2010年06月26日

予想の斜め下 Angel Beats! 第13話 感想



Angel Beats! 1 [Blu-ray]
Angel Beats! 1巻 [Blu-ray]

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副題は「Graduation」。


と言うわけで、今期一番期待が高かったにもかかわらず、「残念」という言葉では言い尽くせぬ結果に終わったAngel Beats!です。見ているこちらの気分は、卒業式ではなく葬式。酒を片手に仲間と一緒に見るのが、多分一番正しい視聴スタイルでしょう。
あ、それじゃ通夜か。


で、冒頭からこれですよ。そもそも「あれ」って何?直後のシーンでゆりが機関銃乱射してからだと解りますが、どんだけキャラクターに愛がないんですか?起きたら全員成仏済ですか?なんでNPCまで消えてるの?
で、結局NPCってなんだったの!?



天使が笑って出迎える理由も、そもそも天使が何だったのかも、ぶっ飛ばしたまま感動っぽい音楽だけ流されてもなあ。

そして……

「あなた達、どうしてまだいるの?」
「動いちゃダメ」
「大丈夫よ、奏ちゃん」

このやりとりだけで、脚本の欠点が全部表現されてるんですよ。恐ろしいことに。
ゆりの疑問は当然。しかし、誰もそれに答えない。
相手の話を聞かない。疑問に思うべき所をスルーする。
心情の変化が描けていない。何故そう言う反応なのか?何故態度が変わるのか?何がきっかけでどう言う変化があって、それがどのように行動として現れるか……
おかしいですよ麻枝さん!あなた、そう言う細かい積み重ねが得意だったんじゃないですか?



直後に音無が理由を説明するとは言え、会話しろよ、会話!なんで相手の疑問にその場で答えないの?コミュニケーション取れてないよ。

「まだ、お前が残ってるじゃないか」

これ、どう見てもホラーのセリフなんですよね……
「まだ死ぬわけにはいかないよ。だって…… お前が残ってるじゃないか!!」
↑口が耳まで裂けた老婆とかのイメージでどうぞ。

いやこれ、本当に冗談じゃないですよ。他の連中は、どうやら音無教に入信しちゃったみたいなので、まあ良いでしょう。(全然良くないけど)しかし、ゆりは最初から最後まで、「死んでたまるか」を貫いて来たキャラです。前話の最後で訳の分からない心変わりをしてましたが、音無はそんな事知るよしもありません。
そんな、決定的に価値観が異なる相手に向かって、「あなたを幸せにして上げましょう」みたいな上から目線の笑顔で迫ってくるんですよ?「こっちは素晴らしい世界だよキヒヒヒヒ」とか言いながらにじり寄ってくる悪霊と、全く変わりません。



でも、なんと、ゆりちゃんの葛藤は既に解けていたので、音無先生は「ふざけるな」と当然受けるべきしっぺ返しも喰らうことなく、一緒に卒業できるのでした。やったね!
……「ドラマ」って、こんなんで良いんですか?本当にファンは、こんなので満足なんですか?価値観の相克も、信念の転換も描けず、こんなのに「感動」とか口にしたら、それこそKEYに対して失礼だと思うんですが。

で、あんたどうして成仏してないの?



でもう、ここまで酷いと、語るべき事も無いわけですよ。

「高松も逝けたんだぜ。NPCになった後も、正気に戻れたんだ」

こんな描写で良いのなら、紙切れに「この後みんな幸せになりました」とでも書いておけばいいんじゃないですか?



世界の謎は?現実との時間軸がずれるはずと言う問題は?パソコンでいじれる世界って?
製作者の中では、これらは解くまでもなく自明なのでしょうか?解く必要もないほどどうでも良い事なのでしょうか?ここまで感情移入も理解も及ばないと、決定的に何かが間違っている気がしてなりません。いやまあ、この作品については絶対に、間違っているのは私じゃなくてあの世界(を設定した奴)でしょうが。

SSSのメンバーであったことのない天使が歌作ったり仕切ってたり、描写の積み重ねの最低原則すら総スルー。
麻婆豆腐とか、禿ヅラとか、ギャグとしてのでき云々以前に、場違い感が酷すぎます。仮にここまで感動的な12話が放映されたと仮定しても、ここ一番でやるような内容じゃありません。



で、ゆりの影に隠れる天使とか、せめてキャラの統一性位確保してくれませんかね?「天使ちゃんマジ天使」と言う見所くらいは、守って頂きたいんですが。

仲間が消えるよ!やったね、奏ちゃん!



