2010年10月07日

セカンドノベル 彼女の夏、15分の記憶 感想

セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~
セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~


最初に書いておきますが、以下大量の批判ポイントが並びます。
ただ、いわゆるクソゲーかというと、そうではありません。基本部分は良くできているし、シナリオもよく練られているのですが、プレイしていて引っかかる点があまりにも多く、不満点を書き出していくと、こういう風にならざるを得ないのです。

何というか、「本来中の上程度の安定した作品になるはずが、細かな不満点が多すぎて平均点を割っている」と言う感じでしょうか。
細かな欠点を何とかしても、名作とは絶対に言えないのが苦しいところですが。シナリオだけは、根幹部分でどうも瑕疵が抜けきらないというか……



セカンドノベルは、「流行り神」以来”良作になりそうなのに微妙に届かない”ノベルゲームを何度も出している、日本一ソフトウェアの新作です。

内容は、記憶障害で記憶を15分しか保てないヒロインと会話しながら、5年前に彼女が障害を負う原因となった事件の真相に迫る、と言う物。

ヒロインは15分しか記憶を保てないため、起きた出来事(をもとにした物語)を語っている最中に、話が止まってしまいます。それを、あらすじの形で主人公がまとめ、「15分で進められる部分」を増やしていくのがゲーム性の中心。

要するに、
ヒロインの語り → 時間切れ → あらすじまとめ → 続く部分の語り
と言う手順で物語が進んでいきます。また、あくまで「事実を基にした物語」であるため、途中でバッドエンドが発生。これを回避して真相に迫るため、「分岐」を作ると言う手順も発生します。

やたらとあらすじの確認を求められるのは閉口しますが、プレイ時間がぶつ切りになりがちな携帯ゲームとしては、有り難い場面があるのも確か。と言うか、分岐が入り乱れるせいで、プレーヤーの側も作業記憶だけでボタンを押している場面も多くなりますしね。戦闘やミニゲームが面白い大作RPGで、しばらく本筋を中断したら目的地を忘れている現象と同じです。

ただ、そのくせ、切りの良い中断タイミングで一番はまりどころになり得る「次の章の分岐箇所はどこか」が参照できない仕様なのは……
ぶっ続けが前提のテストプレイでは見のがされてしまったのでしょうか?特に、グランドエンドへのEX2入口は、ほぼノーヒントに近いため、攻略サイト頼みとなりました。全く……


以上が概要で、以下システム面とシナリオ面に分けて、記述したいと思います。


まずは、はっきり言ってできた良いとは言えないシステム面。

絵は、正面からのは問題無いのですが、角度が変わった瞬間別人に。相変わらず背景もあまり手間がかかっておらず、総じて今一。

音楽や声も、やたらと音が小さく、オプションで最大にしてもまるで足りません。PSP本体の音量を適切な所まで上げると、起動時のデモ音で飛び上がる羽目になります。

それらはまあ些細な問題として、あれだけノベルゲームを出しているのに、インターフェイスが相変わらずおかしいです。
Lでバックログになるのに、そのバックログをさらに巻き戻すのは十字キーの「上」。Lをもう一度押すと解除。人間工学的に腐ってると思いませんか?そもそもこれなら、「L」ボタンは必要ないでしょう。

これはシナリオ面の問題かもしれませんが、本文からシームレスにシステムメッセージを挟むのは最悪。メタフィクションだからこそ、守らねばならない作法があります。

他にも、毎回毎回あらすじを作成する度にシステムメッセージを挟んだり、ホワイトアウト演出を多用して目に負担をかける辺りは、「本当にいつまで経っても洗練されねえ、学習しねえ!」と、イライラさせられるわけですが。


