2011年01月02日

うみねこのなく頃に 散 EP8 感想

うみねこのなく頃に散 Twilight of the golden witch[第5話~第8話]
うみねこのなく頃に散 Twilight of the golden witch[第5話~第8話]

↑最近は、AMAZONでも買えるんですね。


前回までの感想等はこちら

今回の副題は"Twilight of the golden witch"。

感想を書く前に、注意書き。今回私は、コミケ会場で3時間近くならんだあげく、「告知無しで」売り切れを喰らい、入手に偉く苦労する羽目になりました。と言うか、販売方法が本当に下手くそ(卓上に釣り銭用意無し、一人ずつ進み出させるせいで処理速度半減等々)な上に、たどり着いて初めて売り切れを聞かされて唖然とする相手に「サントラと別のゲームは未だありますからどうぞ」と言い出すアホさに、印象は最悪まで落ちてます。
一応、内容とは無関係と自分に言い聞かせながら感想を書きましたが、割り引く必要があるかもしれません。

いや本当、なんで風物詩の「新刊売り切れましたー!」な告知を打たなかったのか、理解不能なわけですが。売り切れ自体は仕方ない(と言うか当たり前)なんですが、コミケ会場での1分は血の一滴。完売告知無しは嫌がらせです。


閑話休題、今回の感想です。
起動冒頭。今回から、著作権関係の警告が入るようになりましたね。
何というか、凄く無粋です。
別に権利表記自体は良いのですが、あの「この物語はどうせ幻想に決まっています」と言う皮肉に満ちたメッセージのあとに表示されるせいで、一気に現実に引き戻されてしまうのです。

加えて「二人の人影」とか酷い日本語で始まる辺り、不安を含みつつプレイ開始。
大体の予想どおり、縁寿を六軒島に放り込むことで「何が起きたか」を幻想含みで見せていくという方向に。もっとも、私はEP4がこの方法による真相描写だと思っていただけに、凄く遠回りした感が強いです。

ところで、散々ブスだの不細工だのと言われた成長バージョンと違い、今回の6歳バージョンの縁寿はかなり可愛く描けてますね。竜騎士の腕が上がったか、キャラデザ自体別人かと思えてきたり。

と言うわけで話が始まるのですが、嘉音と紗音が二人一緒にいるところが描写されるわ、金蔵が生きて蔵臼と会話しているわ、最初から全力で「幻想です」と主張されている代物。こりゃ、戦人が最初に「見るな」と言っていた礼拝堂の本が真実で、これは縁寿を慰めるための優しい嘘としか見ようがありません。うーん、そう言うのは、もう少し真実を混ぜてあとから解るようにした方が、演出的に美しいと思うのですが。あるいは、今まで明らかになった真実とできる限り矛盾しないようにして、「これもあり得たかも知れない」と思わせる説得力を持たせるか。

従って、その後の幸せ一杯描写は、見ていてちゃんと乗れません。後半、あれがゲームマスター戦人の采配ではなく、死んだプレーヤー(親族)達による、縁寿への最後の置き土産というような描写が出てくると一気に締まるのですが、最初は「戦人だけは良い人」と言う描写に見えてしまい、アクセルが遅くなります。

また、結局クズどもが残す最後の優しい嘘、と言う趣旨も、ちょっと心に届きにくいです。前回明らかにされた真実とのギャップが大きすぎて、幾ら何でも都合が良すぎるだろう、としか感じられなくなるわけで。
そもそも、ゲームマスターは戦人、他の親族は彼の操るNPCなので、結局あそこで良いセリフを吐いている連中とは何なのか、と言う疑問がずっと続きます。そりゃ最初から「幻想」とは明言していますが、「そうあり得たかも知れない可能性」「一辺の真実」を感じさせるには、縁寿が現実で集めている情報による補完がなければなりません。
だって、そうでなければ、これは本当にただの茶番じゃないですか。

