2010年12月25日

地獄は続くよ Angel Beats! 特別編含めての感想

Angel Beats! 7 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
Angel Beats! 7 【完全生産限定版】 [Blu-ray]


友人で、やめときゃ良いのにAngel Beats!を全巻予約していた猛者がおりまして。
ほら、一応今まで散々感想とか書いてきたわけで、追加の話とか見てみてもいいかな、という気の迷いも出てくるわけですよ。喉元過ぎれば何とやら、ですね。
と言うわけで、クリスマスに鑑賞会となったしだいです。これが、異教徒に下された罰……!?

さて、まずは拷問マラソンだった再視聴の感想から。

改めて認識しましたが、この作品のテーマは、ディスコミュニケーションです。(皮肉)

これは単に、キャラクター同士がまともにコミュニケーションを取れていない、と言う意味にとどまりません。
あ、「キャラクター同士」の部分については、もう良いですよね?「成仏」させるのに相手の意志確認しないとか、相手が何考えてるか思いやる事をしないとか、まともに信頼関係築くこともなくいきなりトラウマ語りに突っ込むとか、どう考えても「普通に関係を深めていく」事ができないコミュニケーション障害ばっかり、なんてのは、シリーズ一回通してみれば誰でも気づくことでしょうから。

とにかくこの作品は、感情や思想を含めて「情報」を説明すると言う事をしないのです。
例えば、色々な混乱の根本的な原因は、ユリや天使や音無が、”自分がそう思った”だけの「主観情報」と、何らかのテストを経て確認された”客観情報”の区別をしないことです。

結局最後まで解らなかった、「NPCとは何なのか」「成仏とはどう言うことなのか」「あの世界は何なのか」と言った謎は、この問題です。
つまり、いずれの情報も、作中で「登場人物がこう思った」と言う情報は提示されても、「何故そう思ったのか」「その根拠は何か」が一切提示されず、おかげで視聴者は共感できません。例えば、NPCとそれ以外、と言う区分は第一話で提示されますが、両者のどこが違うのかは説明されません。あまつさえ、「話しても解らないだろう」などと言われる始末です。だから、直井や天使が「実はNPCではなかった」と言われても、ハァ?としか反応しようがありません。

せめて、各キャラの根拠のない推測も、口に出されたことは事実として扱う、と言うようなルールで物語が描かれていればいいのですが、中盤までのどんでん返しは全て「客観情報かと思ったら、キャラクターが思い込んでいただけだった」と言う形で出てくるので、物語は混迷を極めることになります。

そして、意図不明の演出がこれに拍車をかけます。例えば、11話で突然ゆりは「その子天使なんかじゃないわよ」と言い出しますが、この認識を持ったこと自体は、5話で既に明示されています。ところが、ここに至るまで「特に理由は無く」周囲と情報を共有せず、結果物語は足踏みします。
さらに、これに音無は「そんな事初めて聞いた」と驚くのですが、音無がこれに気づいていなかったことが、読者にとっては驚きとなります。
実は、5話のラストでゆりと音無のモノローグが重なっているので、両者が同じ結論(天使は「天使」じゃない)に達したように見えるのですが、音無は「天使可哀想」ゆりは「奴は天使じゃない」と、全く違うことを言っているのです。確かに、見返せばその通りなのですが、なんとこれに物語的な意味はありません。
音無はあの時点で既に天使を「天使」と思っていなかった、とした方が行動に説得力が出ますし、(最初から≒0って事実は置くとして)それ以前に思っていなかった、とする意味がありません。一時が万事この調子で、描写は迷走を続けます。
これは、意図した演出や「信用できない語り手」の法を使った結果ではなく、「作者が、自分の知識と視聴者の知識が違うことを理解できていない」という、それ以前の問題に起因しているように思えます。

つまり、作者と視聴者のディスコミュニケーションです。どんなものでも作品を創る場合、ターゲットとなる受け手を仮定し、その反応を推測しなくては話にならないはずなんですが、何なんでしょうね、これ。