また、あまりにひどいフラグ立てトラップが、平然と置かれていたりします。公式掲示板では制作者が「詰まりやすい」などと言っていますが、単にフラグ管理がおかしいだけでしょう。
書かれているルートを辿らなければならないシナリオ上の意味は(少なくともプレーヤー側から見る限り)何もありません。何より、他が盲導犬どころかベルトコンベアみたいなヒント過多の状態なのに、ここだけ何のヒントもないのは不自然です。って言うか、選択肢を作れない場面で選択肢を作れてしまうのが問題なわけで、完全なバグ。
修正は簡単に済むことなので、何故アップデートで対応しないのか謎です。PSPは、折角パッチを当てられるのに。まあ多分、アップデートとするとネット環境がないユーザー相手のサービスで経費がかかるからでしょうが、だったらこんな露骨なバグポイント、テストプレイ段階で潰しとけ、と言いたくなりますが。
もっとも、やたらとライターがマニア向けに豪華なおまけのノベルで、「段落途中のミス改行」みたいな信じられない物が残っている位ひどい状況。なので、また調整・チェックにかける時間をケチったであろう事は容易に想像付いてしまいますが。


そもそも、キーワード(カード)指定画面でも、そのまま「セクション~の○○というカード」などと指定してわざわざ選択させるのは、ユーザー馬鹿にしてるのか?と思います。選択無しで進む場合もあり、その方が余程楽。
むしろ、章の合間、ゲーム性も分岐もなく情報が開示される「現実」の話の方が、余程引き込まれたり。

あとですね、私は読み込み時間を省くためにDL版を購入したんですが、説明書が付いてないってどう言うことですか?600円で買えるゲームアーカイブの作品に付いている物が、何故フルプライスのPSPソフトに付属しないのかと。
基本操作をボタンいじって憶えて、登場人物は出演待ち。エミュでSFCのソフトやってるんじゃないんですから、その辺はちゃんとして下さいよ。パッケージ版より、はるかに利率は高いんですから。

追記:
感想を見て回っていたら、HOME画面から見れると言う事が解りました。アーカイブのソフトと違うのは、メモリの問題でしょうか?それならそれで、せめてHOMEボタンを押した時のメニューにショートカットを置けと。
ちなみに解説書は、1ページめくる度に読み込みが入るわスクロール遅いわで、これまたストレスフルでした。あーあ……



さてまあ、そう言う変化球のシステムの話は置いておいて、(インターフェイスはいくらでも罵倒したくなりますが)やはりゲームの評価を左右するのは物語になります。


そしてこのゲーム、基本的には面白くできていると思うのですが、どうにも評価は辛くなってしまいました。

まず、基本的な文章がまた、今一洗練されていません。人称の混乱や、登場人物の説明無き消滅(居たはずなのに何の描写もないままフェイドアウト)などが何カ所か。特に人称・視点の混乱は、ゲーム形式上一番気を使わねばならない所のはず。わざわざ、視点が切り替わった時は演出を入れるような気の使い方をしているのに、あれだけ残っているのは何なのかと。
いい加減、素人臭い文章から脱却して欲しい所です。


ですが、勿論最重要なのはシナリオそのもの。

そしてこちらは、基本的にはできが良いです。破綻もなく最後まで話は進み、中だるみがあっても章の間の展開で興味を引っ張り、キャラも割と魅力的。小さくまとまりすぎている嫌いはありますが、メタフィクションなのにデウスエクスマキナ(あるいは「奇跡」)に頼らずちゃんと見せ場を作って話を終わらせているのは好感触。
女性キャラが乱舞するのに、決して萌えに走らない(萌えが悪いのではなく、リアルよりの重いこの話で萌えを組み込むと破綻するため)ところも、方向性をわきまえていて好感度が高いです。
ですが、じゃあシナリオ面は素晴らしいのかというと……

このシナリオは、最初から「ハッピーエンドはあり得ない」事を明示しています。

過去は変わらず、起こった不幸は覆りません。関係者はそのほとんどが実質的に死んでいるか深く傷ついており、主人公がやっているのは過去をほじくり返す行為でしかありません。それで救いを得られる者がいるのは確かですが、圧倒的な質量で迫る過去の悲劇は、そんな物とは比べものにならないのです。