そして、最後はよりにもよって音無大作先生のありがたいお説教。
結局、それっぽい音楽と共に語られても、なんで神に抗うのが間違っているのかが解りません。なんで消えなくちゃならないかは、相変わらず不明なまま。
って言うか、生きてきた時に大事な思いがあったとして、それが現在の第二の生を否定する理由にはこれっぽっちもならない。理不尽な人生への怒りが消えるはずもない。


結局ですね、これって最後の最後まで宗教アニメなんですよ。基本原理が、信者(この場合、大川先生大活躍の映画を見に行っちゃうような人達のこと)以外には理解しがたいのも一緒。

この音無の主張は、あの不思議世界の存在を捨象し、エッセンスだけ取り出すと、とても解りやすくなります。
ポイントは、「神」という単語を使っていない「だけ」の所。


間違った事:理不尽な人生を与えた神に鉄槌を!(ゆりの主張)

正しい事 :人生を受けいれて満足して死ね。(音無の主張)

・=神が与えてくれた人生に感謝しましょう。それは見方を変えれば素晴らしいはずです。真の救いは、来世(完全な死後?)に与えられます。


はい、見慣れた内容になりました。と言うか、内容が支離滅裂になるのは当たり前です。導くべき結論が、最初から破綻しているのですから。

「仰げば尊し我が師の恩」?「師」って、宗教用語ですよね?だって、教師なんかと一回も話してないですしね。




この、笑える寄せ書きとかね。

「元気でね。また会おう」
って、来世の存在を前提にするなら、人格は消えるからもう会えないし、そもそもまた会おうも何も、消えなければ毎日会えるでしょうに。

音無演説の「みんな、前を見て去っていきました」って、その「前」には何があるの?前に進んだら素晴らしい事があるよ、少なくとも消滅やフジツボじゃないよ(あるいは、フジツボでも意味があるよ)と論証しなければ、アネクドート※にしかならないでしょう?

※資本主義世界は滅亡の縁に立っている!
 では、共産主義世界は?
 勿論、常に資本主義の一歩先を行っている。



お前も、神になるって話はどうしたの?


「世間知らずっぽいから、心配だよ」
世間知らずもへったくれも、生まれ変わったら全部消えるでしょ?
「もっと一緒に遊べたのにね」
遊べばいいじゃない。時間はいくらでもあるんだし。まあ、一緒に遊ぶべき他の仲間は、音無先生が殺っちゃったみたいですけど!

「もっともっと時間があったらいいのにね」
に至っては、ギャグですよね?ギャグなんですよね?全然面白くないけど、まさか本気でシリアスなセリフだと思って書いてませんよね?

こんな消え方するのなら、前話のラストで消えておいた方が、まだマシだったと思います。演出的にも。


しかし、こんなのは、まだ何と序の口だったのです。



「奏、ここに残らないか?」

これを聞いた瞬間、頭の中が真っ白になりました。

え、何?あれだけ生き残る事を至上としていた連中を口先三寸で成仏させておいて、自分だけは消えずにヒロインとイチャイチャしていたい?
何のギャグ?え、冗談だよね?

まさか、ここまで真っ直ぐストレートにゲス野郎とは、言葉もありません。


そしてまあ、もう形容詞も見つからなくなったのが、音無が口にしたゆりたちの評価。
「生きることに、抗い続けちまう」
ハッハッハ!製作者の考え方じゃ、ゆりたちは「生きる」と言う事から逃げて抗ってたらしいですよ?

