2011年04月17日

柳沼行 「群緑の時雨」 1巻感想

群緑の時雨 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
群緑の時雨 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

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「群緑の時雨」は、ふたつのスピカシリーズでデビューした柳沼行の、長編第二作です。
コミックフラッパーでの連載で、まだ作品としての全容が見えてこない状態。今回、その第1巻が発売となりました。

近未来の宇宙開発を叙情的に扱った「ふたつのスピカ」と異なり、今回の舞台は戦国末期。江戸に幕府が開かれ、天下太平の世が始まろうとしている頃、東北の架空の小藩「士々国」を舞台に、年若い武家の子ども達の生活を描きます。
この巻で描かれる事件は、伊都の登場破りだったり、浪人の尾行だったり、夜中に抜け出してセント・エルモの火を見に行ったりと言った、どこか懐かしい子ども時代のちょっとした冒険です。

登場人物は、没落武家の養子で長患いの義母と暮らす霖太郎、同じく武家の養子になった府介、家老の末女で男顔負けの腕前を持つ伊都の三名。それに、隻眼の浪人鴨井勘解由が物語の鍵となって行きそうです。

隣国との戦が続き、冒頭で見せられるとおり決して平穏な状態ではない中、子ども達は等身大の悩みを抱えて精一杯生きています。この、厳しさを底流にしながらどこまでも優しい世界観は、ふたつのスピカと同様作者の持ち味でしょう。
実際、作中でも何度か人死が出、また人の死を下敷きにした描写が多く為されているのですが、そこには「哀」こそあれ、激しい怒りや高揚が描かれることはありません。(この意味で、ふたつのスピカで中盤の山になった佐野先生のエピソードは、例外だったのでしょう。同時に、あのイベントが、残念なことに中途半端に終わってしまわざるを得なかった理由も見えてきます)

物語はまだ本当に始まったばかりで、今の所何が軸になるのかは見えてきません。言うなれば、1巻を丸々つかった人物・世界観紹介といった感じですが、スロースタートだけに話が回り始めてからの展開に期待が持てます。
とにかく、この作者の作品で最も重要だった、世界観・雰囲気作りはむしろグレードアップしているので、これからも安心して読んで行けそうです。休載が続いたり、やや不定期のようですが、続きを楽しみに待ちたいと思います。


ただ、ふたつのスピカ初期の巻に載っていた短編も好きだったので、ああ言う系統の短編集も、その内出して欲しいなあと思ったり。昔の少女漫画みたいに、連載作品+書き下ろしの短編、と言う構成が、単行本を作る際に向いている作者じゃないかと思うのです。世界観・雰囲気重視の作風とかも、ち良い意味で昔の少女漫画に近いわけですから。



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