2010年10月23日

俺妹等に絡んで インセスト(近親相姦)タブーと遺伝上のリスク

インセスト(近親相姦)タブーと遺伝上のリスク


加奈 ~いもうと~(限定版:サウンドCD、オリジナルブックレット同梱)
加奈 ~いもうと~

12/21追記
親子の危険率計算が間違っていたので、訂正しました。


↑がそろそろ発売という話を聞きまして、こんな話を。

後、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」(当BLOGの感想はその他のこちら)関連で、やたらとこう言う話をして絡んでいる人間を複数箇所で見かけたもので。
あ、先に書いておきますが、危険率がどうあれ、現実にいるかも知れない人間を「人間以外」みたいな呼称で罵倒するのは、間違ってもやっちゃあかんと思うわけですよ。同性愛者なんかと一緒でね。勿論、それ以外の部分、特に権力関係が絡むと話は全然別ですが。(親子とか兄弟とか、現実で問題になるのは、多くが性的虐待に他ならないからですわな)

閑話休題……

私、妹物はこよなく愛しておりまして、オチが義妹だとモニターをジャイアントスイングしたくなる手合いでございます。当然、この辺の話には色々興味を引かれるわけですよ。
で、よく考えたら手持ちの知識でも、普通に計算ができる事が解りまして、実際インセスト(近親相姦)ってのはどれくらい遺伝的に「やばい」かを、計算してみようと思ったわけです。

と言っても、至極単純な計算です。確率について説明されれば、小学生だって解るでしょう。
なお、式内の数字は全て全角で打たせていただきます。解りやすいように、変数(nとかxとか)を使わず、「」や()付きの説明文と併用するためです。


前提1
人間は誰でも、平均して4つほどの「危険な」劣性因子を持っています。
一応注記しておくと、劣性というのは二つの染色体の両方で揃わないと効果を発揮しない特性の事で、良い悪いとは関係ありません。
またここでは、両親共に健康(劣性ホモではない)と仮定します。幸か不幸か、危険因子劣性ホモの(既に障害を発症している)人は、あまり子どもを作ろうとしません……

前提2
劣性因子が揃う確率は、「(父親からその遺伝子を引き継ぐ確率)×(母親からその遺伝子を引き継ぐ確率)」です。両方揃ってはじめて起爆。
もう少し細かく書くと、「(父親がその遺伝子を持つ確率)×(1/2)×(母親がその遺伝子を持つ確率)×(1/2)」になりますね。問題となる危険な遺伝子を親が持っていなければ、そもそも引き継ぐ可能性は0です。そして、持っていたとしてもそれは二組の内の一つなので、引き継ぐ確率は1/2となるわけです。

前提3
一般人がランダムにペアリングした場合、両者がその遺伝子を持つ確率は(「数百分の1の1~数十万分の1」)の2乗です。つまり、非常に低くなります。


と言うわけで、やばそうなペアの危険率を計算してみましょう。
なお、異常は全て常染色体上(男女差がない)とします。XY染色体上を仮定しても、計算がややこしくなるだけであまり意味はないので。


まずは、ある一つの危険因子についての確率を計算します。


1,親子の場合
ここでは、仮に父親と娘と仮定します。(母と息子でも確率は同じ)
つまり、式中の「父親」は「母親」の父親です。解りにくいかもしれませんが、要は「母親」は娘と言う事。

(父親かがその遺伝子を持つ確率)×(1/2)×(母親がその遺伝子を持つ確率)×(1/2)
=1×(1/2)×(1/2)×(1/2)
=1/8

説明:
父が因子を持つ一方、娘が同じ因子を父から引き継いでいる確率は1/2。そして、両者の因子がその子どもに引き継がれる確率は(1/2)^2。以上から、1/8となります。


2,兄妹/姉弟
=(父親かがその遺伝子を持つ確率)×(1/2)×(母親がその遺伝子を持つ確率)×(1/2)
=(1/2)×(1/2)×(1/2)×(1/2)
=1/16

説明:
この場合、条件を文章で書くと、「兄妹両方が同じ因子を親から引き継ぎ、同様に子どもに引き継がせる」と言う事になります。


3,叔父/叔母と甥/姪
例によって、叔父と姪としましょう。つまり、父親=叔父、母親=姪です。

(父親かがその遺伝子を持つ確率)×(1/2)×(母親がその遺伝子を持つ確率)×(1/2)
=(1/2)×(1/2)×{(1/2)×(1/2)}×(1/2)
=1/32

ポイントは、姪に叔父と同じ祖父/祖母の危険因子が引き継がれている確率は、(例によって祖父の因子として)「(祖父から親に引き継がれた確率)×(親から本人に引き継がれた確率)」で(1/2)^2となっている点です。


4,従兄弟同士
(父親かがその遺伝子を持つ確率)×(1/2)×(母親がその遺伝子を持つ確率)×(1/2)
={(1/2)×(1/2)}×(1/2)×{(1/2)×(1/2)}×(1/2)
=1/64

まあ、流れからして説明するまでもないでしょう。「3」に比べて、1/2されるだけです。ここからが「社会通念上問題とされていない」範囲ですね。
どうでしょう?割と高めと感じますか?


