2010年10月12日

相変わらず、巻き添え被害を考えない施策 マジコン規制の話

「マジコン」販売に刑事罰 文化庁、来年にも著作権法改正案(サンケイビズ)
「マジコン」販売に刑事罰 文化庁、来年にも著作権法改正案 全世界で推計被害4兆円(産経ニュース)


DL違法化をはじめ、著作権関係ではずっと規制強化の流れが続いています。
今回のマジコン規制案もその流れの中にありますが、DL違法化と違って積極的な反対論は余り見られません。

しかし、規制に伴う周囲の被害を考えない・技術革新や市場・流通への悪影響を考慮しないという意味で、やはり賛成するのは難しい内容になっています。

まず、この記事のもととなっているのは、文化庁のWEBページで公開されている、こちらの文書になります。

知的財産推進計画2010及びアクセスコントロール回避規制の在り方について

そして、P16に必要な施策がまとめられています。

>・ 著作物を保護するアクセスコントロールについて、正当な目的で行う回避行為は適用除外とした上で、一定の回避行為を規制することが必要である。
>・ その対象としては、具体的には、DVDなどの実質的に複製権を保護する目的で用いられているアクセスコントロールを回避することや、マジコンを使用してアクセスコントロールを回避すること、視聴期間の設定等のインターネット配信で一般的に用いられているアクセスコントロールを回避すること等を規制することが挙げられる。


※冒頭の「・」は、元ファイルでは半角のですが、文字化けを引き起こすため、全角に変えてあります。

早い話が、「アクセスコントロール回避手段の違法化」です。
そして、例によって一番最後の「留意点」で、形だけユーザーの利便性に考慮したと言うポーズを見せていますが、これまた酷い物。。

と言うか、ここに、今回の改正の本質が端的に表れています。


>正当な著作物の利用を阻害しないよう、適用除外規定を設けることが必要である。また、具体的な規定については今後さらに検討することが必要である。


何を言っているかというと、「正当な著作物の利用」を例外的に認めるという規定を置く、と言う意味です。個人の所有物はどのように利用しようと自由、というのが近現代社会の大原則ですが、ここでもそんな話は蹴飛ばしてそしらぬ顔です。
当然、法律で「これはやって良い」とされた「適用除外規定」以外に当てはまればアウトと言う事になり、技術進歩に伴って可能になる著作物の新たな利用法は、全て取り締まり対象としてしまうことができます。

仮に「正当な利用」と言った一般的文言を入れたとしても、結局は裁判で訴えられてから、「自分の利用は正当である」と証明させられる羽目になります。例外的な規定というのはそう言う物ですから。


大体、記事中にもある、マジコン業者の「問題」を見てみましょう。

>マジコンユーザーがゲームのダウンロード目的ではなく、音楽や映像の再生など別の用途での利用を主張するケースや、販売時点では回避機能をつけず、購入後にネットで回避プログラムをダウンロードさせるケースもあるなど、手口が巧妙化している。

これを不可能にする法改正って、要するに「建前はどうあれアクセスコントロール回避に使える」ものを、ジェノサイドするって事ですよ。
当たり前ですが、アクセスコントロール回避を行うエミュレーターは、パソコンが本場です。スマートフォンや各種情報端末は絶賛高性能化・パソコン化してますから、その内同様の機能を持つソフトは出てくるでしょう。
仮に、そう言う面をクリアするために、「アクセスコントロール回避プログラムを弾くためのプログラム」みたいなものを必須にするとしたら、日本の情報機器はガラパゴスどころかアトランティスの生物になりますよ。滅亡的な意味で。
あ、勿論、この法改正が通ったら、マルチリージョンのプレーヤーは全滅ですよ。と言うか、明確にターゲットの一つでしょう。

そして何より、「アクセスコントロール回避」が法律が刑事罰をもって対応しなくてはならないものだという認識に、私は反対です。
アクセスコントロールというのは、つまるところ「売り手が使って欲しくない機能をわざと封印してある」に過ぎません。その機能を使った結果損害を被るのは自己責任でしょうが、「可能な事を可能にする」事を犯罪とするのは、技術の発展に対する重大な挑戦です。

