが幸せ?主人公が目指すべき道?と言うか、この世界の目的?そんな物、正にクソくらえでしょう。「いい話」っぽく描く演出が、度し難い傲慢さを醸し出しています

ここは凄く変
だってユイは満足したから消えた訳であって
色々楽しそうにしていても心の底のわだかまりがこの世界に留まらせていたのです
それが無くなった訳ですから「幸せ」と言えないこともないでしょう
実際この世界に未練があったら消えない訳ですしね。
Posted by なんともなし at 2010年06月19日 09:36
>なんともなしさん

その、「この世界に未練があったら消えない」が、相当あやしいところが、設定破綻の最たる物じゃないかと思います。
岩沢が「これから」を思いながら消滅してしまうのもそうですし、友人が多いユイが「結婚してやんよ」だけで消えてしまうのもそう。

作品内の描写としては、一定以上の満足感を憶えると、他とは関係なく消える、と言う風に取るしか無いと思います。天使や音無の説明については、「登場人物の言葉は、あくまでも登場人物の主観でしかない」と言うルールで今まで設定のひっくり返しをやってきたわけですから、そのまま受け取る事はできません。

まので、「一時の夢」「結婚したら死んでもいい、はたちが悪すぎる」と言う風に書いたわけです。

満足して、もう全く未練が無くなった(他はどうでも良い)と彼女が感じた事をきちんと描写されていれば、マシになったとは思うのですが。
ただ、その場合でも、友人も仲間も放り出して消え去るなよ!薄情すぎるだろ、と言うツッコミから逃れられないと思いますが。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年06月19日 17:59
その場合でも、友人も仲間も放り出して消え去るなよ!薄情すぎるだろ、と言うツッコミから逃れられないと思いますが。
 
なんだこの意見w
だったらあんたは さぁみんなで一緒に消えましょう。
的な話がみたいんか?そんな展開なっても批判するんだろ?
  
マスターベーションならひとりでしろよ。

まぁこのアニメがあまり面白くないのは事実だがなw
自分の少ない知識を出してそれが正しいみたいな事言ってるけど
正直痛すぎw頭悪いのばれるぞ?
今度からあまり書きすぎるな。忠告しておく
Posted by 名無し at 2010年06月19日 21:43
>>名無し

>だったらあんたは さぁみんなで一緒に消えましょう。
>的な話がみたいんか?そんな展開なっても批判するんだろ?

逆だ逆。現にそんな話になっているから批判されている。

「満足させると消える世界」に於いて「死」とは「消える」事と同義。
そこで主人公が率先して相手を「強制的に満足させて仲間を消していく=殺していく」事が批判の対象に晒されているわけで。このブログでは。

そこに「残りたいなら消えない」というルールが加わると、「満足して消える=自殺」となるわけですよ。端的に言うと『仲間を残して自殺は薄情だろ』というのが主の発言の趣旨でしょ?
それに対して「みんなで一緒に消えましょうとかいう展開を主が期待している」はおかしすぎるでしょ。
Posted by あらら at 2010年06月19日 23:27
ママーこのおじちゃんたち臭いよー

ちんかすの臭いがするー

あ、ゴメン。童貞の臭いの間違いだわ(^^)
Posted by カビラ at 2010年06月20日 04:55
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