2010年07月17日

お、転換に点に入った 「神のみぞ知るセカイ」 9巻感想

神のみぞ知るセカイ 9 (少年サンデーコミックス)
神のみぞ知るセカイ 9 (少年サンデーコミックス)

今更説明の必要もないでしょうが、「神のみぞ知るセカイ」は、嫌々ながら、ギャルゲー脳を駆使して女の子を口説き落とすギャルゲーオタを主人公にした、変化球のラブコメ漫画です。

基本的に、各話で色々なパターンの女の子を色々なシチュエーションで口説き落とす、一話完結型が綺麗に機能している作品でした。ですが、同時に「落とした女の子は記憶が消える」と言う一話完結を保証するシステムが実は機能していないらしいと言う伏線や、主人公が女の子を口説き落とさねばならない理由である「駆け魂」の設定など、きちんと長編としての起承転結を考えている作品でもあったわけです。(作者後書きでもそう言ってますね。この辺、サンデー連載作品は構成がきちんとしている印象があります)

そして、前巻ラストで作者が書いていたとおり、この巻で物語は「転」に入りました。上記のような伏線が強調されはじめて物語が佳境に入ると共に、ヒロイン候補との関係や長期的な課題の提示など、確実に変わり始めています。

そして、その転換・繰り返しパターンからの外し方が膝を打たせる展開でした。基本的には、作者がモチーフとする前世紀の少女漫画(ギャルゲーの世界観は、あの辺が基盤です)や映画の鉄板ネタを使いつつ、それを単なるネタとして消費しない流れは見事です。

そもそも、最後のエピソードがはじまった段階で、読者は「あれ?またいつものパターンに戻るの?」と思ったはず。そこに、直前で提示された記憶関連の伏線と重ね、毎度おなじみ使い捨てヒロインの単発シナリオを一気に「長い物語の重要なピース」へと転化させる。実に綺麗な決め方でした。

加えて、お約束ネタの後の描写がまた出色。特に、体の影響を魂が受けていく様子は、

1,「落とし神」と言う主人公のアイデンティティに踏み込む危機
2,じゃあ体に影響を受ける「魂」とはそもそもなんなのか?と言う根本的疑問の提起

として、強烈な印象を残します。否が応でも、物語が大きな局面に入ったことを示すわけで、一見地味ながらかなり力の入った盛り上がり方。
まあ、ギャグとしても、あれはかなり強烈ですし。あ、ちなみに、主人公はあの手のゲームは始めただと言ってましたが、有名シリーズのあっち方向展開作品とか、かなり面白かったりしますよ?ゲームデザイン(どのパラメータが重要か、どんな要素をゲーム的に重要とするか)の組み方が、想定顧客層の「社会」に応じて本家と変わっている辺り、異文化体験としても中々のモノでした。

閑話休題、これほど時間が楽しみな「引き」は、本作はじめて。今まで、良くも悪くも話の作り方・盛り上げ方としては堅実を第一にしていた感のある作品で、一気に話を動かされたら、身を乗り出さざるを得ないじゃないですか。

あーでも、これってアニメにしたら、今一ネタとして面白さを削がれてしまう気もするのですけどね。漫画だとコマの切り方で色々できますが、アニメとゲーム(特にギャルゲー)って、画面内での情報の出し方が全く違いますから。

まあ、何はともあれ時間が楽しみな作品がコンスタントに手に入るというのは、実に良いことです。
この世界に限らず、非実在青少年の皆さんが、元気に恋したり平凡な日常を送ったり、幸せになったり不幸になったり、不純性交渉に及んだり及べなかったり、綺麗な顔を吹っ飛ばしてやったり地雷でバラバラになったりし続けられる世の中でありますように。


作品内容的関連:「クロノ・セクス・コンプレックス」の記事はこちら
↑ところで、この作品2巻では絵師が変わるんだとか。一巻のイラスト、合ってたんですけどねえ。どうしたんでしょ?








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