歴史上ボロクソに言われている人間を擁護し、異なる面から光を当てる研究は、歴史学の華です。しかし、それをやるためには、通説を、判明済の情報を覆し、または精緻化して行くための新史料が必要で、そのために学者達は、書物やデータベースや証言を集めて走り回るのです。少なくとも、「その様に解釈できるはずだ」と言う事を可能とするために。
ちょっとこの作品は、あまりにも事実、または確率(猫箱の中を「推測」すると言う事は、つまりは確率計算に他なりません)を軽視し過ぎじゃないかと思います。


ところで、なんか視点人物変更の方法が、毎回むしろ拙くなって行ってませんか?ひぐらしでは、圭一を視点固定し、別視点はTIPSを使ったりして上手く処理していたのに、解、うみねこと進むにつれ、どんどん唐突になっていきます。せめて、途中で無意味に挟まるアイキャッチを、視点変更前に入れるくらいすれば良いと思うのですが。


留弗夫の秘密が、「明かす場所を入れ忘れました」と言わんばかりのやっつけで語られたのには、唖然。結構大きなネタなのに、これじゃ第1話のあれは、悪質なブラフにしかなっていません。

一方、悪質さという点では、譲治の出す確率問題が一番厳しかったですね。事後確率を見抜けず、見事に引っかかりました。

作中でちゃんと説明されなかったので解説すると、以下のように考える必要があるのです。
実は、以下に書く「ポイント」の部分を考えに入れる必要があるのです。


1/2 追記
赤と青の表記が一部間違っていたので、直しました。

状況:
赤青緑の三箱に、当たりは一つ。縁寿は赤を選んだが、譲治は緑が「正解でない」事を示した上で、青と交換するかどうかを問うている。赤と青、当たりの確率が高いのはどっち?


ポイント:
譲治が「正解でない」箱を開けて「外れると酷い目に遭うよ」と示すのは、規定の行動。そしてこの時、縁寿が選んだ箱を開けてみせることはしない。
つまり、赤の箱は絶対に譲治に選ばれないので、確率の変動はない。


確率の計算:
選ばれなかった青の箱が、譲治に「開けられない可能性」の数値を計算する必要がある。

まず、「青の箱が当たりであった場合」=(1/3)×1  この場合、青が開けられることはない。
次に、「緑の箱が当たりであった場合」=(1/3)×0  つまり、赤は必ず開けられてしまう。
最後に、「縁寿の選んだ赤の箱が当たりであった場合」=(1/3)×(1/2)  縁寿に選ばれなかった二つの箱の内、どちらかがランダムで選ばれる。

そして、実際に「青い箱は選ばれなかった」。
これに該当する確率を比較すると、

「青の箱が当たりだった場合」:「赤の箱が当たりだった場合」=(1/3):(1/6)=2:1

となり、青の箱が当たりである確率が上がることになります。言葉で説明すれば、「赤の箱が外れの例として譲治に開けられなかったのは、縁寿が選んだから(ランダム試行の結果)だが、青の箱が選ばれなかったのは、『当たりだったから開けられなかった』可能性が半分あるため、青い箱を選んだ方が当たり率は上がる」と言う事になります。

まあ、譲治の行動パターンが明示されていないせいで、単純に悪問になってるんですけどね。モンティホール問題と言う物自体、正にその辺が議論をややこしくした代物らしいですが。
ただ、その後譲治が語る確率論のおかしさからして、また作者がちゃんと理解しないで書いてるんだと思います。
10個のケーキでも、100個のケーキから選んだ10個でも、「中に当たりが含まれている」と言う情報があれば、確率は変動しません。と言うか、その情報がない(そもそも当たりがある確率が解らない)のであれば、ケーキの数が幾つだろうが確率は「推定不能」で終わりです。

