2010年06月14日

はやぶさを殺しかかったのは誰か? 読売新聞の与太記事

久しぶりに宇宙関連です。
当初、はやぶさについては何も書く気はありませんでした。功績としてはタッチダウン成功で御の字と思っていましたし、変な浪花節には嫌な気分しか感じなかったからです。
予算も人員もないのに現場の頑張りで大きな功績を上げる、と言うのは美談ではありません。それは、そんな功績を上げるポテンシャルのあるプロジェクトに金や人を出さなかった、経営・管理側の無能さを示す話です。

そんなのを美化するから、関係者が「待遇とか、何がしてもらえるかではなく、宇宙開発のために何が出来るかを考えて来て欲しい」とか、ブラック企業丸出しの話をするようになるんです。キューブサットのプロジェクトを担った人材を全員流出させる状態で、必要なのは金以外にないわけで。

閑話休題、はやぶさ賞賛はまあ置くとして、通り魔的に現政権への批判が出ています。ですが、これははっきり言って言いがかり。普通に考えて、10年越しのミッションで最後の半年を担当した政権に、何を言うのかと言う事です。

なお、最初に書いておきますが、この件について民主党を全面的に褒めるつもりなどありません。ですが、少なくとも、為される批判はお門違いを越えて、愚劣な言いがかりの域に達しています。

さて、では問題の記事。

科学予算削減の民主、はやぶさ絶賛は「現金過ぎ」


>後継機の開発費は、麻生政権の2010年度予算概算要求時の17億円が、鳩山政権の概算要求やり直しで5000万円に、さらに「事業仕分け」を経て3000万円まで削られた経緯がある。福山哲郎官房副長官は記者会見でこの点を問われ、「今回の成功を受け、11年度予算は検討したい」と述べた。


とりあえずこれだけは言わせて頂きたいんですが、「記者会見でこの点を問われ」って、あんたら自分で聞いたことでしょ?突っ込むなら突っ込むで、堂々と突っ込まないでどうするのですか?
言いつけ呼ばわりされるのが嫌で、「○○君が言ってました」とか言う小学生ですか?


そして、内容も相当な物でして……

まず、

>麻生政権の2010年度予算概算要求時の17億円が、鳩山政権の概算要求やり直しで5000万円に

と言うのが意味不明。首相官邸のWEBページで見れる概算要求では、はやぶさの予算などどこにもない。最初から予算化などされていません。あるのは衛星関連予算(って言うか、小惑星探査機がここに入ってる時点でたいがいですが)で、はやぶさ2はプロジェクト化自体されていないのです。

6/17追記
一部で勘違いされたようなので。
上の意味は、「はやぶさ2」単独での予算化はされていないと言う事。(最初から衛星関連予算に含まれる、と書いてますが、解りにくかったようで)従って、単独で仕分けの対象になり得ません。衛星関連予算として一括で取り扱われたわけで、「はやぶさ2を政府が削った」は言いがかりです。
「プロジェクト化」については、ずっと検討段階なので「されている」とは口が裂けても言えません。3千万というのは、「やるかどうか検討するための金」と考えて下さい。単純に、正規職員三人程度配置して設備使わせれば、それくらいの予算になります。解りやすく言えば、塩漬けですね。

↑追記ここまで。


そもそも、概算要求と言うのは、各官庁が行う物なので、そこで減った分は彼らが自発的に引っ込めた部分です。つまり、仮に減ったという事実があるなら、官庁自身優先度が低いと判断していた部分。


そして、事業仕分けへの批判誘導で終わるいつもの形。

ですが、その概算要求にも盛り込まれ、延々と関連予算を食っていた「GX」にやっと止めを刺したのは、一体どこの功績ですか?
これだけは、間違いなく民主党です。前政権は、関係者と財務省が一致して燃えないゴミと見なしていた事業すら、政権交代までに廃棄することができませんでした。廃棄できなかった理由は、政治の横やりです。勿論、この時点での政権政党、自民党のことです。


イオンエンジンの長時間利用や、小惑星タッチダウンの成功と言った偉大な功績を見せられながら、後継機の開発を拒否してきたのはどこですか?
それは、自民党政権です。まあ、潰してきたのはJAXA自身なので、彼らを批判するのは可哀想ですが。自民は単に興味がなかっただけでしょう。しかし、功績も世界的な注目もあったのに、一切口出ししなかったことは確かです。少なくとも、功績は何もありません。

