2010年09月28日

何もかもが下らない 劇場版機動戦士ガンダム00 感想

クオリア(ガンダムOO盤)(期間生産限定盤)

セカンドシーズン終了時の感想はこちら

TVシリーズが率直に言って駄作だったので、当初見る気はありませんでした。ですが、映画を見に行きたい気分だったのにろくなものが無かったので、ついフラフラと見てしまいました。
そして、予想の下を行く内容に、お金を払ってみるんじゃなかったと心底後悔。

今作劇場版は、TVシリーズ終了2年後の世界を舞台に、宇宙からの侵略者(!!)と人類の戦いを描く内容となっています。
いや、表題の入れ間違いとか、本編よりマシな内容的ブラックジョークではなく、本当に。

この段階で大概ですが、以下三点、要するに映画として全般的にダメすぎて、正に「話」になっていません。思わず、上映が終わった瞬間「バッカじゃないの……」と呟いてしまいました。

と言うわけで、問題を3つに分けます。

1,破綻する演出
2,迷走するシナリオ
3,テーマの空中分解


まず1。
演出は酷い物です。何しろ、序盤30分で「敵が迫ってきて今正に引き金が引かれようとする瞬間に、横合いからソレスタルビーイングが助けに来て危機一髪」と言うシーンが5回ほど繰り返されます。2回目辺りから、既に繰り返しギャグの様相。

勿論こんなのは小手調べで、以後も
・なんか敵が来てるみたいだけど、どれくらいの規模か説明されない
・味方の戦力も不明確で、何を目的に戦ってるか不明
・対話が大切と言った直後に、情報統制があるから平気とか言い出す大統領

と言った、ギャグとしか思えないシーンが続きます。
一番顕著なのが先遣艦隊が異星知性と接触するシーンなのですが、普通に考えて敵味方識別が目的のはずなのにいきなり戦端開始。そのくせ派遣は三隻だけで一蹴され、目的不明の増援があったりと見事な迷走ぶり。
普通に考えれば、あのシーンを使って描写すべきシナリオパーツは「異性知性には話が通じなかった」か、「戦端を開いてしまった」でしょう。ところが、正面から戦端を開き、地球に情報を送る間もないまま撃砕される(と言うか、どう見ても戦力不足)の連邦軍は、アホにしか思えません。

しかも、序盤いかにも重要人物っぽく描写していた純粋イノベーターをここで使い捨てにしたりと、意味不明。あの人が暴走して戦端を開いてしまった、と言う話にするのが一番解りやすいはずなのですが。と言うか、何のために居たの、あの人?

戦闘シーンはもっと酷く、ただひたすら「ファンネルだか小型宇宙怪獣(©トップをねらえ!)だかの体当たりから逃げ回る」と言うのが続きます。戦闘自体もひたすら宇宙戦で、地上戦や暗礁宙域と言った変わり種は無し。単調でたまりません。

大体、戦力比を描写しない(一万対一とか下っ端が言ってますが、意味不明。だったら、軍が時間稼ぎをする間に恒星間船を使って人類を脱出させる、というプラン以外あり得ないはず)事に加えて、敵の性能が滅茶苦茶で、最後の会戦が全く盛り上がりません。

今回の敵は、
・圧倒的な数(月に匹敵する質量)
・自己進化し、驚異的な速度で人類の武器・戦術を学習する
・接触されただけで汚染され、乗っ取られる

と言う厨設定目白押しの無敵艦隊。おかげで最初から「抵抗は無意味」としか思えません。要するに、「なんかイデだか何だかの力で『対話』とやらを行うしか解決はないのね」と視聴者は思ってしまうわけです。

勿論、それならそれで、「00クアンタムを敵本艦に特攻させる」を目的として、作戦を描写すればいいのです。ところが、何故かこの作品は、「勝てるはずもないのに正面決戦を挑んで、しかも勝てるつもりだったらしい馬鹿な連邦軍が撃砕される中、横合いから出てきた00クアンタムが突っ込んで何故か勝てました」と言う描写にしてしまいます。
ちゃんと作戦の目的を明示した上で演出を行わないと、盛り上がらないって解らないんでしょうか?

少なくとも、最低限以下の点は作戦開始前に描写する必要があるはずです。
・敵は圧倒的な戦力である
・連邦軍の任務は、00クアンタム突撃まで敵が地球圏に侵入するのを阻止する事である

もしそうでなく、現行シナリオどおりの「連邦軍が抵抗空しく押し切られる」と言う描写にするなら、連邦軍が「勝てるはず」と考える根拠を描写する必要があります。だって、月と同じ質量ですよ?そんな物、敵性物体じゃなくてもあっさり地球が滅びますよ。
月規模の質量を地球の直撃ルートから外すエネルギーって、あの世界でもまず調達不可能なんですが……

演出については、他にも色々酷いところはありまして、相変わらず艦内の重力描写が滅茶苦茶(浮かぶの涙だけかよ!)だとか、宇宙空間なのに爆発の破片が大気圏内みたいに広がるとか、失笑するレベル。
あ、相変わらず大事な事を一々セリフにする大馬鹿な脚本もですが。