大体、アクセスコントロールの代表例であるリージョンコードなんて、特定地域版をボッタクリ価格で売るための市場独占策ですよ。そんな物を刑事罰を押し立ててまで維持してやるなんて、一体どんな正当性が主張できるのやら。
本質的にデータであり、バックアップによって何年でもアーカイブしておける動画を、わざわざ数年で壊れる円盤に閉じ込めているのもそう。本来なら一番安全なはずのデータ販売(DL販売)がアクセスコントロールガチガチのせいで、「データ破損があってもバックアップできる」からとDVD/BLU-rayを買うとか、どんだけ倒錯した状況かという話です。

そもそも、犯罪を犯した会社がペーパーカンパニー形式で逃れたり、すぐに別会社を立ち上げるなど、経済犯罪ではおなじみです。それは、それを可能とする会社法等の制度の問題であって、マジコンの問題とは本質的に異なります。
既に不正競争防止法で差し止めも損害賠償も可能なのですから、あとは粛々と取り締まれば良いだけです。あれだけ派手に色々改正したのですから、ネット上でデータを売っている業者とか、追跡できないはずがないですよね。


とにかく、敵をどうしようもなく真っ黒な「マジコン」に絞っておけば反対も少ないだろう、と言うのは、いつもの「児童ポルノ対策」(反対する奴はペド野郎!)メソッド。あるいは、もっと解りやすく「治安維持法」(取り締まるのはアカだけです(キリッ))パターン。
本当、どこまで規制を広げるつもりなのか、うそ寒いものを感じざるを得ません。



最後に。
これは個人的な経験に照らして断言しておきますが、文化庁(の官僚)は、個人・ユーザーの利便や利益など、全く考えていません。「考慮した」というポーズを見せる以上の事をする気は無く、ズブズブの関係にある利権団体の利便を図る事しか考えていません。
なお、これは彼らが金で操られているわけではなく、単に「そうすることが国益に資する」と本気で信じているからです。御用学者と省庁の関係も似たような物ですが、同じ意見・世界観の「識者」としか話をしないので、自然とそうなるわけです。審議会とか勉強会とかの議事録を見れば、どの省庁もそんなもんです。


Free Culture
Free Culture

レッシグがこの本を書いてから、もう7年位経ったわけですが、その危惧が現実になりつつあるのか回避されつつあるのか、まだはっきりしてきません。(※ この本で一番力点の置かれた「問題」は、著作物の「利用」そのものの規制)
とは言え、この問題をはじめ、パンクどころかコントロールドなサイバー世界像は、十分な可能性と共にちらつき続けています。


10/24追記
例によって、P2Pとかその辺のお話@はてなさんが、詳細な記事を上げているので、興味のある方は参照して下さい。





その他、当BLOG内の著作権関連エントリーはこちら





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この記事へのコメント
すごい素朴な疑問なんですけど
ここのようなグレーゾーン上等のアニメのキャプブログが
著作権を語るってなんだかおかしい気がするんですけどね。

過剰な著作権について語るなら
逆にせめて現状のルールである
引用の範囲内というのをしっかり守っていないと
何の説得力も出ないと思うのですが。

結局、ポジショントークで過剰な規制ハンタイって
言っているって風にしか取れません。
Posted by 著作権関連読みました at 2010年10月18日 13:15
ルールって、著作権法第32条の事ですよね?
掲載している画像は、その部分について批評(感想)を附すための引用ですので、特に問題無いはずですが。

「ポジショントーク」ってのは、例えば私がマジコン業者だからこう言う記事を書いてる、と言ってるに等しいんですけど、理解してます?
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年10月19日 23:31
引用の範囲内とおっしゃりますが
最近の俺妹記事の一発目から言わせていただけば
このキャプチャを引用する必然性がどこにありますか?
なぜ前のシーンをキャプチャして
引用する必要があるのでしょうか?
この感想とキャプチャの間に主従関係ありますか?

言い方が悪くなってしまいますが
このブログにとってキャプチャは
結局ブログ記事の「賑やかし」でしかないと感じますが。
いかがでしょうか?

ポジショントークというのは
こういうキャプチャに対する考えの甘さなどから
ただひたすらにユーザーの利便だなんだの
耳当たりのいいキレイ事風なことを言うだけで
真剣に著作権に対して考えていない人、
としか思えなかったからです。
だから、自分が権利者側となれば、
行政もっとやれとしかいわない人なんじゃないかと思ったのです。

けいおんなんて毎回テロップで警告されてたじゃないですか。

それでもグレーゾーンでもなんでもなく
一言で「引用」だから問題ない、なのでしょうか?
Posted by 著作権関連読みました at 2010年10月20日 09:10
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