事ここに至って、まるで現政権がはやぶさ2を潰そうとしてきた主犯のように言い立てるのは、恥を知れとしか言いようがありません。


ついでに、はやぶさがタッチダウンを成功させて功績を上げた直後の予算では、五億円が五千万に減らされています。まあ、JAXAの訳の分からない内部処理が原因ですが。

しかし、そのJAXAを独法化したのは自民党。天下りを送り込んで予算を食い潰してきたのは文科省。
大体、もともと別組織だったISASをNASDAとコンパチにしたあげく、Μロケットを叩き潰したのも自民政権です。情報収集衛星という空飛ぶゴミに宇宙予算の半分を突っ込んだのも、ISSと言うお荷物プロジェクトで日本の宇宙開発を減速させたのも同じ。

むしろ、この機会に民主が「受けるネタになる」と思って関連予算を増額してくれれば、万々歳だと思います。
宇宙開発はプロパガンダと不可分ですから、この機会にJAXAも今までのような訳の分からない妨害はせず、2どころかその後のミッションの予算まで分捕る位の勢いで、政府に営業をかけるべきでしょう。
はっきり言って、今までが色々と酷すぎたのですから。


NASAを築いた人と技術―巨大システム開発の技術文化
NASAを築いた人と技術―巨大システム開発の技術文化

前にも紹介しましたが、NASAを支えた「技術力」のもう一方、システム工学に関する本です。職人信仰は未だに根強いですが、フォン・ブラウンのチームでさえ、組織工学の有用性を認め、取り入れて行き、結果非効率を克服できなかったソ連を置き去りにしていきます。
まあ、日本はそれ以前ですけどね。頑張りと根性で切り抜ける組織は、誉められた物ではありません。もっと予算を!人を!効率的運営を!!





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はやぶさ後継機仕分け、枝野氏「工夫求めただけ」 :(読売新聞)という記事が話題になっていたので、該当部分を文字おこししてみた。 元データは民主党サイト内 2010年6月14日枝野幹事長...
[資料][政治]はやぶさ後継機仕分けについての枝野氏の発言文字おこし【情報の海の漂流者】at 2010年06月16日 14:10
この記事へのコメント
子供手当てについて書かせてください。

借金を増やしたのは自民党政権の投資なのに、「子供手当てが借金を増や」すという論調も納得できません。

コンクリートへの投資は確かに便利になりましたが、代わりに借金が増えました。
子供手当ては借金が増える前から批判されています。
人よりもコンクリートの方が信用できる時代というわけですよね。
Posted by 親 at 2010年06月17日 10:12
確かに、民主を目の敵にしてここぞとばかりやり玉にあげるだけの輩はいる。

しかし大多数は、「今件」と、「民主<自民」などという政権ゲームをからめて注目しているわけではない。
むしろそういったことには興味のかけらもないだろう。

どうでもいいからだ。

「政治なんて誰がやっても同じ」
という風潮が世間に蔓延していることをまず考えなければならない。

政治家を選ぶのは国民の投票だから、それに対して国民が文句を言うのはおかしいと声高に叫ぶ者が必ず現れるが、では今の「選挙」のやり方で、本当に国民の希望が国家運営に反映されるのだろうか。

「お願いします、お願いします、がんばります、がんばります、ありがとうございます、ありがとうございます」
こればかりを繰り返す街宣。

乱立して放置されるポスター。

知名度向上や人気取りだけのための遊説。

絵空事ばかりの公約。

こんな、我々一般民が見たところでひとくくりにして「くだらない」と結論付けさせる手法ばかりがステレオタイプのまま残り、マスコミを味方につけた側が勝利するといった形骸。

国民の大半は政治のことが詳しくわからないからこそ、飛び出るものにしがみつくしかなく、結局誰がやっても似たような結果で、そしてそのあと裏切られ、スレていき、希望をどんどん失っていく現実。

だったらそういった者が選ばれないように、選挙で・・・というのだろう。

しかし国民ひとりひとりが政治に精通していなければならないのか?
そういった、とても大きな事業を成し遂げ得る能力のある者が皆を引っ張っていき、そして皆は「難しいことはよくわからないが、私は自分の畑を守る」というのが、民主主義がそもそも作り出すべき姿ではないのか。

政府に身をゆだねていれば未来は永劫に明るい、と国民に思わせない政治家どもが、実際に裏でどんなことをやってる?