とにかく、全般的に酷すぎて唖然とするレベル。最後の頼みの戦闘シーンすら楽しめなくて、一体どうしろと。


そして、2。
シナリオは、ひたすら迷走します。

まず、これ2時間も要らないんですよ。敵性知性の侵略を描くなら、サジのパートは全部カットすべきです。扱えもしないなら、宇宙への棄民政策問題やイノベーターと人間の能力差から来る差別など、描写すべきではありません。特に、1でも書いたイノベーターの大尉などは、存在ごと抹消すべきです。物語上、完全に無駄ですから。
これは、存在価値のないマリナ姫(ラストの説得力の無さは、ある意味この作品の真骨頂)や、スメラギの恋愛(?)もそう。ギャグ担当のどこかの三枚目など、ただでさえ盛り上がらない最終戦闘で、空気を読まない繰り返しギャグを展開して、視聴者の心胆を絶対零度まで冷却してくれます。

1で書いた演出の問題は勿論シナリオにも絡み、物語はひたすら空転。
そもそも、情報統制が完璧と言った直後に無意味な全市民シェルター収容を布告する大統領とか、登場人物はボンクラしかいません。
また、もうオチが「異性知性ともわかり合える」なのは解っているため、最終決戦で在庫処理のごとく死んでいくキャラ達に、全く感情移入できません。だって、結局無駄死なのは、こっちは百も承知なわけですから。

他にも、TVシリーズラストで物々しく出てきた恒星間移民船が、結局単なる砲台キャリアになっていたり、一々パーツが噛み合いません。いや本当、枝葉の刈り込みとかやってませんよね、これ。

大体、最後のオチで、恒星間移民船に乗り組めるのは能力的に優れたイノベーターだけって、すげえディストピアができあがってる気がするんですが、気のせいですかね?
量産クローン(イノベイド)をシステムのパーツ扱いで使ってたりとか、どう見ても最悪の統制社会です、本当に……幸せは義務です市民。



で、3なんですが、結局最後までテーマと向き合うこともせず、逃げ回りましたよね?

00の基幹テーマは、最後の取って付けたようなメッセージにもあるとおり、「武力での扮装根絶は可能か」です。
ところが、このテーマは一期中盤から脱線し、単に「平和創出を唱えるテロ組織と、別のテロ組織の紛争」へとシフト。あげくに第二期では「そのテロ組織残党と、ティターンズもどきの暴走機関の無意味な殴り合い」になり果てます。
で、結局「お前等の、武力による平和創出の方法は気にくわない」と言って武力で統制機関をテロ組織残党がぶっつぶしてTVシリーズは終了。

ところが、映画版になると、なぜか紛争は根絶されており(!!)その理由は、ソレスタルビーイングがいるから、と言う事になってしまっています。いや、お前等実質何もしてないじゃん。彼らは「我々が存在していることで抑止力に」と、デスノートの自称天才そっくりな世迷い言を言ってますが、現実的に彼らを恐れる理由はもう世界にはありません。太陽炉の独占が崩れている以上、彼らはもう、多少性能が良い機体を持ってるテロ組織でしかないわけですから。

そして、どうも制作者はラストの展開で「武力よりも対話」を示したつもりになっているようですが、お門違いも良い所。
連邦軍の武力がなければ対話の使者である00を敵母艦に送り込むこともできなかった、と言う話をしたいのではありません。あれは武力というか、害獣駆除みたいなもんですから。

問題は、対話と武力という話は人類同士でなければ(あるいは、進化した人類であるイノベーターと人類の間)でなければ、テーマとして意味が無いと言うこと。喧嘩を無くすことはできるか、と言う話をしている時に、「僕は犬の気持ちが分かります!争ったことはありません!」みたいな話が持ち出されるようなもんです。
あんな金属基盤のナノマシン群など、ぶっちゃけ対話できなくても別に問題無いわけです。今回、有効な駆除/対処方法が「対話」(って言うのか、あれ?)だっただけで。

結局、恒久平和を達成したらしい地球圏ですが、それが何に支えられていて、社会の何が変わったのかは描写されないまま。説得力の欠片も無く、ポップコーンの容器をスクリーンに投げつけたくなりました。

と言うわけで、もうどうしようもない駄作です。時間と金の無駄なので、見に行く必要はありません。


それにしても、オマージュのつもりかもしれませんが、名作のガジェットを無節操に引用してくるのは、「今時○○かよ!」と、イライラさせられますね。
さらば宇宙戦艦大和だの、トップをねらえ!だの、逆襲のシャアだの、トランスフォーマーだの、真似するなら丁寧な作劇や説得力のある演出を真似しろよ!と怒鳴りつけたくなります。

まあ、「ガンダム」と名前が付くだけで、ホイホイお金を落とす我々のような馬鹿な客がいる限り、こう言う駄作は生産され続けるのでしょうが……
寒い業界という奴です。




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この記事へのコメント
はじめまして。いつも拝見しております。

