2010年11月23日

東京都の青少年育成条例改正案、条文が判明

山口弁護士が、PDFでアップしてくれています。

http://yama-ben.cocolog-nifty.com/20101122seishounenjourei.pdf


内容は、予想どおり笑止千万。

早速良く読んでないのか都の説明をコピペしたのか、ひどい記事が出回ってますけどね。

都の青少年健全育成条例改正案、条文が明らかに、ネット・携帯関連も修正

修正・削除?これで妥協したと思ってるのが、正に警察官僚の度し難さでしょう。いくらでも都合良く運用できる条文の曖昧さが全く変わっていないのもそうですが、これから指摘するように、理念は腐りきったままです。



まず、理念の部分から。
18条の六の二で、児童の保護「心身に有害な影響を受け自己の尊厳を傷つけられた青少年」の「尊厳」の回復を講ずると謳っていますが、なんとこれに対応する施策がありません!

表現規制・業者の締め上げ・フィルタリングの義務化(推奨ソフトの指定組織とか作れば、最高ですよね!)、あげくに親の責務まで盛り込みながら、行政でなければできない被害児童の保護施策がないのです!
児相の増員、カウンセラーの配置、小児科病院や警察との連携、子どもの権利条約で定められる性教育(情報アクセス権)…… そう言った施策は何一つ盛り込まれていません。

条例は、子どものためではなかったのですか?子どもの被害回復を訴える条項が、改正案では一番大きな所(他は具体的な施策です)なのに、これはないでしょう。エロ漫画や際どいアニメを撲滅しても、児童ポルノの被写体された児童の回復にはこれっぽっちも寄与しません。
と言うか、この条文追加構成だと、児童が「みだりに性欲の対象とされる」事そのものが「心身に有害な影響を受け自己の尊厳を傷つけられ」る、と言ってるとしか取れません。それは、「ポルノの存在自体が女性に対する暴力!」と叫ぶ、ラディカリストと同じじゃないですか。(あ、念のために言っておきますが、「BLは男に対する侮辱だから消し去れ!」とか言う連中、にも言い換え可能です。要は、そんな事を虐待だの暴力だのと定義されてたまるかという話です)

「性欲の対象とされる」のを防ぐと言う事は、「性欲の対象とする」事を規制すること。つまりは、内心の自由と表現の自由にクリティカルヒットする事になります。
何度も何度も何度でも書きますが、何かに「性欲」を感じたり対象と見る事は、キモかろうがおぞましかろうが、規制すべき・権力が介入すべき対象ではありません。実際に暴力や虐待が行われる事が、防がねばならない「害悪」で、すなわち規制の対象なのです。


例えば、金になるからと性的虐待の記録(「児童ポルノ」)を作る組織や人間は、別に子どもを「性欲の対象」としているとは限りません。流通させて得られる利益を、「経済的欲得の対象」としているだけです。こう言う連中と、子どもを「性欲の対象」としているけれども犯罪を犯したことのない人間、どちらが規制し警戒すべき対象かは、言うまでもないでしょう。
それが内心の自由の神髄であると同時に、「内心の自由を取り締まろうとしても利益がない」と言う事の意味でもあります。


でまあ、最初に書いたとおり、改正案の内容はひたすら表現規制と業者への締め付け。
読売が報じていたとおり、非常に危険なのが第7条の改正部分。
順を追ってみていきます。

>青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺もしくは犯罪を助長し、青少年の健全な成長を阻害するおそれのあるもの

と言う部分は、現行条例の内容です。
どうです?この段階で、馬鹿みたいに広く網が被せられている事が解りますよね。この手の健全育成条例というのは、現状で十分抑圧的で危険な代物なのです。
そして、彼らはここにさらに条文を追加しようとしている、と言う事を忘れないで下さい。

つまり、
1,ここまで広く網を被せているのに、広げたい理由がある
2,当然、追加した部分は、徹底的に締め上げるつもりである
と言う事です。

では、その追加内容。

>漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交著しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ青少年の健全な成長を阻害する恐れのあるもの

これ以降の部分でも、この定義に従って規制内容が示されています。
まず、性描写を表現する事で、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ青少年の健全な成長を阻害する」事を、証明していただけませんかね、行政官の皆様方?
まさか「恐れ」の一語で、”科学的な証拠は必要ない”、”俺がそう思えばそうだ”とか言うつもりですか?

しかしまあ、前回も書きましたけど、違法な性行為を賛美しちゃいけない?いつから法律は道徳の教科書になりましたか?(日本じゃ明治以来ずっとそうだよ、と言うツッコミは、事実すぎるので封印して下さい)このロジックが許されるなら、犯罪を描いた作品どころか「ダメな人」や「正義の人」を登場人物とする作品もいずれ法規制の対象にして良いと言う事です。

だってそうでしょう?暴力(暴行/傷害罪)による問題解決を賛美する作品は、山ほどあります。公務員が「だが私は信じる道を行く!」とか言って、義憤に駆られて法を乗り越える”格好良い”作品も然り。テロリストの方が主人公側より魅力的・賛美的に描かれる作品も同様。こち亀みたいに、服務規程も法律も(両津が何回公金や警察の財産を私物化・横領し、拳銃をぶっ放しているか……)踏み越える破天荒な作品もそうです。
表現の自由を、いや表現そのものをなめるなよと首根っこ掴んで振り回して(勿論こんなレトリックも、きちんと描写すれば、違法行為の賛美になります)やりたい気分で一杯です。