「はやぶさ」の一件で政権をバッシングするのもナンセンスだが、だからといってはやぶさを応援していた者すべてをひとくくりにして、「いろんな事情を知る私は食傷気味です」と冷めた目で見るあなたも、同じくらいナンセンスだ。

ほとんどの人は、あのプロジェクトが道程で抱えた危機やトラブルを、前例のない独創的な発想と、何事にも負けない、諦めないという気持ちで、辣腕を振るって回避し成功させたことを知り、それを具現化させた「現場の人々」にただ賞賛を送りたいだけなのだ。

私は別に、あなたにケンカをふっかけたいわけでもないし、政治的活動も一切していない。

ただ、普段は「日本なんてだめだ、いやだ」とか言ってるやつらですら、ワールドカップやオリンピックになると、やはり日の丸をつけた選手を応援する。

そういった、政治の種明かしがどうとかとは無縁の、人間根本から生み出される「感動」のようなものを共感できないのは、すこし寂しいことだと思う。
Posted by 通りすがり at 2010年06月20日 00:06
かつて、有人宇宙飛行のメリットに関して、アメリカのSF作家(ハリー・ハリスンだったか?)が、鋭い一言を言いました
「私の知るかぎり、還ってきた無人探査機をオープンカーに乗せてパレードをしたことも、それで国民が熱狂したこともない」
…アメリカ人の、アメリカの宇宙開発の一面をつく言葉でした
もともと欧米人は、動物や機械のような「人間でないもの(含む非白人)」にたいしてかなり冷たいところがあります

しかし、日本人ならはやぶさをオープンカーに乗せてパレードをし、熱狂するかもしれません
はやぶさ人形とか見てるとそう思います
日本人は欧米人と違いますからね…

…そういう面から見たら、日本は無理に有人宇宙飛行をしなくてもいいかもしれません
Posted by 通りすがり(上とは別人です) at 2010年06月20日 09:12
情報の「ナカミ」を照らし、事の芯を探す記事、楽しいです。

このところ、行くところ行くところ、
持論展開と自慰のために、論理性をすっ飛ばしてターゲットを詰り倒す傾向
にうんざりしてました。

論理的に納得のいくカタチで痛快に展開される記事に、
ずいぶん楽しませてもらいました。

たとえネットが右に左に占拠されようと、
今後も持論展開で私をニヤリとさせてください。
Posted by 面白い! at 2010年07月01日 12:25
私は非常にあなたのブログが好き
Posted by คาสิโนออนไลน์ at 2011年03月08日 07:58
概ね同意致しますが、国を守るのは行使されない軍事力だと思いますので、スパイ衛星をごみと一蹴するのは可哀想な気がします。
確かに現段階では米国のそれと比べて性能は段違いですが、あまり外国に頼るべきでない分野かと思います。
まあ、優秀なハードを開発したところで運用する政府があの様ではごみと仰るのも一理あるとは思いますが。
Posted by z31 at 2011年03月22日 19:29
>z31さん
全く仰るとおりなのですが、情報収集衛星による予算削減の影響は、気象衛星や打ち上げ基礎技術の予算にも及んでいます。
特に、アジア地域における日本の軍事プライオリティの中核であるひまわりが、危うく消えかかったのは衝撃的でした。
つまり、情報収集衛星の強行によって、軍事的にもプラス面よりマイナス面が遙かに大きくなってしまっているわけです。

結局、運用ノウハウの蓄積は魅力的なのですが、それなら別枠で予算を用意し、ついでにもっと安上がり(試験前提)な物にしておくべきだったわけで。
まあ、当時の与党も野党も、偵察衛星が何なのかも解らず議論していた(自民はテポドンショックを利用したメーカーに乗せられ、民主・社民党は軌道工学・コスト的ツッコミすらできなかった)ので、どうしようもないのですが。
Posted by snow-windsnow-wind at 2011年03月23日 22:52
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