2010年11月18日

もう、馬鹿は喋るな ~暴力装置としての自衛隊~

「自衛隊は暴力装置」仙谷官房長官、撤回し謝罪

勿論、「馬鹿」と言うのは、批判しているマスコミ等のことです。

何度も書いていますが、私は民主政権には失望し続けています。ですが、こんな訳の分からない批判をされる理由はありません。はやぶさの時と一緒です。

「暴力装置」と言うのは政治学上の基本タームで、ちょっとレベルの高い学校なら高校の公民で、大学なら学部教養レベルで習うことです。
記事の反応を見て回っていて、原典がウェーバーだったことを思い出しましたが、「ウェーバーの」と枕詞をつける必要も無いくらいの、基本語彙です。

意味は、文字通り「暴力を行うための装置」で、これを独占していることが、「国家」が一つにまとまるために不可欠です。そうでなければどうなるかって?アフリカの失敗国家を見れば一目瞭然です。傑作ルポ「カラシニコフ」は、これを端的に示している本なので、興味があれば図書館ででもどうぞ。

そして、この「暴力装置」に、否定的・悪口的な意味はほとんどありません。基本的に、権力が法律を定めて国家内部を一つにまとめるには、「実力による抵抗を排除できる暴力装置」が絶対に必要です。これが破れると内戦、または崩壊国家と言うのは上記の通り。
典型的には軍隊と警察。そしてこの場合、「自衛隊は軍隊ではない」事とは、何の関係もありません。そもそも「暴力装置」と言った場合、国内での実力の独占の方が重要、と言うか本質になってきます。「国家」を維持するのに、「外向け」の軍事力はともかくとして(9条の話ではなく、世界統一政府のような「外」を持たない状態を想像して下さい)が、「内向け」の実力は絶対に必要なのです。それが暴力装置です。
そもそも自衛隊の成り立ちが「警察予備隊」だったことを、全員忘れてるんでしょうか?「軍隊」を持たない(連合国へアウトソージングする)事は許容できても、国内の革命、つまり内乱への対処が必要なので設立されたのが警察予備隊です。正に、出発点からして典型的な「暴力装置」なのです。

従って、自衛隊が「暴力装置」と言うのは政治家なら自明の理屈です。しかも、発言文脈は文民統制の重要さを訴える内容で、完全に正しい用法です。

で、問題は、こんな用語を知らずになるのは不可能な文系エリートのマスコミや、職業上の基礎教養であるはずの政治家が、非難の大合唱をしているところ。大手マスコミは記憶が確かなら、採用時にかなりしっかりした筆記試験を課しているはずですし、そもそも法・経・社会学部辺りの高学歴が知らないはずのない話です。
つまり、彼らは解ってやっているか、その程度の基礎教養も忘れ去った馬鹿かのどちらかと言う事。

報道メディアの役割は、一次情報に解説を付加すること(それがなければ速報・通信社だけでいい)なわけで、仕事しろよと言いたくなってきます。
ゲーム脳やマイナスイオンの時の科学部は、「元々彼ら文系だし……」と諦めも付きましたが、こんな面目躍如の解説チャンスに、やる事がこれでは本当にがっかりしてしまいます。ネットがいくら発達しても、大部分の流通情報はゴミのままなわけで、情報に「タグをつけられる」マスメディアは絶対に不要にはなりません。

だから、もうちょっと、意地と存在意義を見せつけて下さい。





タグ :社会

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この記事へのコメント
「>政治学上の基本ターム」
として発言したなら撤回して謝罪する必要なくね?

たまたまそういう意味があるだけで
仙谷は何かしら別の揶揄のつもりで使用した
と考えるのもある意味妥当だと思うけど。
Posted by すぬ at 2010年11月19日 04:03
まったく同意。

官房長官の発言云々より、それに対するマスコミや野党の反応具合に、ひどく驚き、エリートと言われるはずの層の日本人の教養のなさに落胆した。

マスコミも野党も、「あ!いま自衛隊は暴力って言った!やっぱ左翼だ!」っていうゴシップ記事的な反応ではなく、官房長官がどのような意図で「暴力装置」をいう言葉を使ったのか?その学術的・政治的な意味を踏まえて、突っ込んで欲しい。

右か左か、国家観がどうかとかという問題の以前に、日本人は公正な政治的判断を行える状況ではなくなっているのではないか。。と感じてしまう出来事であったことを、非常に憂う。
Posted by maggie9999 at 2010年11月19日 12:13
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101118/plc1011182236025-n1.htmの記事を読むと、
産経新聞としては「学術用語としては正しいが、日本では左翼活動家が使っていた言葉というイメージが強い。
仙谷官房長官が使うと、まだ左翼思想が抜けていないように受け取られてもおかしくない」という立場のように思えました。
(事業仕分けを「政治の文化大革命」と表現したこともある人物ですから、
また左翼的な言葉が出たと受け取る人もいるでしょう。)

産経新聞はただの「馬鹿」ではないようです。
ちょっとひねくれた「馬鹿」でしょうか?

ところで、非常に小さな揚げ足を取るようですが、
文中の「アウトソージング」は「アウトソーシング」の間違いですよね?
「outsourcing」ですから、濁点がつくことはないと思います。
Posted by poscam at 2010年11月19日 15:23
>すぬさん
日常会話で出たならともかく、政治家が国会の答弁で文民統制に言及しながら使って場面で、「たまたまそう言う意味がある」はありえません。
撤回したのは、基本的なクレーマー対処術ですね。言葉尻とらえられたら謝って話終わらせろ、って奴です。誠実に説明しても言い訳にしか聞こえず傷口広げてきた、過去に学んだとも言えるでしょう。(貧乏人は麦を食え、から産む機械まで)
勿論、それが最適手になるお国柄というのが、一番の問題なのですが。

>maggie9999さん
まあ、そこですよね。床屋政談やニコニコの実況ならともかく、知識層が雁首揃えて何やっとんじゃ、と。

>poscamさん
左翼がよく使っていたと言っても、定義は踏襲してるわけですし、批判する理由にはならんのですけどね。そもそも、左翼が大好きな革命のための力(SSや人民解放軍みたいな「党の軍隊」が典型)ってのも、正に暴力装置なわけで。

アウトソージングは、仰るとおりoutsourcingの意味です。私が口に出すとソーシングじゃなくてソージングになる(単に発音しにくいから)ので、私は良くそう書きます。悪しからずご了承下さい。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年11月20日 01:49
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