2010年08月28日

「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! シルバーブレット1」 感想

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! addon シルバーブレット 1 (ファミ通文庫)
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! addon シルバーブレット 1 (ファミ通文庫)

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今作は、もの凄い面白さを見せながら、やはりシリーズ長期化に伴う失速を余儀なくされていた「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」の、スピンオフ作品です。
そして、長期化するためにハーレム構造を維持する無理を強いられて、物語として分解しかかっている本編と異なり、かなりできの良い小品としてまとまっていました。

今作の主人公は、本編登場人物中唯一の一般人だった高橋さんの、兄。腐れおたくで、優秀なハッカーで、そしてフェアリーテイルシステムに人生を狂わされた内の一人。
5巻の感想で書いたとおり、基本的に挫折者で共感を得やすいのに加えて、本編主人公と違って真っ当なオタクのため、感情移入しやすくなっています。妹との関係も、良い距離感ですね。

また、スピンオフにもかかわらず、内容はフェアリーテイルシステムの根幹に迫る話であり、本編よりもかなりシリアス。5巻の感想で書いた、作者がやりたいのはこっちでは?と言う邪推は「恐らくそうだろう」と言うレベルまで深まりました。
後書きでも、フェアリーテイルシステムの話は外伝でやればいい(つまり、本編はラブな話に特化と言う事でしょう)と言う、編集側の割と投げやりな態度が垣間見えたりします。

しかしそれだけに、本編ではヒロイン一個小隊に押し流されてどうしても影が薄くなる男どもや、周囲の設定に関する調査過程などが、かなりしっかり描き込まれています。この辺は物語の脇を固める重要なポイントですし、第一巻の醍醐味でもありました。
ギャルゲヱ系のひどいネタも、登場人物達が濃いこちらなら、バンバン放り込めるわけですし。

シナリオ自体も、実は王道のラノベ展開。逆を言うと、フォーマットがしっかりしているので安心して読んでいられます。最後の戦闘が少し長く感じるのは、多分このシリーズでまともな戦闘が描かれるた事が、今までなかったせいでしょう。
まあ、やっぱりなんか違和感は残るんですけどね。言わば、大きな謎に迫る推理物のラストが戦闘になるような物なんで。TRPGだと考えれば、良くある展開ではありますが(笑)

と言うわけで、かなり面白く読むことが出来ました。今後の展開を考えると、本編よりも期待できるかもしれません。


あ、最後に一点。神のプログラムとでも言うべきフェアリーテイルシステムへのアプローチをライフワークとしている主人公が、職業に社内SEを選んでいるのはちょっと疑問です。自分の時間が取れなければ意味が無いわけですから、せめてフリーであるべきでは?理想的には、昼は公務員、夜はハッカー、みたいな二重生活が一番でしょうが、それだとオタクの造型から外れちゃいますか。



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