2010年12月04日

これが失言とも暴言ともされない状況って…… 都表現規制問題

前々から、石原慎太郎が差別大好きなファシストだと言うことは、自明の理でした。ですが、少なくとも「ババァ」発言や「三国人」発言は、問題にされたはずなのですが……


都青少年健全育成条例改正案:PTA団体など、都に成立求め要望書 /東京(毎日新聞)

>石原慎太郎知事は「子供だけじゃなくて、テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ。日本は野放図になり過ぎている。使命感を持ってやります」

これが、何のツッコミもないまま、報道で垂れ流されるという事実に薄ら寒い物を憶えます。
つまり、彼は「同性愛者はテレビに出るな」「存在自体がポルノと同じ『悪影響』だ」と言っているわけです。ええと、さっきまで「RED DEAD REDEMPTION」をプレイしてたんですが、私がゲームと現実を混同してるわけじゃないですよね?今って、21世紀の日本ですよね?インディアンと黒人は殺しても器物破損にすらならないような、マニフェスト・ディスティニーが支配する世界じゃないですよね?

なお、毎日新聞じゃ仕方ない、と思ったみなさん、残念ながら他はこの発言をそもそもそのまま報道していません。


性描写、日本は野放図=規制条例案で-石原都知事(時事通信社)

確かに今までも、例えば小泉純一郎首相の社会的ダーウィニズム丸出しのやばすぎる所信表明演説がスルーされたりもしてましたが、そこはマスコミにおける理科的な素養の欠如で説明が付くわけです。「進化」の意味をきちんと理解している知識人は、残念ながら少数派ですし。
ですが、ここまで露骨な発言を目の前でスルーして報道でも触れないというのは、馬鹿なのかおもねっているのか…… 問題にして攻撃しろ、とまで言うつもりはありませんが、ここまで露骨に「政治家として絶対に言ってはいけないこと」を軽くたしなめる程度の事もできないなら、鼎の軽重を問われるでしょう。

この前の「暴力装置」発言へのあり得ないツッコミと言い、文系エリートの存在価値を自ら掘り崩して、一体どうしようというのでしょうね?


また、記事中の「時代物やSF漫画のキャラクターにも現代日本の刑罰を適用するのか」との藤田女史の発言は、都側がその様な見解を示したことに対応しているのですが、なぜか解説無し。これは本当に重大な部分でも、皮肉でも冗談でもなく「源氏物語を漫画・アニメにしたら流通させない」と言っているに等しい質疑であり宣言でした。って言うか、「あさきゆめみし」は棚から消えると言う事です。
若紫は、未成年の時に光源氏にレイプされ、その想いを認識して以後彼を深く愛するようになります。いや、良く非難される「行きすぎた少女漫画」の話ではなく、本当にそのまま(だから私は、少女漫画の「性的奔放」さを批判して規制・自重を叫ぶ人達に、冷ややかな目線を向けざるを得ません。レイプから始まる恋?それって古典でいくらでもあるじゃん、と言う話で。面白いか・読んでて気分が良いかは別としてね)の話であり描写です。これ、今回の改正条文にクリティカルヒットするわけで。

ここでも、この大事な論点、いかに都の方針がトチ狂っているかを解説せずに、一体何を「報道」するのかという話です。

今まで繰り返し、特報欄などで改正案を批判してきた東京新聞も、今回は他社と同列の記事。以前から、力の入った記事の中で、デスクメモだけがトンチキな現代批判みたいな電波を垂れ流していたこともあったので、どう転ぶか解らないとは思っていましたが、割とがっかりです。


ところで、今回漫画家のみなさんに加えて、児童文学者の山中恒さんが抗議者に名を連ねていることにちょっと感動。お元気そうで何よりです。
彼は、「あばれはっちゃくく」や「ぼくがぼくであること」などで有名な児童書作家ですが、戦前の表現規制が「子どものため」を旗印に検閲範囲を広げ、文化を破壊していったことを実証的に研究してきた、第一人者でもあります。

ボクラ少国民 (講談社文庫)

今となってはかなり古い内容になるのですが、表現規制のきっかけが、実は政府主導ではなかった事、「健全な市民の声」や「母親達の苦情」を背景に、「純粋な」児童文学が売れない理由を消費者の「俗悪」さに責任転嫁した文学者達が、花開きつつあった大衆文化を挽きつぶしたことを、最初に指摘した研究者なのです。(なお、彼自身はその経験から、戦前の体制と教育を憎悪しており、これらの消費者に対する裏切りを「戦争協力」の語に還元してしまいがちですが、それを我々が非難する資格はないでしょう)
その彼だからこそ、今回の規制に対し、第一線に立ってくれたのでしょう。本当に頭が下がります。

また、記事中の「日本の官僚は拡大解釈にたけている」と言う発言も、それらの研究の裏付けがあってのことです。実際、戦前の規制体制が最後に行き着いた状況(手当たり次第の発禁と見境のない介入の濫発)は、「制定当時にはまさかそんな使い方はされないだろうと思われていた」、濫用の形を取りました。その意味では、とても頼りになる論客になるはずです。

……ただ、彼はその研究内容から解るとおり、「主流派」児童文学「文壇」と文科省からは蛇蝎のごとく嫌われています。つまり、彼が前面に出ていると言うことは、同じ「子ども向け」とみなされている児童文学者達や団体は、性懲りもなく反対の声も上げずに傍観してるんじゃないか、と言う憶測も成り立つので、困ったもんですが。




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