2011年05月30日

合憲前提で文章を書く、誰でもできる簡単な仕事/日の丸・君が代

先日うんざりしつつ記事を書いていた日の丸・君が代関連事件について、最高裁の判決が出ました。

君が代訴訟、起立命じる職務命令「合憲」 最高裁初判断(asahi.com)

ピアノ伴奏拒否事件の流れからして、こうなるだろうとは予想できていた物の、これでも少しは最高裁に期待してたんですよ。何せ、あの判決以降、都教委にせよ先日の府知事にせよ、完全に暴走モードに入ってますしね。
まあ、追加の弁論を行わないまま判決日が決まった段階でこうなるのが見えたからこそ、府知事は気炎を上げてたわけですが。彼は、そう言う小賢しい点でそつがないですから。

で、判決がこちら。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110530164923.pdf

最高裁は、最近判決が出ると、即日で全文をWEBページにアップしてくれるんですが、なんで各報道機関はその出展を明記しないんでしょうかね?あんた等の解説に価値がないとは言いませんけど、一次情報の判決文に比べれば情報価値は言わずもがなです。

もっとも、各社の報道を見る限り、判決文読んで書かれたと思しき記事自体ありませんでしたが。大方、プレスリリースしか見てないんでしょう。


さて内容ですが、小法廷5人の全会一致。少数意見付与が二名居ますが、大部分は「僕の考えた理想の国家像」ポエムですので、読む価値はありません。
と言うか、須藤雅彦判事の、起立を強制することは思想信条の押しつけではないが、起立しないことは自らの思想信条を生徒に絶対視させる行為ってのが、何度読んでも解らないんですが……
サッカー云々の下りとかね。「多くの人から非難される」が正当化事由になるなら、憲法なんぞいらんのですよ。多数派の意志が常に貫徹する、イギリス式の議会主権で国家運営をすればいいって事ですから。(成文憲法がなくて慣習法による規制がある?ええ、そう言う「建前だけ存在する法まがい」こそ、お似合いだと言ってるんです)

いやもう、前回書いたとおり、こんな下らない事でただでさえ労働条件悪化で死屍累々の教員をすりつぶして、一体何がしたいんですかね?戦死者が出続ける激戦区で、増員されるのは政治委員ばかり、みたいな愉快痛快スターリングラードごっこがしたいんでしょうか?

判決趣意に関しては、外見的な行動の規制で内心・思想・信条の自由の侵害でない、と言うたわごとに目眩がするわけです。じゃあ、嫌がる人に日の丸を燃やすように強要するのは、思想・信条の自由に抵触しないとでも?インターナショナル斉唱でも良いですが。
例えば、学校行事のお芝居であっても、ユダヤ人に対し、鉤十字に向かってナチス式敬礼をさせる事がいかにひどい人権侵害かは、誰にでも想像できるでしょう。イスラム教徒に、学校行事だからとクリスマスに賛美歌歌わせる、なんてのも。

この問題に対する一番手っ取り早い方法は、斉唱・起立したくない教員に対しては、一時的に会場外に出てもらう事だと思うんですがね。斉唱・起立のタイミングに合わせて、会場外の雑用(卒業生退場時の花道準備とか)やらせりゃいいんじゃないですか?
これは、上で例に挙げたとおり、日の丸や君が代に限りませんが。歌詞や作曲家、周辺事情が思想信条にクリティカルヒットするような物は幾らでもあり得、それを「極端な衝突に至らないように、強制せずお互いスルーする」システムと言うのが、この手の「自由」の本質です。

とにかく、何度も言うように、憲法が、近代国家が内心の自由や表現の自由を絶対化しているのは、「そんな事を気にすること自体が非効率」だからなんですよ。
憲法の番人とは、結局の所そのために居るんですが、どうも我が国のケルヴィムさん達は違いまして。エデンの園に通じる道さえ守っていれば、自分の背後で楽園に出戻り猿族が入り込んでも職務を果たしたと思い込む、素敵な認識で動いております。

二言目には「ファウンディングファーザーズの理想」を引っ張り出す、連邦裁判所(アメリカの最高裁)の9人の爺婆にしても、DMCA違憲訴訟や児童ポルノ規制で、繰り返し原告被告双方に対し、「その規制によって得られる利益を見せろ」「その規制によって失われる利益を提示しろ」と言い続けます。それを具体的に提示できなかったためDMCAは今も健在で、児童ポルノ規制の多くは創作物を外された上に厳密な対象規定を課せられています。まあ、最高裁まで行かないところで、色々やりたい放題やられてますが。
とにかく、法文上の原則を拡大解釈する余地があるとすれば、それは具体的な利益/損害に、基づく場合のみなのです。

何というか、このままだと「大陸法ってクソだよな」みたいな事しか言えなくなりそうなわけですが、「仕方ない」と言うには、ちょっと導入から時間が経ちすぎてると思うわけです。近代法システムにしても、民主主義にしても。
本当に、なんでこう、労働規制から表現規制まで、効率性ってのが貫徹しないんですかねえ。我が国、一応まだ世界列強の一角を占める商業・工業国で、それはつまり効率性をないがしろにしては維持できない地位にあるって事なんですが。

6/1 追記
自民党……
あんた等の存在価値は、左右を問わない包括的国民政党(55年体制の成立経緯参照)だった事にあるのであって、社会党と対立する上での外見的保守なんかでは無かったのに。
象徴を燃やす人間を燃やすことでしか保てない正当性なんて、最初から存在しないのと一緒でしょうに。
なお私は、そもそも他国の国旗に対する毀損罪が存在する事自体、お門違いだと思ってますので、そこの所よろしく。連邦最高裁の、「我々が守るべきは国旗に象徴される理想であって、国旗という物体ではない」と言う判決は、普遍性を持つ概念だと思います。



その他の「社会」関係エントリーはこちら




タグ :社会

同じカテゴリー(社会)の記事
 ふざけないでいただきたい/オリンピック盗用ロゴの擁護について (2015-09-07 23:00)
 色々面倒くさい憲法9条の話 (2013-01-05 20:00)
 あっはっは! (2012-06-27 22:00)
 この国、政治的に詰んだって事ですよね (2012-06-26 22:00)
 著作権が守る物/行政の公開情報を引用して逮捕と言う麗しき世界 (2012-04-17 22:00)
 誰が為の公共性/アレフ施設へのガス供給工事不許可適法判決 (2012-03-15 20:00)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。