ああ、やっと理解できましたよ。「生死の価値が逆転した世界」を描きたかったんですね。でも、思いついただけで丸っきり描写が出来てなかったから、電波にしか見えなかった、と。
価値観の逆転みたいな大きなテーマをやりたいなら、それこそ綿密な描写と理解させるための作劇が必要なんですが、そう言うのを全部すっ飛ばして、アイデア一つで突破できると思っちゃったんでしょうか。

大体、実際生きて動いて感情持ってる連中を並べて、「生きていない」、消えて無くなることを「生きる」と言って納得させられると思ったなら、作劇なめすぎだと思います。



で、最後の心底どうでも良い天使ちゃんの正体ですが、伏線とか整合性って、こんなにコケにしていいもんでしたっけね?
死者の出身時間軸とか、死亡時年齢とか、視聴者はそう言う設定が明かされるのをずっと待ってたわけですよ。ところが、そもそもそんな疑問は存在しないかのようにスルーしておいて、ラストで「実はこうでした!」って、そりゃ最低の手法です。伏線張ったら予測されるから伏線は張らない、とでも考えたんですか?正に「休むに似たり」
って言うか、死者ですらないっぽいですしね。もう、何が何だか。

ルールを提示した上で例外や穴をつく描写をするのは上手い方法ですが、最初からノールールの作品でそれやっても、「ハア」としか言えないんですよ。

種明かし(?)自体、心臓がないとか、そんな理屈なら、事故って死んだ奴は全員スプラッタですよね?
あげくに、天使ちゃんの時にだけ消えて欲しくないとかうろたえる主人公の、覚悟不完了の最悪さと言ったら……



ざまを見ろ主人公、と言う歪んだ喜びだけは存分に堪能できましたが、そんな事を楽しみたくなんてなかったですよ。本当に、なんでちゃんと作らなかったんだろう……

意味不明のラストシーンについても、ちゃんと設定を提示していないので、想像することすらできないわけで。

いやもう、ここまで酷いのは久しぶりでした。
おかげで、昨日発売のクドわふたーも、購入する気が失せてヨドバシに赴かないままです。とりあえず、このショック後遺症が義務感を下回るまで、KEYの作品はしばらく見たくありません。

ま、数日で回復するんでしょうが……



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この記事へのコメント
こんばんは、お邪魔します。

・・・いやなんというか、本当にひどい最終回でしたね。
12話までも矛盾や破綻がそこかしこに見受けられるまずい脚本でしたが、ここまでとは。
せめて〆だけでもきっちりまとめてくれれば(まぁここまでの出来を見ればそれも厳しいのは明らかでしたが)、
まだ視聴者は諦めもつくんですがね。

前半の卒業式ごっこのパートはもう、全てギャグだと思って流せばまだ耐えられたのですが、
後半の音無のクズっぷりには本当に怒りを覚え、そして呆れました。
そもそも音無が奏に恋愛感情を持っていた、というのも驚きでした。
妹のように見ているのかと思っていたのですがね。

それはさておき、他人には成仏を勧めて回り、「まだ未練があるんじゃないの?」と思われるキャラまで成仏させておいて、
自分は「大好きな奏と二人きりでいつまでもいたい」、ですか音無さん。
snow-windさんが「宗教」という言葉を使われていますが、この音無の言動は、
まさにインチキ宗教の教祖様が信者に「修行に励めば救済される云々」と言いつつ、
自分は物欲や色欲にまみれた堕落した生活を送っているのと似ているように思いました。

挙句の果てに、成仏を決意した奏に「消えないでくれ」ですか。
真相を告げないままユイを成仏させ、自分を信頼していたであろうゆり・日向・直井を「みんなで卒業しよう」という言葉で欺き成仏させておいて、
自分だけは大切な人と別れるのは嫌だと言う。
どの口でそんなことをほざくんだか。

普通物語の主人公というのは、読者・視聴者の共感を得られるようなキャラにすると思うのですが、
音無に共感できる・感情移入できるという人は、相当レアなんじゃないかと思います。
「次は誰にすっかなー」で既に視聴者の共感を失っていたとは思いますが、
このシーンで、共感は0どころかマイナス、反感に変わったのでは?

