2011年04月24日

まどかの最後の願いについて/かなり良く練られていますよね

魔法少女まどか☆マギカ 6
魔法少女まどか☆マギカ 6

↑全話一気に見返したいので、Blu-ray全部出るまで半年とか、かけないで欲しいんですけど……


昨日からまどか☆マギカを見返していて、ちょっと強引すぎないかと思っていたハッピーエンドについて、若干印象が変わってきました。

どう言うことかというと、あれが非常に強引であるのは間違いないのですが、入り組んだ設定の糸をすり抜ける、と言う意味では、とても誠実に考えられていると解ってきたからです。


まず、あの物語において悲劇の連鎖を止める上での条件を確認しましょう。


1,キュゥべえ族を殲滅するわけにはいかない
11話で示されたとおり、設定的に、キュゥべえ族は人間の進化に不可欠だったと言う事になっています。このため、連中を消し去れば、ハッピーエンドには至れません。

2,キュゥべえ族を改心させると言うのも、よろしくない
何故なら、人間の進化はキュゥべえ族の利己的かつ合理的な判断による干渉があって、初めて可能(または加速)になったからです。キュゥべえ族が感情を持てば干渉は必要なく、つまり地球は原始種族の星として放置されます。

3,魔法少女システムは破壊されねばならない
これが、悲劇の淵源である以上当然です。
そして、その問題点とは、希望が絶望に相転移すること。つまり、システムの目的が、絶望の創出によるエネルギー回収になっているところです。

4,しかし、「願い」そのものは悪い物ではない
12話冒頭で言っているとおり、「希望」が絶対に良い物だ、と言う信念こそ、まどかの行動原理です。
彼女の価値観を置いておいても、願いをあってはならないと否定するのは、マミに「そのまま死ね」、さやかに「上條の音楽?二度と聞けねえよ!」と言い放つに等しい事になります。
そもそも、まどかもほむらも、命に代えても適えたい物として、願い事を言っているのですから。

5,まとめると
犠牲と引き替えの願いは残し、キュゥべえ族との共存を可能にした上で、希望が絶望へと変わってしまう連鎖を断ち切る。
と、こう言うことになります。


そして、まどかが行った願いの内容を見てみましょう。実は、派手な演出や特に意味はありません。
彼女が行った世界への干渉は、ただ一点に絞られます。

・魔法少女は魔女にならない。力・希望を使い果たせば、ただ消え去るのみ。

注意しなくてはならないのは、エピローグで出現している魔獣は、彼女の願いとは関係ないことです。
キュゥべえが言っているように、感情エネルギーをまき散らす人類が進化すれば、それは何らかの形で周囲に影響を及ぼすのでしょう。今まで魔女という形で回収されていた存在が、核を失って無秩序にばらまかれるようになった、と言う理解で間違いないはずです。
つまりは、自然現象ですね。

さて、この世界改変によって、一体何がどう変わったのか。そこをまとめて見ましょう。

1,キュゥべえは人類を進化させる
前提は変わりません。感情エネルギーの発電炉である人類は、進化させる必要があります。

2,しかし、回収方法が変わる
今までキュゥべえは、2つの方法でエネルギーを回収していました。一つはグリーフシードに蓄積した穢れの回収(背中でパックンチョ)であり、もう一つが「希望を絶望に相転移させること」です。10話のまどか魔女化シーンで示されているとおり、魔法少女が魔女になる時の相転移エネルギーは、グリーフシードを得るまでもなく回収できる、と言う事になっています。
この内、前者は変える必要がありませんが、後者を消し去ることになります。

3,回収方法の変化に伴う、関係の変化
魔獣からのエネルギー回収システムは、キュゥべえの最適戦略を徹底的に変化させます。
ここからは推測となりますが、キュゥべえは魔獣を倒せないのではないでしょうか?
感情エネルギーを持たないし使えないと言っている彼らは、感情エネルギーそのものである魔獣や魔女を、倒す術を持たないのでしょう。そうでないなら、自分たちで地球を狩り場にすれば良いだけです。(実はそうしない理由があり、それが続編の伏線になる、と言う可能性は有りますが)
と言うわけで、絶望に相転移させて魔女に堕とすことが目的だった以前と違い、キュゥべえにとって魔法少女は、有用な狩人になります。

4,そして、魔法少女消滅の持つ意味の反転
現行システムにおいて、魔法少女の消滅は目的そのものでした。結局の所、魔女に堕として相転移エネルギーを得ることが、QB族の目的だったのですから。
しかし、まどかの干渉で、これは完全に逆になりました。
QB達のエネルギー回収は、魔獣が落とす石(グリーフシードに相当)に移された穢れに依存します。つまり、魔法少女がソウルジェムにため込んだ穢れは、魔獣の石を経由して背中パックンしなくてはならないのです。
これがどう言うことを意味するかと言えば、穢れをため込んで魔法少女が消滅した場合、回収できるはずだったエネルギー(穢れ)が、虚空に消え去ってしまうことになるのです。そのため、キュゥべえ族は魔法少女が倒されないように、きちんとサポートする必要が出てきます。
当然、「話が違う!」と絶望されたらマイナスにしかなりませんから、今までのように騙して徴兵というパターンは、そうそう使えなくなるはずです。

5,ただし……
例えば、体が実はゾンビというような話は、きっとそのままでしょう。あれは、QBが言うとおり、確かに合理的な行為ですし、魔法少女の殉職率を下げるために不可欠ですから。ただ、上記のように絶望されてはたまらないので、ある程度オブラートにくるんだ言い方を身につけて、「説得」や「説明」を、彼なりに駆使するようになるんじゃないでしょうか?