そして、後半に至っては……

もの凄い基本的な矛盾について、怒りを込めて指摘します。
現行法上、「婚姻を禁止されている近親者間における性交」は、禁止されていません。

「婚姻が禁止されている関係」と「性交が禁止されている関係」は、全く別物です。この文章の悪質さには、見ていて目眩がしました。「消防署の方から」並の引っかけです。

と言うか、こんな物規制できるか!
そもそも性行為は、少なくとも一定年齢以上なら当人同士の問題であって、法律がグチャグチャ言う事ではないからです。「結婚」と言う法律上の制度についてはともかく、「いい大人」なら、誰と(何と)どうしようが国家が介入すべきでないのは自明です。ここは、イスラム国家でもソドミー法の残るバイブルベルト(一応、さすがに現在は残っていないはず)でも無いわけですから。
つまり、ここに至って条文は、「違法行為の描写を違法化する」と言う恐ろしい領域から、さらに一歩踏み出しているのです。

要するにこれは、都の担当者(後押しした宗教団体?)の、「婚姻関係またはそれを前提としない間柄の性交は認められない」と言う価値観を、何の疑問もなく条文に落としたとしか思えないんですよ。
お約束の例えをさせていただくと、日本はじめ各国の神話を漫画にしたら、これに引っかかってアウトですね!イザナミ・イザナミの「国産み」が賛美対象ではなく、唾棄すべき悪として描写されている、と言うなら話は別ですが。え、ルネサンスイタリアのごとく、「神話で描かれているのは神だから、どんなものを描いても罪にならない」の論理で行きますか?じゃあ、少年と処女が大好きなギリシア神話の大神様にご出張頂ければ、何でも描き放題ですね。
……で、そんな規制に意味があるの?

そして最後に、この価値観が最初に直撃するところを指摘しておきます。
「婚姻が禁じられた関係における性交」の描写の違法化が達成されれば、即座にBL規制へと進むというのは、馬鹿でも理解できますよね。日本において、同性間の婚姻は認められていません。そしてあれらの作品群が、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ青少年の健全な成長を阻害する恐れのある」と言えないわけがないのも、おわかり頂けますよね?

民主党の対案がどうなるかですけれども、それも含め、叱咤激励と反対依頼の手紙・メールを選挙区の議員さんに送って下さい。都議会では、野党が反対すれば、条例案は通りません。それは、本当に意味のある事なのです。ボロッボロになっている民主党だからこそ、支援要請には応えざるを得ないのですから。

あ、その際は、前に書いたとおり、余計な批判は書かないようにしましょう。
言いたいことがあっても、グッと堪えて「最近の貴党には色々言いたいこともありますが、この点では昨年と同様ぶれずに方針を貫いてくれると信じております」と言った、「これに賛成してくれれば支持を続けます/支持します」と言う方向で。
とにかく、与党の自公が賛成で固まっている以上、頼りにならなくても他に訴えかける相手は居ないのですから。

あ、その際は、カンパをくっつけて送るのも有効です。そんな事をする人間は滅多にいませんから、少なくとも手紙はきちんと読んでもらえ、印象にも残るでしょう。
それでテンプレ着信確認のお礼メールすらくれないような馬鹿議員なら、切り捨てて二度と相手にしなければいいだけです。誰の事とは言いませんが。
とにかく、前回同様自分の趣味は自分で守るしかありません。大した手間でもありませんから、余裕のある方は是非手紙を送って下さい。

例によって、よろしくお願いします、とは書きません。自発的でなければ意味がありませんし、それを必要だと判断する人間が少ないなら、残念ながら守られなくても仕方ないのです。それが政治です。

P.S.
山口弁護士自身の条文解説もアップされているので、そちらも一緒にどうぞ。
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2010/11/post-b4f0.html


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この記事へのコメント
だいたい、フィクションに現実の刑罰を当て嵌めることには、大いに憤慨します。フィクションに対する冒涜です。
Posted by かがみん at 2010年11月24日 18:27
米国では児童ポルノは禁止されていて、日本の漫画、アニメのような
児童ポルノまがいの画像等は単純所持でも法的に罪になります。そ
こまで厳しいのに「表現の自由」が侵害されて、映画を初めとする映像
コンテンツは滅んでませんが?
Posted by 城川 at 2011年01月14日 23:11
1,米国においては、非実在児童の画像の単純所持は犯罪ではありません。(現実と区別がつかないCGだけは例外ですが、これは正に区別が付かないからです)アシュクロフト判例を参照して下さい。特に、連邦裁判所がどれだけ明示的に、表現の自由に対する侵害を戒めているかを。

2,どんなに規制が酷くても、コンテンツは滅びませんよ。規制にかからない物は生き残ります。プロパガンダとか。何を馬鹿な事言ってるんですか?
「ホワイトハウスの前でケネディを批判するのが自由であるのと同様、クレムリンの前でケネディを批判するのも自由である」ってね。

3,あれだけ資金力のあるアメリカのコンテンツ市場に、基盤文化も違う上低予算の日本製品が入り込めたのは、彼らにはできない・発想が違うコンセプトと表現を備えていたからです。安さも大きいですが、それだけなら韓国や中国の方が安かったですしね。


もうちょっと勉強して下さい。
Posted by snow-windsnow-wind at 2011年01月15日 01:45
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