長々とぶちまけてしまいましたが、13話も視聴して、ポジティブなものは何一つ心に残らない・響かない作品でした。
もっとも、感動するとか泣けるというのは個人差があるから仕方ないのでしょうが。
DVD・BD・CD売り上げは好調なようですが、それに味を占めた制作側がこういう出来のアニメを乱発しないことを願うばかりです。

長文・乱文大変失礼しました。
Posted by poscam at 2010年06月26日 23:30
薄っぺらい脚本だと思いました
なんかゲームと同じ感覚でアニメ脚本書いたのかな
同じゲーム系の脚本家なら、まだ都築真紀の方がマシなような
あるいは川上稔に書かせる方がよかったかもしれません

ほんとにひどいアニメでした
Posted by かがみん at 2010年06月27日 17:49
記憶が戻ってからの音無は独善的なウザキャラで、
こんなんなら記憶が戻らなきゃよかったのにと思ってましたが、
それでも本人としては善意のつもりなんだというところだけは、
確定的なことだと思ってたのに……。

まさか、ここまで真性のゲスキャラだったなんて。

しかも、脚本としては、音無がゲスということを描写したいわけじゃないっていうのが、なんともいえないです。

本当に、このアニメはなんだったんでしょうか?
Posted by koko at 2010年06月27日 20:24
「まだお前が残ってるじゃないか」

これを聞いた瞬間鳥肌が立ちました。全身にまで広がりを見せました。
ホラーですね。怖がらせようって思っていないことが余計に怖いんだw
僕はこのアニメを世界一怖いホラーアニメであると認定しますw
なんで最後に泣いた?
Posted by ioi at 2010年06月28日 04:30
皆さん、コメントどうもです。さすがに、事ここに至っては擁護しに来る人も居ないみたいで、作品が可哀想になってきます。

ここまで凄まじいと、むしろなんでこんな事に成っちゃったのかを分析したくなってくるので、できれば明日にでも考察をしてみたいと思います。

なんか、色々見直していくと、パズルのピースとしては、一応数は揃っていたような気がするんですよね。ここの食い合わせがガタガタだとか、絵自体が歪んでたとか、他の問題もどんどん目に付いてくるんですが。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年06月29日 20:45
今までの麻枝氏の作品と比べると
①ベースが現実世界中心ではなくファンタジー中心
②媒体がゲームではなくアニメである
③アニメが原作である
④(アニメに関して言うと鍵アニメで初めて京アニではなくPA)
という違いがありますから ここらへんを踏まえてみるといいかなと。

麻枝氏はライターですから脚本に注目しますと
ABに関しては設定や展開がイミフだ、
ギャグ、キャラが多すぎて
描写不足だという指摘がなされますが
問題の根本はそこではないと思います。
結局の所 世界観に疑問を持つ視聴者に対して疑問を持たない音無
だから感情移入できないというのが原因ではないでしょうか?
そして音無に感情移入できなくても
他のキャラに感情移入すればいいというのも
成仏=善という大前提で誰にも感情移入ができないという行き詰まり
おおまかにそういうのが原因だと自分は思いました。

あと別に義務感でクドわふたー買わなくてもいいんじゃないでしょうか
評判を聞いてから買ってもいいですし
買うなら買うで評判の良い別のゲームでも良いと思いますよ
Posted by ササ at 2010年06月30日 02:17
初めまして。
自分もこのアニメを見たんですがちょっとって思いました・・・・
あの後、音無は成仏したことが麻枝さんから語られ、残念ながら「後から来る連中のため」というのは方便であることが判明しました。

そもそも音無以外の登場人物も人間的にアレです。

奏を一方的に痛めつけたり仲間に無茶をさせたりし、挙句に「その子(奏)、天使じゃないわよ。知らなかった?」と発言したゆり・・・

ただ聞けばいいだけなのに乱暴な方法で音無の心臓がないかどうかを確かめた奏・・・

全く罪のないNPCを「消えたくない」という理由で痛めつけた直井・・・(他にも消えない方法はあったはず)

このアニメに不満をもったなら、同じく"死後の世界"が世界設定である"灰羽連盟"というアニメをみるのはいかがでしょうか。(ややマイナーです)
Posted by forest at 2015年08月16日 17:45
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