2011年04月05日

経済的には、むしろマイナスかも知れない支援の話

震災転じて原発災害の終わりに目処も立たない10年以上遅れた世紀末、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

災害に対置される明るい・希望のある話題として、もの凄い額の義援金やボランティア・援助の話が引きも切りません。しかし、凄く疑問に思っていることがあります。
つまり、それって本当に意味があることなんでしょうか?

別に、援助している人達や義援金を送る人達の善意を否定するつもりはありません。しかし、経済システムは、しばしば個人の善意や倫理などと全く無縁のところで、良い効果や悪い効果をばらまきます。

そもそもなぜこう言う疑問が生じたかは、阪神大震災が一段落したあとに報道された諸々が念頭にあるからなのですが、それは後述。


まず、「援助」と言う物が、プラスになる側面から見てみましょう。
外国からの援助は、間違いなく有効です。それは、国内への財の流入に他なりません。
続いて、政府の手が回らない小規模・機動的な活動において、NGOは有効であるため、そこへの寄付は有効です。日赤にせよ他のNGOにせよ、金がなければ何もできません。そして、そう言った機動的な組織に何より必要なのは、すぐにでも動かせる現金です。

あとは、そもそも金が余っている金持ちが寄付をする場合で、塩漬け資金が市場に回るのでこんなありがたい話はありません。


しかし、多くの義援金や一部のボランティアについては、そうではないはずなのです。

まず、義援金です。
復興フェイズにおいて、資金は最終的には国から支出されます。個人・企業・地方自治体が賄いきれないコストは、最終的には税金で補填されると言う事です。
これがどう言う意味を持つかと言えば、個人の寄付=義援金で足りない分が税金から充当される、と言う事です。
つまり国民全体で見た場合、復興に支出される金額の合計は変わりません。

そして、税金による場合と個人の寄付による場合では、大きな違いがあります。それは、平等性です。所得や利益によって負担を平準化されて課される税金と違い、寄付は善意によるからです。
勘違いしないで欲しいのは、不平等だから悪い!と言うわけではない点です。寄付は自分の意志で行っているのですから、文句を言う筋合いはありません。
何が問題かと言えば、それによる消費の減少と経済への影響です。先ほど指摘したように、寄付をするのと税金を納めるのは最終的には同じ事になります。マクロで見た場合、義援金の支出は増税よりも消費に大きな影響を与えてしまいます。(低所得層の税納付/寄付は、支出の減少に直結するため)
例えば、10万円寄付して他の支出がいつもどおりに行くかと言えば、そんな事はないわけです。結局その寄付は、飲食店や服屋やゲーム屋やパチンコ屋の「あるはずだった」収入に他ならず、二次災害を広げることになります。

これは、支援物資や資金を無償支出する企業にも言えます。広告費で元を取れると言う計算は別として、本来特需で潤い復興の牽引役となるはずの無傷の企業が物を無償で提供してしまっては、回るものも回らなくなります。企業は企業らしく、特需で儲かった金を社員に還元し、または新規採用を増やして雇用の受け皿になってくれた方が、利益を寄付するより社会にプラスになるんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう?

特に義援金で問題になるのは、それが実際に市場で支出されるまで、タイムラグがあることです。
阪神大震災の際、全国から多額の義援金が集まりました。しかし、復興段階になってこの義援金の使い道が問題になりました。結局被災者に配ったり新生活の貸し付け原資となったりしたようですが、それは結局、寄付した人から被災者への所得移転に半年以上かかったと言う事です。復興フェイズに入るまで使えないのは同じ事なので、これなら必要な時(年度)に必要なだけ徴集される税金の方が遙かにマシと言う事になります。
上の例で上げたように、今月入るはずだった売上が半年後になれば、小売店もサービス業も吹っ飛びます。


二つめのボランティア・援助についてですが、これもだいぶ歪な事態が生まれています。
ボランティアが災害時に有効なのは、一々人を雇って金を払って…… と言う手続きをする暇がないからです。特に、とにかくがれきをどかすとか、被災者の世話をするとか言った人海戦術の場合が顕著です。
しかし、そうでない限り、金を払って人を雇うのが当然で、それは復興の礎ともなります。金が動きますから。
ところが、国をはじめ自治体などで、専門職をボランティアで募集しているという現状があります。