ですが、ここで終わりではありません。
最初に書いたとおり、健康な一般人でも、リスク因子は平均4つ(つまり、両親合わせて8つ)ほど持っています。つまり、「全てのリスクを回避する確率」を、計算する必要があります。

つまり、危険率は、全体からリスク要因を全部回避する確率を引いた数値、「1-{1-(さっき出した確率)}^8」を計算する必要があります。
ただし、親子間だけはちょっと例外です。親子の場合、問題になるのは親(上記の例だと父親)が持つ四つの危険因子だけなので、8乗ではなく4乗で計算することになります。
結局、親子と兄弟では遺伝子の共有率(期待値)は1/2で変わりがないのです。医学(遺伝学)では、親子と兄弟をほとんど区別しません。

面倒なので、そのまま結果だけ書きましょう。

親子 :0.4138183594
兄弟 :0.4032805262
叔父姪:0.2243001203
従兄弟:0.1183735650

となりました。結構ビックリした人も居るのではないでしょうか?特に、従兄弟の危険率。欧米では従兄弟婚は禽獣扱いされる場合もありますが、この辺を見ると一瞬同意しそうになるかと思います。(母集団の小さい王家・貴族はそう言う事を言ってられなかったわけですが)

私も一瞬そう思いましたが、実はこれは見た目ほど「凄い」数字ではないんですよね。

説明しましょう。

1,実際に生まれてくる障害児はもっと少なくなる
2,遺伝性疾患のほとんどは親の遺伝子と関係ない

1ですが、重すぎる障害を生む因子の場合、そもそも生まれてこないからです。人の形取る前に流れる、と言う状態ですね。この場合、妊娠に気づかないまま終わりという事すらあります。これは後述しますが、遺伝性疾患以外でも同様です。なので、俗流イメージの「奇形児ができる!」と言うのは、実はそんなに多くなくなります。

そして、実は一番重要なのは2です。
先天異常を持つ人間は常に5~10%(統計の取り方で変わる)いるのですが、これはほとんどが親の配偶子(精子/卵子)形成段階のトラブル・突然変異か、妊娠・出産時のトラブル(だから、安全なわけ無いと何度言えば)が原因です。純粋に親から引き継がれたものなんて、全体の1割以下とも言われています。
従って、実は障害児が生まれてくる確率全体としては、従兄弟で2倍、叔父姪で3倍程度にしかならなかったりするわけです。

従って、法律上従兄弟からOKとしているのは、この点では意味があります。
と言うわけで、表題に掲げた計算の話はここまで。ネット上に転がしておけば、関連する話が出た時に、誰かが読んでくれるんじゃないかという算段。


以下は、傍論と言うか、おまけの話になります。


まず、民法の婚姻禁止規定は、別に遺伝子がどうこう言う話で設定された法律ではない、と言う点に注意が必要です。

だから、一度「親」になった人間は、(血のつながりと関係なく)親子関係がなくなっても婚姻は不可能、となっていたりしますので。養子と結婚なあしながおじさん(あるいは光源氏)プロジェクトは、法的にはできないのですよ。

そもそも、遺伝的リスクはインセストタブー(近親相姦は良くないと思います!と言う社会通念)が成立した原因としては、一番ではないだろう、とも言われています。社会的に考えて、多くの集団と婚姻関係を結んだ方が、一種の同盟関係が成立して有利なわけで。
そして、長く一緒にいると性的魅力を感じなくなる、とかうさんくさい研究もありましたが、それが無理な場合は割と簡単に破れると言うのもまあ自明。それが無理なら、人類は少数集弾で暮らしていた初期に、あっさり絶滅しています。実際、災害で男性が一人除いて全滅し、全員が同じ疾患を患っていた太平洋の島なんてのもありました。(でも、目に見える問題としてはその疾患だけだったりします。これは、遺伝リスクがそこまで大きくない事を示す例)


最後に、この手の遺伝リスク、現在では体外受精でスクリーニングをかければ、ほぼ回避できたりするのですよね。
前に何かの感想で書きましたが、この手の「問題」は社会との関係の話で、科学的な根拠というのは実は割とどうでも良いと言うのが、数字でも実感できるかと思います。



シンプル病理学 改訂第5版
シンプル病理学 改訂第5版


↑関連。
医学生が一夜漬けに使うので有名なテキストですが、高校の生物位の知識でもそれなりに読めたり。関連する話も、それなりに書かれています。
ただし、症状がエグイ病気の多くが「原因不明・治療法無し」だったりする事に気づいて鬱になっても、責任は負いかねます。





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この記事へのコメント
>>社会的に考えて、多くの集団と婚姻関係を結んだ方が、一種の同盟関係が成立して有利

調べたらインセスト禁忌というのが出てきました。
http://bbs.jinruisi.net/blog/2010/08/000856.html


桐乃へのハルパゴス的意見:バレるのが駄目な事なら初めからしないか逆に周囲を巻き込むかすればいいんじゃねえの?←思考が人外
Posted by   at 2010年11月02日 20:01
これは染色体の数などが考慮されているのでしょうか?
またその因子が同染色体上にあった場合なども考慮しなければならないので、危険率はもっと小さな値になると思うのですが。
Posted by Michael at 2010年12月21日 12:11
染色体単位で考えても、同じ染色体上に異常がある可能性は1-{(46×45×44×43)/46^4}で、12.5%程度。逆に相同染色体それぞれに異常があると、どちらかの因子が必ず引き継がれる羽目になりますが、この可能性も同じ計算式になって12.5%程度。さらに、本当なら組換え率も絡んでくるのですが、細かく計算しても数値はそんなに大きく動かないはずです。

あ、それとは別に、指摘を受けて見直しをしていたところ、親子の計算式を変えるのを忘れていた事に気づきました。親子の危険率は、兄弟の場合とほぼ同じで、書いてあった数値より遙かに低いです。申し訳ありません。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年12月22日 01:24
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