観測者問題を物語の道具として適当に使うとかは、お約束なので気にするような問題ではないですが、こう言う部分で基礎的な理解ができてないと思えてしまうと、確率論出すのはやめろよと言いたくなります。
大体、今回の「ゲーム」からして、盤外の動かせないはずの前提条件をいじって作られた「確率以前に、物理的にあり得ない世界」になってしまっているわけで。観測による収束も事後確率も、「最初に含まれている可能性」の中での変動でしかないんですよ。

勿論、後半ブラフ(?)とは言え「真実」が明らかにされて救いのない光景が縁寿の前に広がるのですが、やっぱりシナリオラインが未整理に思えてなりません。第一、その「真実」がまた縁寿世界の未来と矛盾しているせいで、全然衝撃を感じらず、「また幻想かよ」としか言いようがないのです。これじゃ絵羽死んでるじゃん、って言う……

あと、あのシーンで助けに来るのが、最凶厨房プレーヤーのヱリカってのが、苦笑しか誘わないわけなんですが……
これ、TRPGなら、ヱリカがPCでもNPCでも、この展開は大爆笑で迎えられてシリアスシーンがぶち壊しになるところですよねえ。

なお、それとは全く別の話として、謎解きゲームは面白かったです。段階的なヒント開示も、普通に結論に至れる論理構成も、驚くほど真っ当な推理アドヴェンチャー。ト書きの再読の操作性(最後まで読まないと推理画面に戻れない)だけが不満でしたが、他は上手くまとまっています。
何というか、あのパートは、尖った・偏った同人ゲームの雄ではなく、商業ベースの真っ当な作品という印象でした。


さて、ラストの展開となる縁寿と戦人のゲームは、ベルンカステルという問題児が、困ったちゃんプレーヤーになるよう縁寿を誘惑する、という風に読めたり。ただ、戦人の提示したシナリオが上記の通りあまりに酷いので、プレーヤーが暴れ出しても文句は言えないよな、とも。そもそも、うみねこのプレーヤーが求めているのは、ちゃんとしたラストに相応しい「真実」なわけですから。

だから、前座の盛り上げフェイズに当たるメタフィクショナルな戦闘描写には、正直食傷。あれ、面白いですか?私としては、「とっとと真実あかせよ。じゃれ合いうぜえ」としか思えないのですが。
結局、物語開始から「真実の書」解放に至る過程は、全てが時間稼ぎにしか見えません。しかも、その後まで延々と時間稼ぎの回り道。シナリオ上の進行が何もないまま、どうでも良い描写が繰り返されているだけです。
てか、「真実を知った上で生きられる強さ」ではなく、「真実の探求を放棄して幸せに暮らす」事を求める戦人は、すげえうぜえ兄貴ですよね。
大体、親族の姿を「思い出す」のは、正に得難い真実じゃないんですか?過去の都合の良い部分をつまみ食いして再構成し、真実など不要とうそぶく縁寿は、作中でぶった切られる思考停止そのものじゃないですか。

そして、イライラしながら情報開示を待ち続けた読者に見せられるのは、情報を公開しないために戦いを挑む主人公達のヘッポコアクション。あの、どこに感情移入して、何を楽しめば良いんでしょうかね?

大体、親族一同偉そうなことをのたまいながら戦ってますが、周辺情報から連中がろくでなし(としての側面を多く持っている)事は、もう明らかなんですよ。それをなかった事のように、善人面(特に楼座!)で格好つけている姿は、反吐が出ます。

そもそも、法やルールや色んなものを破って社会に迷惑をかけつつ、親族・身内にはとてもいい人であった、とは、要するにヤクザやマフィアの行動原理に他なりません。

そして、結局最後の結論が「信じれば奇跡は起きる」ですか。そう言う話は嫌いじゃないですが、真実を追いかけて8つものエピソードにつきあってきたこちらとしては、微塵も感じるものを見いだせません。
って言うか、これ反知性主義ですよね?事実に耳を塞ぎ、真実から目を逸らし、ありもしない奇跡にすがって前に進め?そう言う、希望的観測と事実の区別もつかない馬鹿どもがどう言う運命を辿るかは、約70年前に極東の島国が身を張って示してくれたと記憶してるんですがね。