そして、問題の特別編です。
これは、3話か4話の後辺りに入るギャグ話で、ゆりの無理難題にSSSメンバーが翻弄されるドタバタ劇。

で、実は結構面白く見る事が出来ます。ゆりの、「とにかくテンションを高く保って楽しそうにしていろ」と言う無茶ぶりに応じるだけの話なのですが、勢いだけで押し切る内容は、ごく普通のギャグ回です。ボロクソに言われてるのも見ますけど、私はむしろ、ずっとこう言う話だけやって居れば良かったんじゃないかと思います。そうすれば、「誰も死なない世界」をネタにしたギャグアニメとして、結構綺麗にまとまったんじゃないかと思いますし。力押しのギャグ繰り返すだけなら、破綻しようもありませんしね!
え?ギャグにもなってないラストの展開?やっつけ仕事って事だよ。言わせんなよ恥ずかしい。

ただ、そんなドタバタの中、「俺はそんな馬鹿馬鹿しいことにはつきあわないぜ」というような、原義中二病丸出しの態度で終始テンションの低い音無は、本当にろくでなし。純粋に殴りたくなるんですが、まさかこれ、格好良いと思って描いてるんじゃないですよね?

それと、各キャラの掘り下げも世界の謎も、あれだけ積み残した課題がありながら、DVDの追加シナリオでギャグ回を突っ込んでくる制作者は、何考えてるんでしょうか?やっぱり、前に書いたとおり、制作者は「描写が足りてない」と言う事自体を、理解できていないんじゃないかと思います。
そのため、特別編自体は結構面白くまとまっているのに、「ダメだこりゃ」との感が強くなります。

あ、それと、差し替え13話Cパートね……
全員が成仏した後あの世界に居座り、新参PCに「成仏しろ」と説教して回り、NPCから「素敵☆」と賞賛される音無の姿に、一体何を感じろと言うのですか?って言うか、「素敵」だと言う事を描写したいなら、モブキャラに「素敵」と言わせてはいけません。絶対に。男たちの大和で、画面上で大和を「大きく」見せることにことごとく失敗しているヘッポコカメラワークの中、登場人物が「すげえ、山みてえだ」とか言い出した時の失笑ぶりに、通じる物があります。
ああ言う科白は、視聴者に言わせねばならない、演出が目指すべき「目的」であって、そう見せるための「手段」ではありません。「その世界では層認識されている」と言う事を説明するための手段なら話は別ですが、それは裏を返すと「普通に見ててもそう見えない」と認める事でもあります。


とまあ、相変わらず「予想の斜め上」の、ひっでえ代物でした。
制作者は、ゲーム版の制作をKeyにやって欲しいとか言っているようですが、「寝言は寝て言え」と言いたいです。数年に1本しか作品を出さない佳作ブランドのリソースを、こんな産廃のゲーム化に使われてたまるかと。
勿論ライター個人に恨みがあるわけじゃないので、完全な別作品であれば、いくら今回やっちゃったとは言え過去の功績もあるし、一応プレイはするでしょうけどね。



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この記事へのコメント
このアニメにはオラクル的存在。世界のことを全て知っていて道を示してくれる存在が居ないんです。例を出せばドラゴンボールのナメック星人長老とかでしょうか
なので登場人物全員が各々の経験でなんとなく世界を理解するしかない。世界のことを知ってる人間が居ないから説明しようが無い。これは我々にも言えることで

麻枝は音無の記憶が戻るまでは視聴者=音無と見立てて脚本を書いてたように思います。
音無は、ゆりの話や自らの経験を通してあの世界を推測ですが理解していきます
そして記憶が戻った回。今日からあなたは正真正銘の戦線メンバーの一人よ
=音無(私達)のあの世界に対しての認識は一般戦線メンバーと同じ程度のものになった(普通にしたら消える、NPCといってもファンクラブがあったり教師と喧嘩したり私達とほとんど変わらない、ギルドで武器作ってる、満足したら消える等)
=これ以上のことを知っている人間は存在しないということ
=ここから先視聴者が分からないことは戦線メンバーも分からないということ

