2010年08月23日

最近読んだSFの感想

たまには、ラノベ以外の感想も。
SFは、ラノベの書評以上にアクセス数が悲惨になるんですけどね。


ペンギン・ハイウェイ
ペンギン・ハイウェイ

まずは、六月光『ペンギン・ハイウェイ』の感想から。
研究者肌の秀才少年が、町に現れた不思議を追いかける児童文学テイストの強いSF. 突然現れ町から外に出そうとするとかき消えるたペンギン、怪物の噂、草原に浮かぶ「海」、地図にない川と憧れのお姉さんと、悪ガキと、個性的な同級生。これだけ並べると、私的絶賛作品にならないわけないと思ったんですが……
いや、つまんなくはないんですよ。

基本的にはソラリスのオマージュと解説されてるけど、あの「海」がソラリスの海と言われても、余りピンと来なかったり。
個々の事象の連環が結局良く解らないところとかは、ソラリスというか確かにソ連SFっぽい感じだけれど。

とりあえず、ハマモトさんはもっと報われて然るべき。一番データを科学的に集めたりしてて、凄く期待したのになあ。


さよならペンギン
さよならペンギン

次が、大西科学『さよならペンギン』の感想。
これもペンギン。量子論で粉飾した不死者のお話、と言ってしまえばそれまで。だけど、「不死者」の描き方は堅実で、量子論のハッタリも結構上手く効いている。ただ、どう言うわけか後半悪い意味でライトノベルになってしまって、静かな哀しみを讃えた雰囲気が吹っ飛んでしまうのがなんとも……
SF的には、質量不変の法則を律儀に守ってるペンギンが、5歳の幼女のフォームを取れるのがかなり疑問。ググる先生によると5歳児の平均体重は20kgらしいので、動きが発泡スチロール性の人形みたいになってしまう気が。
後は、一人称の使い方とか、こなれてない文章が凄く気になる。プロローグ後に主人公の一人称が「俺」になるのはいきなり雰囲気が壊れるし、幼女形態とペンギン形態で口調が変わったり変わらなかったりするのも、上手くない。人格まで含めて擬態してるなら、この辺こそこだわり所だと思うんだけど。
全般的な印象は「残念」。プロローグの雰囲気が続けばなあ。


星の舞台からみてる
星の舞台からみてる

三番目は、木本雅彦『星の舞台からみてる』の感想を。
早川文庫が色々方向性を試してる中での一冊。あ、上もだけど。
死んだ天才プログラマー(ギーク)が残したメッセージをたどる、派遣社員とエリート幹部候補とドロップアウト高校生(ハッカー)のトリオの話。ところが、驚くほどキャラが立っていない上に、肝心のAI話が面白くなりそうな部分を故意にオミットしているような印象。キャラが薄いのはSFだからと言っても、役柄も変な自分探しの要素が入っていてどうにも。ドロップアウト高校生はまだマシだけど、肝心の死んだプログラマーの関係者とかは、もうちょっと群像としても書いた方がテーマに説得力が出たと思う。

色々方向性を試している刊行なので、仕方ないのかも知れないけど。


アードマン連結体
アードマン連結体

四番目の感想は、『アードマン連結体』。
これは鉄板の青背で、しかも短編集。ベガーズ・イン・スペインが面白かったので購入したら、やっぱりそう言う方向性。
基本的に、SF的なギミックは最低限にして、寓話や小さな物語に落とし込む。解説に老人と子どものSFとあるけれど、それ以上に田舎とか老人ホームとか、「中心」「メイン」から外れた部分での話という印象が強い。

綺麗なタイムファンタジーとして落ちる「オレンジの値段」と、フェルミのパラドックスに捕らえられて宗教化した未来人が、彼らにとっては極めて深刻な事態に直面する「我が母は踊る」が面白かったですね。勿論、表題作のアードマン連結体もできの良い作品。やっぱり、SF短編集はいいなあ。
まあ、海外で人気のある作家の、面白い作品を翻訳時に選り抜いてくるので、当然のことなんですけどね。

ところで、刊行ペースから言って、そろそろ「廃園の天使」の続刊が発表されても良い頃合いじゃないかと思うのですが。
日本のイーガン(ラギッド・ガールの現実世界パートは本当に面白かった)と目してるだけに、死ぬ前に完結させられるペースが維持されますように、と祈ってたり。
SFマガジンの連載とかも持ってますし、後数年は無理っぽいですが……



その他のSF関連エントリーはこちら。まあ、SFラノベやゲームの方が圧倒的に多くなっちゃってますけど。
一応、読書関連のエントリーは、こちらにまとめてあります。






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