避難所で援助に当たる医師・看護師。遺体を回収する消防団・死体検案書を書く検死員(医師)、薬品不足が深刻な被災地に出向く薬剤師。こう言った専門職に金を払わず、ボランティアでやってくれと言うのは、完全に意味が違ってきます。
彼らは専門職で他に仕事を持っており、そこに穴を開けて参加します。参加する事自体が賞賛に値する状況(当たり前ですが、労働環境は劣悪です)で、ただで働けとはどう言うことか?
当然ですが、災害派遣されている警察官・自衛官・自治体職員(地元役場が壊滅している場合行政経験のある職員が必要なので、多くの自治体が相互援助協定を結んでいます)は、全員給与と手当(昨今批判を受けて雀の涙ですが……)を貰って働いています。国の事業に、状況に対応するのに必要な仕事であり人材なのですから、当たり前です。

予算執行が困難と言う事かもしれませんが、それは後払いでも構わないはずです。ただ働きになる理由がありません。
公共団体や半公共団体を通じて募集どころか人員割り当てまでしておいて無給とは、どこの国民義勇兵かと思ってしまいます。あるいは、独ソ戦の赤軍。

これって、山で遭難して救助を呼んで、金がかかると解ってぶち切れる人間と、どこが違うのでしょうか?人を助けるのには金がかかり、その負担を平準化するために、国家や自治体という保険システムが運営されています。なのにこう言った事が横行しているのは、正に「現場に負担を押しつける」組織的問題の象徴ではないでしょうか?

どうも、「人助けだから」と言う理屈が横行しているみたいですが、そう言う問題じゃないんですよ。
例えば、仮設住宅と言うのはこう言う時でないと作られないわけですが、その供給で儲けつつある企業を非難する馬鹿は、(普通)いないわけです。それで非難されて「被災者のためなんだからただで出せ」とか言われてたら、そもそも生産ラインや研究すらもされません。


とにかく、現状を戦時体制か何かと勘違いしている人もいるみたいで困ってしまうのですが、戦時体制は基本的に非効率な体制で、戦争遂行という歪な目的以外には全く役に立たないという点を思い出して欲しい物です。
動員令なんかかけたら経済が崩壊する、と言う経済界の利己的な圧力は、下手な平和運動より余程平和に寄与して来た、と言うのは普通に指摘されることですし。

繰り返しますが、私は寄付や支援をする人を批判するつもりはないし、むしろ凄く立派だと思います。ですが、経済的に見た場合、それは必ずしも最適手ではないのではないか、と思わざるを得ないだけで。
経済的に考えるならば、被災地以外は、花見でも災害映画でも不謹慎ゲームでもバンバン消費して金を使い、経済を加速させた方が遙かに有効のはずです。復興に金がかかるという点でも、大量の被災者=失業者の受け皿となるべき雇用の創出という点でも。

「金を使わず浮いた分を寄付」と言う行動は、倫理的には賞賛されても経済的には自爆テロになりかねないのではないか。そう言う事です。


ヤバい経済学 [増補改訂版]
ヤバい経済学 [増補改訂版]

↑人間の行動の動機ともたらされる結果は、しばしば相反します。この本は、それを非常に巧みなエピソード選択で見せてくれるエキサイティングな内容。アメリカの犯罪が90年代に激減した理由の説明に、唖然とすると同時に納得してしまう恐ろしさ。
なお、原題は「freakonomics」。直訳すると怪物経済学で、free economics のもじり。良いセンスしてますが、邦題はかなり残念。





タグ :社会

同じカテゴリー(社会)の記事
 ふざけないでいただきたい/オリンピック盗用ロゴの擁護について (2015-09-07 23:00)
 色々面倒くさい憲法9条の話 (2013-01-05 20:00)
 あっはっは! (2012-06-27 22:00)
 この国、政治的に詰んだって事ですよね (2012-06-26 22:00)
 著作権が守る物/行政の公開情報を引用して逮捕と言う麗しき世界 (2012-04-17 22:00)
 誰が為の公共性/アレフ施設へのガス供給工事不許可適法判決 (2012-03-15 20:00)

この記事へのコメント
経済学ではそうかもしれません。しかし横で死にそうになっている人がいるのに素通りで歩いていくならばこの国は終わりでしょう?というより人間的に終わりでしょう。(貧困国の人は別ですが)
私はあなたが言うように消費をしなければ2次災害になるので消費はします。
義捐金も行いましたがボランティアでの参加も?検討中です(検討中?お前はそれでいいのか?)
結局やるしかないのです!
Posted by 240zg at 2011年04月08日 22:43
ご理解頂けてないようですが、その例えに沿うならば、「横で死にそうになってる人がいるなら、下手に手出しせずに救急車呼んだ方が良い」と言うのに近くなるかと。
Posted by snow-windsnow-wind at 2011年04月09日 05:28
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。