そもそも、リアルにすれば救いがなく、ファンタジーにしては意味が無いから、心や体、それに社会的な「障害」は、エンターテイメントで扱われにくいのです。別にうるさい団体がどうこう言う以前に、タチの悪すぎる不幸なのですから。

実際、全てのシナリオが終わった段階で、物語の焦点・記憶障害持ちのヒロインだけは救われず、永遠の夏に閉じ込められたままと言う事になります。これを救う奇跡は最初の段階で否定され(海馬領域の消滅が明言されている)メタフィクショナルな救済すら、用意されません。むしろ、そう言う救済をしたら話が陳腐になってしまうからこそ、この手の設定は重すぎる、と言うのが再認識できます。

あとですねえ、この主人公、何とかならなかったんですか?「大事な事を言わない」とか良く解らない設定を作るのは結構ですが、「やるべき事をやらない」キャラは、プレーヤーの分身としてあまりにストレスフル。
特に、明らかに登場人物の一人が、虐待領域に突っ込んでるのを目の前で見ながら、教師にすら報告しないのは何なのでしょう?とっとと児相に電話しろ!そうでなくても、世話をしろとか頼まれているのですから、教師に報告しろという話です。結局これが、後述する事実と相まって、主人公に最悪の印象を残します。
え、シナリオの軸がぶれる?それなら、安易に虐待設定なんか入れなければ良いんです。別に、削っても何の変化もない設定ですから。(主人公の家に一泊するイベントが欲しいなら、「家族が仕事で今いない」くらいにしておけば良いだけの話です)

そもそも、全く同じ描写を一部の演出だけ変えて何度も繰り返すのは、メタフィクションの強調としても感心できません。「過去の事実」と「どこまでが物語か」を曖昧にする手法なのは解りますが、読者の想像に委ねるべき箇所と明確化すべき箇所の切り分けが出来ていないように思えます。
例えば、薬害絡みの設定は、EX2の主観・会話描写だけで、あとは想像に委ねた方が綺麗にまとまります。また、あれだけメタフィクションを強調しながら、主人公とヒロインの関係は一定で、救われない約1名が際だつことになってしまっています。

特に、主人公が最終的に相当ひどい真似をしていることが浮かび上がるため恐ろしく後味が悪くなっています。薬害の原因薬品をヒロイン2名に盛るとか言う唖然とする行為はもとより、肝心な情報を開示せずに真実探求を妨害して、「プレーヤーを」裏切ってるんですよ。何か隠している、言えないことがあるという所までは予想できても、純粋に都合の悪い真実を隠すためにプレーヤーを欺いてるとは思いませんでした。おかげで、最後の最後で作品のイメージががた落ちに。巻き添えで、主人公とくっついてしまうヒロインのイメージも暴落。主人公の裏をかいて情報を揃えたり、一番魅力的だったのに、なんでああなるのかサッパリわかりませんでした。
あと、電話の内容見ると解りますが、主人公は結局児相に通報もせず、あのヒロインを「救ってない」んですよ。卑怯な上にヘタレで、嫌悪感がひどい事に。「義を見てせざるは勇無き也!」とか言いながら、屋上から突き落としてやりたくなります。

あ、最後のオチ「ここからはみんなが考えてね」は、私は最低の逃げと見るので一切評価しません。二次創作なんて、ゲーム本体が面白ければいくらでも湧いて出るんですよ。隙間や想像の余地なんて、好きになったら無限大なんですよ。



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この記事へのコメント
長い。もっと短くまとめてほしいな。
まぁ、具体的なのはいいと思う。
Posted by ララ at 2012年12月28日 19:01
俺は程よくまとまっていると思うぞ。
Posted by Soldier at 2016年02月20日 00:38
まだ書き込む人がいたんだね。
それもつい最近。

それはさておき、このセカンドノベルは個人的には面白かったです。このゲームの中に出た小説をオプションで見られるのは大変良かったです。

悲劇、喜劇両方とも解釈できるSSを書く時はこのゲームのシナリオを参考にしています。
Posted by 名無し at 2016年02月24日 00:59
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