そして音無≠視聴者となったという回でしたね

>結局最後まで解らなかった、「NPCとは何なのか」「成仏とはどう言うことなのか」「あの世界は何なのか」と言った謎は、この問題です。

全部読むのが大変だったので掻い摘んでしまってますが、↑は彼らの経験上の推測で一応説明されてます。

>NPCは何なのか→私達と全く同じ存在、でも死んでこの世界にきたのではなく元々この世界に存在していたという点で大きな違いがある。しかしこれは本人達の推測でしかなく、なぜ彼らが存在していたのかは謎ですね。
しかしこれは神様とかそういうのが現れない限り知りようが無いですね。何故現世に人間が存在しているのかと同義ではないでしょうか

>成仏とはどういうことなのか。
自分の生前の未練を断ち切ることができたら転生できるってところじゃないでしょうか。←これも推測でしかない。しかし実際そうすれば成仏している。
あと13話のCパート見る限りちゃんと転生してるみたいですね

>あの世界は何なのか
これは↑とほとんど同じですが音無が悟ってましたね。あそこは若者達の魂
の救済所です

ここまで擁護してきましたが、駄作というのは激しく同意です。

私が言いたいのは突っ込むのはそこじゃないってことです。
1話のゆりの台詞

『順応性を高めなさい。あるがままを受け入れるの』

考えても分からない、しかしこの世界はそういう風になっている、だからそれを受け入れろって意味だったんでしょうね

この世界は物語を進める上で都合がいいように作っただけなので、この世界について説明を求めるのは野暮だ。それよりも人物達の物語をみてくれ!って麻枝はいいたかったんでしょう。

だから一番突っ込むべきところは世界観ではなく、キャラ達の心理描写なのです。
何年間も戦ってきたのに唐突に考えが変わって成仏したり、バンドがすきだって言ってたのに夢の一部&メンバーと喧嘩したまま結婚してやんよ(笑)で成仏したり。
どうやってゆりの未練を断ち切れるのか楽しみにしてたのに、戦線メンバー大好き(笑)であっさり卒業しちゃったし
世界の謎よりも人物を見てくれって言ってるくせに掘り下げできてない時点で駄目すぎる
Posted by なんか長文になったごめんなさい at 2010年12月27日 08:57
>完全な別作品であれば、

いや、このままゲーム化でも買いますね
そして、また辛辣な感想を書くでしょう
でも結局、製作サイドに乗せられてるわけです

「最大の批判は、無視である」
政治とかならともかく、商業作品に関しては正論です
それができない、批判するためにわざわざ見る、金と手間をかける、製作に『貢ぐ』と言う本末転倒に陥っている時点で、あなたの負けです
Posted by 通りすがり at 2010年12月27日 09:39
>なんか長文になったごめんなさい さん

心理描写の方も問題しかないような状況なんですが、そもそもキャラの心を描きたかったなら、世界設定自体が邪魔だと思うんですよね。隠されたルールがある特殊な世界を設定したら、当然視聴者はその謎の解明に心をひかれるわけで。

「過去を乗り越えて成長する」話をしたいなら、復讐のむなしさを描く西部劇でも、友人に先立たれ心に喪失を抱えて生きる青年の現代劇でも、革命の理想が崩れていくのを見つめる元闘士の話でも、いくらでも魅力的で解りやすい題材はあるわけで。(挙げた例は適当です)
と言うか、普通の学園物にしてれば世界観など誰も気にしないわけで、シナリオ設計段階から全部間違ってると言いますか……


>通りすがり
1行目くらいお読み下さい。
Posted by snow-windsnow-wind at 2010年12月27日 23:37
ひどい作品でしたね…
キャラコメの場まで使って音無をフォローしてましたけどまるで説得力がなくて
渇いた笑いしか出てきませんでした
麻枝さんはABのゲーム化に着手してるらしいですが「成仏推進こそ正義」のスタンスを変わらず持ち続けているのだとしたら・・・
どうあっても僕が納得できる作品には仕上がりそうにない予感・・・

音無の空気を読まないスカした態度も腹立たしいし
ゲームはもっとノリのいい主人公に変えてくれないかな
Posted by ああああ at 2010年12月28日 02:32
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