2010年06月22日

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 6巻 感想

俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈6〉 (電撃文庫)
俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈6〉 (電撃文庫)


2010年10/5追記:他の巻やアニメ版の感想はこちら


例によって、発売から一月ほど経ってしまった、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」6巻の感想です。

この巻は、4巻の繰り返しとしか思えない、主人公の独白からはじまります。

「その話はもうしたじゃないか。今更予防線は要らないよ」と思いながら読み始めたのですが、最後まで読んで納得。相変わらず、起承転結の付け方が見事です。
特に、今回は4巻と同じ短編集。各エピソードは練られている上に、こなしているイベントも前巻までの積み残しを堅実に回収する内容とは言え、話に大きなテーマ・事件性はありません。
しかし、この冒頭文とラストエピソードからつながるシーンで、見事に一本の流れにまとめています。いや、お見事。「引き」は大事ですよね。4巻も、ちゃんとその引きに負けない展開を見せてくれましたし、7巻が今から楽しみです。

さて、そう言う巻全体としての大仕掛けとは別に、個々のエピソードがきちんと光っています。技巧的にはどんどん洗練されてきていて、キャラの立て方やエピソードの組み立ても、安心して笑える内容。基本的に、オチは大体読めるのですが、その上でちゃんと前提となる描き込みをしてから話を持って行くので、ギャグとして嫌味無く笑うことができます。
ほぼ唯一の男キャラでありながら、今回一番活躍している赤城君に、幸アレ!オタクにとって、一緒にアダルトショップに突撃して大騒ぎできるイケメンナイスガイとか、女子中学生のオタ友よりも、ある意味貴重な人材かと思うんですが、その辺どうでしょう?

そして、今回もっとも印象に残ったのが、作者がどこかで言及していた沙織のエピソード。
いやこれ、先に挙げておくと、問題点だらけなんですよ。一番肝心のシーンを絵に丸投げして描写を放棄していたりとか、最初からバレバレの誰かさんとか、今時そのイベントかよ!と言いたくなるような強引な進行とか。
ですが、そんな事はどうでも良いんです。沙織が語るサークル結成の真相が、泣けるんです。いや、泣けるなんてもんじゃありません。心に突き刺さって思い出が領空侵犯です。
このエピソード、主人公が突っ込んでいるとおり、明らかに対象年齢が30代。アバンテJrだのゴールデンアックスだのネクロスの要塞だの並べ立てたあとで、オタ友人関係が自然消滅(ここ重要です!!)していく課程を描写する。そんなの、意志抵抗判定に成功するわけ無いじゃないですか。ボロボロですよ。泣けますよ。思わず、あんな事になったどこかのアニメを比較対象として罵倒したくなるほど、心が動きます。

↓一応、万一読んでない人がいる可能性を考えて文字反転。


遠くへ行ってしまった中心人物。恋人ができて処分されるコレクション。仕事に集中するため、と称して置き去られる品々。集っていた場所が無くなり、離れていく仲間……
こう言った描写に思い出を喚起されないオタクは、一定年齢以上では居ないんじゃないでしょうか?
オタクは決して社会性が皆無なわけではありません。むしろ、狭い社会(仲間空間)の中でこそ、濃密なやりとりや自己実現を求めます。日本の職人気質の正体、と言われるあれですね。健全かどうかは置いておく(知ったこっちゃ無い)として。


↑反転ここまで。

だから、そう言った諸々を前提として仲間を作るために動き出した沙織は、最高の感情移入度を誇ると共に、まだそれができる年齢であるという羨望までも、読者から集められるわけです。何この完璧ヒロイン!?

上で書いた絵に丸投げされた残念なシーンでも、その絵が完璧なまでに光っているので、余り気になりません。と言うか、どう見てもエロゲの新ヒロイン登場時、または攻略分岐完了時の一枚絵です。
これがその手のゲームなら、
「桐乃も黒猫もとりあえず後回しだ。沙織に分岐させろ、沙織に!!ええい、ルートがないだと!?ふざけるなよ制作者、今すぐルートを追加した完全版か、沙織を落とせるファンディスクの開発にかかるんだ!NOW!!さもないと、てめえらの会社を爆破する。俺は本気だ!!」
とか思うままにぶちまけて、通報される勢いです。

やっぱり、このシリーズは良いですねえ。エンターテイメントかくあるべし。萌えもギャグも高精度でまとめられていて、不安定なところは作者のと言うかオタクの黒い何かが入り込んで居るためで、むしろポテンシャルを上げています。
ラストエピソードなんかは単品で見ると大部残念な感じなのですが、これも最後にちゃんと巻全体のオチを付けるための物で、欠かせないパーツとして存在感を出してますし。

と言うか、色々ある不満点については、結局いつものラノベ濫作問題に帰結すると思うのですよ。もっと一冊にじっくり時間を取って、編集や見直しを増やせばはるかに完成度が高くなると思うのですが、市場が許さないのでしょうね。残念ですが、仕方のない面もあるので、バランスの悪さが魅力を増やしている点をむしろ評価すべきかなあと。


最後に、ネタの酷さ(褒め言葉)は相変わらず。上記の80年代ネタにくわえ、眼鏡っ子だオリエント工業だつり下げられたスペースコロニーだのニコニコ動画でマジ天使だの、やりたい放題。(ややネタが薄くなったのは、例のアンケート結果を反映したのでしょうか?できが良いですから、中高生のファンも多いでしょうし)○○○○そっくりの○○○ー○に真剣に悩む某登場人物は、マジ漢だと思います。

いやほんと、7巻も楽しみですね。



伏見つかさ関連エントリーはこちら


その他ライトノベル関係のエントリーはこちら





同じカテゴリー(読み物)の記事
 非常に面白い「娯楽」の理論書 『純粋娯楽創作理論 VOL.1』 感想 (2015-06-20 00:00)
 ナイストンデモ本!ダニエル・ドレクスラー『ゾンビ襲来』感想 (2013-02-16 22:00)
 最近読んだライトノベルの感想 (2013-01-30 22:00)
 胸がむかつくひどい話 『魔法少女育成計画 restart』 感想 (2013-01-18 22:00)
 良質ショートショート 『独創短編シリーズ 野﨑まど劇場』 感想 (2012-12-11 22:00)
 余りに出来の悪いSF 山田宗樹 『百年法』 感想 (2012-11-26 22:00)

この記事へのコメント
7巻見たい見たい!!
Posted by リン at 2010年07月26日 16:23
>2010年07月26日 16:23
>リン
>7巻見たい見たい!!
確かに
Posted by 万こ at 2010年11月02日 01:32
その7巻で大変な事に(ルートが・・・・・・)。
Posted by   at 2010年11月06日 01:49
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。