と言うわけで、もう一回まとめると、
「世界の物理法則を1箇所だけ改変することで、全ての問題を回避して、世界をより良い形で維持できるようにした」と言う事になります。

どんな値を代入してもひどい結果しか返さない不幸の方程式に対して、その中の係数をたった1箇所改変するだけで、許容可能な数値を出力するようにする。言わば、神が放置した悲しいエラー世界のデバッグとして、もの凄くスマートなことをやっていると言う事だと思います。

と言うわけで、やっぱりこれって良くできてるんだなあ、と納得した次第です。
勿論、盛り上がりとしては10話が最高潮でしたし、ほむらの悲恋に涙が尽きないのですが、それは欠点と呼ぶのもおこがましい、「Sランクの中に混じったAランク」でしかないのですから。って言うか、後者なんてむしろカタルシスの根源ですしね。あの苦さと哀しさを孕んだ運命があればこそ、記憶にも残ろうという物です。

本当にダメなエンディングってのはな、EVAみてえなのを言うんだよ!と、公開日に映画版見に行った私は、毒を吐く権利があるはず。


いや本当、終わった後も色々考えて楽しめる、あるいは色々考えずにはいられないというのは、良い作品の証拠ですよ。
本当に魅力的なので、2期でも映画版でもやってくれ!と思う気持ちと、美しく終わっているところでエンドマークを打って上げるべきだ、と言う気持ちがかなり拮抗。真ん中を取ると、同じスタッフで完全な新作を!でしょうか?



なお、「熱力学の第二法則無効にして!」みたいな大技はどうかとちょっと考えたんですが、多分ビッグバン後のインフレーションが起きずに宇宙が消え去って終わる、のか?
ショートショートのオチとしては良くても、シリーズ物でやるにはアレ過ぎますね。




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この記事へのコメント
snow-windさん。
保坂氏、無事当選したようです。よかったよかった。
ただ、樽井氏は落ちてしまわれた模様・・・残念。
Posted by K.J at 2011年04月25日 00:21
確かにまどかの願いはうまいことやったなぁという感じですね。
絶望による魔女化を無くすという最大の目的だけでなく、
過去~未来の少女たちの祈りや覚悟を無にすることなく尊重し、
なおかつ世界の改変度合を最小限にとどめることを全部同時に1つの願いで達成したのですから。
あの世界のルールの中では、あのエンディングが限りなくベストに近いベターだったと思えます。
ほむらにとってはワーストに近いものだったかもしれませんが……

話は変わりますが、改変後の世界でほむらが弓を武器にしていたのはグッときました。
OP曲CDのジャケットでしたか、まどかとほむらが弓を引いている絵がネタバレなんじゃないかと言われていましたが、
こういう風に持ってくるのかと。

続編やら番外編やらをやるならぜひマミさんメインでと願っております。
Posted by poscam at 2011年04月25日 00:24
 はじめまして、以前からゲームや小説のレビューをいろいろと参考にさせてただいておりましたが今回始めてコメントさせていただきます。

 こちらと、後山本さんのところで絶賛されていましたので、『まどかマギカ』で何年かぶりに(多分バンブーブレードを途中で見るのをやめて以来)アニメ視聴に復帰しました。感想としましては……。

 素晴らしい(凄まじいと半ば同義語ですが(苦笑))作品の存在を教えていただき、感謝の念が尽きません。本当にありがとうございました。

 まどかの最後の願いですが、悲劇の連鎖を断ち切る(厳密には『悲劇は未だ尽きないが絶望だけでは終わらないようにする』なんですけどね……このあたりの苦さがまた巧すぎます)最適解なのはsnow-wind様の御考察の通りだと私も思いますが、同時にほむらの願いを引き継いでもいるんですよね。『まどかを救いたい』→『ほむらやさやか、マミ、杏子、そしてまどか自身も含むすべての魔法少女を救いたい』という形で。そういう意味でも実に見事な結末のつけ方だと思いました。

 それでは、これからも記事を楽しみにさせていただきます。
Posted by あまね at 2011年05月02日 12:19
>あまね さん

そう言う事を言って頂けると、blog主冥利に尽きます。
面白いと思うものを紹介して面白いと感じて頂ければ、何よりですから。
Posted by snow-windsnow-wind at 2011年05月04日 00:25
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