シナリオ上必然でも何でもない水増し戦闘シーンに、この下らないテーマが乗っかるクライマックスは、ついにCTRLボタン断続プッシュの斜め読みに近い状態になりました。画面演出ウザイし。

で、ラストなんですが、あの選択は意味があるんでしょうかね?マルチバッドエンドというか、「真実には意味が無い」と言う結論に変わりがない以上、実質変わりません。あと、なぜかあの選択シーンだけセーブができない仕様も謎。
「幸せな幻想」を説明無しに使って「とりあえずハッピーエンドと言う事にする」と言うKeyドクトリンは、余程上手く力押しが機能しないと陳腐なだけなんですよね。

まとめると、結局今作も、着地に失敗したと言う感想になりました。
メタフィクションの振り回しや、全8EP中間辺りの「何をやっているのかが明らかになる」過程は面白かったのですが、全部終わって見ると疲労感が強いです。

まあ、ひぐらしも祭り囃子が本当に酷い一方、「礼」はかなり面白かったので、うみねこも礼はプレイしてみたいと思う次第ですが。
ただ、この惨状を見るにつけ、「Rewrite」は大丈夫なのかという不安が沸々と。4月が来るのが怖いです。


この他の竜騎士07関係のエントリーは、こちら







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この記事へのコメント
自分も読後すぐはそんな感じでしたね。
「戦人が見せたかったものに違和感あるというか、納得できないなあ…」と。

そこでお勧めなんですが、wikiの「十八戦人真犯人説」が
しっくりき過ぎて面白いので、一度読んでみてはいかがでしょう。
本当にあそこまで考えてEP8が書かれたいたなら、
色んな意味で恐ろしい作品なんですが…果たして。
Posted by mei at 2011年01月03日 02:08
こちらも同じ目に遭いました。
実際に売り切れたのはいつなんでしょうね。
Posted by まっきー at 2011年01月03日 16:26
>mei さん
あの説は確かに説得力もあって凄く面白いんですが、もしそれを「隠された真相」にするなら、今回をラストエピソードにするのは間違いですよね。「礼」はあくまでもおまけなわけで。

ひぐらしで散々真相が陳腐と言われて、出した答えもとい応えが「真相は書かない!」と言うのは、なんとも……


>まっきー さん
13時台に「購入は一人一つです」とかスタッフが言ってたので、その辺までは在庫があったはずです。別の列のを聞き違えた可能性もありますが。
Posted by snow-windsnow-wind at 2011年01月03日 17:48
まあロミオよりはましでしょう多分
Posted by au at 2011年01月04日 16:37
>>そもそも、法やルールや色んなものを破って社会に迷惑をかけつつ、親族・身内にはとてもいい人であった、とは、要するにヤクザやマフィアの行動原理に他なりません。


吹きましたw確かに、そうですね・・・
Posted by バーゼル at 2011年01月04日 22:38
激しく同意。ミステリで「真実に価値はない」って…絵羽の日記も公開されず永延中二描写…プロットがマンネリ化(謎解き開始→魔法に屈服→魔法バトル→大団円)…ひぐらしの竜ちゃんはもういないのだ…
Posted by 礼文 at 2011年01月05日 02:03
着地に失敗、その通りですねー。アイデアはとてもよかったと思うんですけど、風呂敷たたむのって難しいんですね。
個人的にピークはEP7の碑文解読のカタルシスでした。
Posted by 田中山 at 2011年02月01日 16:18
ええ、ミステリ(的な要素を持つ作品)は、そう言う種明かしの「あー、そう言う事だったのか!」と言う感心が一番の見せ場なわけで。
そのメインディッシュを取り上げて、「空腹の方がダイエットにもなって幸せでしょ?」みたいな事を言われても、読者はぽかーんとするしかありませんよね。
Posted by snow-windsnow-wind at 2011年02月02日 23:30
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