2010年08月31日

デンマークの最小構成有人ロケット

ああ、先を越されたんだなあ、と言うのが最初の感想でした。

衝撃的に素朴な1人乗りロケット試作機、打ち上げへ(asahi.com)
デンマークで「募金で作った有人宇宙船」打ち上げ(WIRED VISION)

到達高度100キロ程度のロケットは十分に「枯れた」技術であり、こう言うプランは前から何度も提示されています。
典型的には、松浦さんが参加していたふじ構想↓ですね。

われらの有人宇宙船―日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」
われらの有人宇宙船―日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」

高い金を払ってISSに参加し、数十年振り回されるくらいなら、開発費用数十億(見込み)のあの構想を、基礎研究だけでも進めておけば……
的川さんが朝日の記事の最後で言っている、一番重要な加速度の調整(人間を乗せてあまり高加速すると潰れる。しかし、ロケットの初期加速は大きいほどとっとと大気圏を抜けられて有利。実にアンビバレンツで細かい調整が難しい)の実証データが集められますし、後のバージョンアップに繋げていけます。

だって、デンマークですよ?GDPが日本の1/10以下の小国、って言うか、その国自体が参与しない民間開発ですよ。公用語だって独自言語(デンマーク語)で、NASAの技術者を招聘するのにしっかり障害がある場所です。そんなところにあっさり先を越されるとか!
飛べただけのゴミ・HOPEとか、飛べたことが奇跡のきぼう(ISSのパーツの方)とかに無駄金使って、「ゆくゆくは有人飛行も」とか訳の分からない遠回りやってる間に、目標を絞って最小構成での到達を目指すプランにあっさり抜かれると。

もっとも、仕方ないのかも知れません。国家プロジェクトは大体において色んな思惑(ノイズ)が混ざって迷走し、当初予定と予算を大幅に超過して訳のわからない物に肥大化してしまうものですから。最終的に成功するかどうかとは、別の話として。(アリアンVはなんだかんだでトップクラスになりましたし、エネルギアだって機体自体は物になったわけで。後者は焦土の正論状態ですが)

なので、実は一番興味深いのは、単純な技術的な部分ではなく、法規制でしょうか。はっきり言って、日本でこれをやろうとすると、簡単に潰されます。星製薬のモルヒネ国産化時の妨害を引くまでもなく、根本的に民間ベースでの技術開発を助ける文化もなく、規制でがんじがらめになっています。たかが到達高度数百メートルのモデルロケットですら、知事の許可が必要なんですよ……(勿論、個人ベースでの許可取得はほぼ不可能。D型以上のエンジンを大規模イベント以外で使用したと言う話は、聞いたことがありません)
射場の確保や、協力企業への税制援助、(日本でこれをやると、国またはそれに準じる機関でないので、寄付金の税控除すらありません)何より柔軟な法改正や運用で「邪魔はしない」と言う形の援助は受けているはずですから。

多分、飛行が成功すればある程度細かい報道が出るでしょうから、それに期待したいところです。
リンク先の記事で、的川さんは「でも、本当に人を乗せる勇気があるかなあ」と言っていますが、成功率7割でも乗りたいという奴は、幾らでも居るでしょう。参加している元NASAの技術者なんて、絶対それがやりたくて参加してる人間が一定数居るはずですし。フォン・ブラウンが宇宙飛行士に語ったとおり、「誰より飛んでいきたいのは私だ!」と言う奴ですね。
個体・液体のハイブリッドというのは気になりますが、この構成だと最終段目をそのまま脱出ポッドにできるはずなので、案外安全性は高いでしょうし。

何にしろ、スペースシップ・ワンにつぐ民間有人飛行実現が指呼の距離に迫ったことに、惜しみない賛辞を送りたいと思います。この分だと、私が死ぬまでには民間宇宙飛行も、商業レベルに乗ってくれそうですねえ。



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タグ :宇宙科学

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この記事へのコメント
ロケットガールの一巻を思い出すなぁ
Posted by かがみん at 2010年09月01日 18:43
個人で火薬類消費許可書を県知事から受けて火薬量20g超えるD型以上ロケットエンジンを搭載した大型サイズのモデルロケットを飛ばしています、制限高度250m越えるので、航空法による飛行通報書を出しています、金属製ハイブリットロケットも日本でも飛行できる時代です
Posted by 見知らぬ人 at 2010年09月22日 12:00
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