2010年06月07日

転換点かな? 「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」5巻感想

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc5 (ファミ通文庫)
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc5 (ファミ通文庫)


前巻の感想はこちら


一巻名作二巻失速、三巻以降一巻ほどではないにせよ面白いが不安含み、と言うラノベ王道の流れとなっていた「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」の、五巻が出ました。

この巻は、良かったところとちょっと「うーん」となってしまったところが、綺麗にセットになっています。

まず、良かったところ。
今回は、何度か出てきた「主人公以外にもプレーヤーはいる」と言う部分がクローズアップされ、現実に干渉している者の存在が前面に出てきます。これが、王道とは言え、どう解釈しても真っ当なSF展開。明かされるべき「謎」としては結構考えられているようで、今後に期待できます。
特に、今回何人も出てきた「過去に現実へと投影されたキャラクター」や「主人公以外のプレーヤー」たちが、一癖あって魅力的。以前出てきた「最愛のキャラクターを失ったプレーヤー」もそうでしたが、色々な物を背負って挫折した彼らの姿は、後述する真っ直ぐすぎる主人公より、余程共感を覚えます。まあ、私が年食っただけかもしれませんが……

思わず、「こいつらが主人公の方が面白いだろ、絶対!」とか思ってしまいましたが、なんとその通りのスピンオフ作品が出るんですね……

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! addon シルバーブレット 1 (ファミ通文庫)
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! addon シルバーブレット 1 (ファミ通文庫)

どうも、後半書く展開の不自然さと合わせて考えると、商業的なスピンオフと言うよりも、本当に作者が書きたかった事は、↑でやろうとしてるんじゃないかと思います。
これは期待。


一方、どうにも雲行きのあやしい展開がありまして……

物語が畳まれる方向に向かって走り出した本筋をよそに、もう一方の問題である「ヒロイン選択」は、見事な迷走を開始しました。

一言で言うと、「俺はハーレムルートを目指すぜ!」です。
そりゃあ、本人達がそれで良いなら、第三者(読者)がとやかく言うべき事では無いかもしれません。ですが、それって主人公にとって一方的に都合がいい話ではないか?と、やっぱり思ってしまいますよね?
何より、そう言う展開を固定してしまうと、ライバル関係にあるヒロイン同士の絡みを描くことも、ヒロインがある意味一番輝く「別れ」のシーンを、入れることが出来なくなります。しばしば恋愛物では、ヒロインになり損ねたキャラクターに人気が集まったりしますよね。それは、結局「好きです」「はい私も」のバリエーションでしかないカップル成立よりも、「ふる」「ふられる」「好き合っていても結ばれない」と言った諸々の展開は、多彩で心を動かされる描写が可能だと言う部分が大きくなります。まあ、喜より哀の方が心を揺さぶるとか、どんな人間でもふられた回数の方が多いんだから共感しやすいとか、そう言うのも当然ありますが。
ところが、「全員大事」を旗印に主人公が動き出してしまったせいで、こう言った豊かな展開可能性は摘み取られてしまいます。

あと、決定的に気になってるんですが、ヒロイン達は、全員それで良いんですか?少なくとも、一人か二人は「そんなかってな話は嫌!」と叫んでくれないと、新興宗教の教祖様と取り巻き愛人グループみたいに見えてしまいます。少なくとも、前巻の段階で、「俺はお前だけが好きなわけじゃない」と言う趣旨の事を言う主人公に、顔面パンチを見舞うヒロインが一人もいない辺りが……
そう言う風に(主人公を無条件で好きなように)設定されたと言えばそれまでですが、それで良いんですかねえ?

少なくとも、2巻位前までは、「誰を選ぶか」が、主人公が真に悩むべき課題として提示されていたはずなのですが。

勿論、今後の展開で幼なじみ辺りが「やっぱり、一番は一人だけのはずだよ」とか言ってくれるのを期待しているわけですが、どうもそうならない可能性が垣間見えているわけで……
どのキャラも人気があるから切らずに物語を続けよう、と言う商業的な理由かもしれませんが、ちゃんと各キャラの物語を完結させてやる意味でも、「振る」展開は大事だと思うんですけどね。


と言うわけで、ラストまで確認したいと言う気持ちにかわりはありませんが、恋愛物としては決定的にボタンを掛け違え始めた感じです。うーん、あと2巻か3巻位で、どうまとめるかという話になるんでしょうかね……




この作者の、他の作品に関する感想はこちら


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