>00の基幹テーマは、最後の取って付けたようなメッセージにもあるとおり、「武力での扮装根絶は可能か」です。

これはテーマというより、テーマを描くための段取りに過ぎないのではないでしょうか。
00の基幹テーマは「人はわかりあえるかどうか」という事だと思いますので、コミュニケーション可能かどうかもわからない異性体との接触をラストに持ってくるというのはそれほど的はずれではないと思います。とりあえず映画の評価についてはおいておきますが。
Posted by 蟹の人 at 2010年09月29日 18:54
記事楽しく読ませていただきました
共感しました
私が言いたくても上手く文章に出来なかったことがきちんと文章化されていて。また、自分と同意見の人がいるという事実に凄く嬉しくなりました。
胸がすっとしました。ありがとうございます!
私は映画を観て00への愛が完全になくなるのを感じました
今まで、刹那筆頭にさまざまなキャラが「そのキャラがそういう思考するのは、あるいは行動言動とるのは不自然じゃないか」と思われるようなことを行う度に、いやこれは脚本家の書き方が悪いのだ。本来ならこんな感じになる筈でこういう感じのことを書きたかった筈なのだ、と、脳内補正をそれはもう物凄く一生懸命行ってきたのですが、それをやめてしまえば。このキャラはこういうキャラなのだとそのまま受け取ってしまえば吃驚するほどすっと愛がなくなるのを感じました。
大体冒頭でアンフから逃げ回る刹那のまわりに体調30センチの電子妖精的なものが浮かんでいたりトカレフで頭を撃ち抜かれても身体なんてスペアに乗り換えれば大丈夫なのだ死にはしないのだというキャラが出てきていたり宇宙人が闊歩していたりするのを観せてくれていれば、TVシリーズなんて最初から観なかったし、期待だって全然しなかったことでしょう。
テーマらしき「武力による紛争根絶は可能か」「どうしたら紛争根絶は可能になるのか」全て描けてませんでしたね。何故か途中から「ディスコミュニケーションから不和」やら「対話の大切さ」やら「どうやったら人と人はわかりあえるのか」やらがテーマに変遷(変遷すること自体おかしい)していってたみたいですがそっちもまるでお話になっていない。全然描けてませんでした。酷い脚本にも程があると思いました。むしろテーマはあったのでしょうか。まさかあの映画の結末にテーマが集約されているというのなら、あそこにいたらせたかったのならば、はっきりいってTVシリーズ第一話から全て何もかも作り直す必要があるのに製作者は気付いているのでしょうか。それすら疑問です。
人間ドラマとなる材料(キャラクター・世界観)は作成さえされませんでした
主人公刹那が紛争根絶という理念のもと行ってきた行動により、直接心身を傷つけられた経験を持つ名前のあるキャラクターが0人な事実からもそれは明らかです。そういうキャラとぶつかりあってこそドラマっていうのは生まれるものですよね?
それでも、二期終了時点では「紛争根絶という目的達成の為になら脇目も振らずがむしゃらに頑張れる姿」にだけ着眼点をおけば、まだ、愛は残せていたのです。
目的達成の為に一生懸命頑張れるキャラって素敵だなくらいには思えていたのです。それも映画を観て出来なくなりました。
なんだったんでしょうねこの作品(というのもおこごましい何か)
Posted by あい at 2010年09月29日 21:13
あんたが00を理解できてないのはわかった
Posted by 1 at 2010年10月05日 23:36
00を擁護してる連中の気持ちがわからない
Posted by dsk at 2010年10月21日 21:35
デカルトは対話に臨まなかった場合の可能性として、刹那と対にしたそうです。
私としては「対話しようとしない奴に価値はないから早く死んでね」というメッセージにしか見えませんでしたが。
Posted by 通りすがり at 2011年11月23日 09:11
WOWOWでもう一回見てみてやはり微妙な気分のまま終わったので
色々と感想を検索していたのですが
こちらの文章を見て気分がすっきりしました

そもそも、こんな誰もが思ってはいても答えが出せない大きなテーマを
人間以外のよく分からない金属と主人公が勝手に分かり合っっちゃったよ!ってだけで終わらされても
「あ、はい・・・え・・・?」ってなるだけで冷めてしまいました
あとバトルシーンが大半を占めるのにそれが面白くないのは致命的に痛いですね
Posted by 涼 at 2011年12月31日 08:11
私も、上のコメントでの「蟹の人」さんの指摘に同意です。
その指摘に対する意見が聞きたかったところですが、時既に遅しですかね…
久々に改めてこの作品を見直し、webを彷徨いてたら、たまたまこのエントリーに辿り着きついでにコメントを残しているのですが、私の個人的な感想としては、「着想の時点では幾らでも面白く出来たであろうだけに、物語の紡ぎ方において残念な点が散見されてしまった」惜しい作品という印象でした。では、失礼致します。
Posted by 通りすがりのアマガミスト at 2015年03月12日 01:54
きちんと映画の内容を理解してから、感想を書きましょう。
Posted by 名もなき天才 at 2016年09月22日 08:29
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