2011年07月23日

うさぎドロップ(原作) 感想/これは良い少女漫画

うさぎドロップ (1) (FC (380))

アニメ化されたからって手を出すのはどうよ、と言われそうですが、結局アニメ化や映画化の一番の恩恵は認知効果なんですよね。
大好きな作品であるふたつのスピカ(感想はこちら。と言っても、残念通り越して酷すぎる実写版の感想が大半ですが)なんかも、知ったきっかけはアニメ放映に合わせた書店の平積みでしたし。

と言うわけで、話題の「うさぎドロップ」、面白そうだったので全巻購入・読破しました。
そして、とても楽しい時間を過ごせましたよ。

以下、その感想です。

「うさぎドロップ」は、死んだ爺さんの隠し子である6歳の女の子を引き取った30歳独身男の大吉君が、奮戦する話です。
最初に設定を聞いた時に、「光源氏」と言う単語が浮かんだ人は私だけではないはず。ですが、一巻を読めば、「邪な連想して本当にすいません」と土下座する事になると思います。
もっとも、5巻以降は結局そっちの方向が出てくるのですが、それは後述。
ちなみに、題名の意味は最後まで不明。雰囲気的な物と割り切っておきましょう。

最初に一言で感想をまとめておくと、「トータルで見ても十分に面白いが、前半の子育て苦労譚で一貫して話を続けた方が、絶対面白かったと思う」という物になります。

りんちゃん子ども時代の方が圧倒的に可愛い(視点人物が「親」である大吉で、前半はより「子ども」として描かれてるんだから、当たり前ですが)し、コウキ君もちゃんと時系列で描いた方が、絶対に面白く描けたはず。
時系列がバラされているせいで、彼は後半、少女漫画的「ダメな幼馴染」(妙にベタベタしてアプローチはするが、絶対に報われない安全牌)になっちゃってるんですよね。前半のリアルな小学生男児から、一応陸続きではあるんですが。
後半になるとテーマの変化に合わせて出番の無くなるお父さん連中とか、もっとじっくり見たかったですし。

でも、繰り返しますが、本当に面白かったんです。

とにかく、キャラが活き活きしていているのですよ。
万年筆で母子手帳に細かく記入してる爺さんとか、絵は一貫して偏屈なだけにギャップが素晴らしいです。何気に、ジーンズ愛用してるモダンな人だったりとか。
コウキママとか、絵の善し悪しとは別にところで「美人」に描けてるのが凄いですよね。主人公が彼女とくっついてれば、話はだいぶスッキリしたのに…… と言うのは禁句として。(勿論、そうなっていたら、前半路線でも後半路線でも話は盛り下がったでしょうが)
実に「オカン」と言った感じの主人公母とか、家庭内での調停役を自然にこなしている主人公父とか、大人の描き方が堅実な所もポイント高いです。オカンオカンしている主人公母の過去エピソードとか、もう少し膨らませると前半のテーマたり得たかも知れないのが勿体ないところ。

で、後半も、しつこく言いますが悪くはない。ですが、やっぱり前半の面白さとは違ってきます。前半を下地にした別作品という趣で、前半の内容を回想として何度も出してくるのは上手い物の、やはり違和感が拭えないです。
だって、前巻まで読者が親しんできたりんちゃんは、歯抜けの顔で笑う6歳児だったんですよ。馬鹿な小学生男子(でも頼りになるナイスガイ)だったコウキもそう。大人達は10年では余り変わらないけれど、やっぱり私はリンちゃんやコウキや麗奈が、ゆっくり大きくなっていく姿を見たかったです。各家庭の問題も、後半では既に一段落した状態に落ち着いちゃってますしね。ドロドロを描きたくなかったのかもしれませんが、ちょっと肩すかしです。

後半はやたらと学校の場面ばかりになりますが、どうせなら小学校のシーンを多く欲しかったですしね。折角、名字の問題をあそこまで取り上げたんですから、成長と共にその辺の機微がクローズアップされる様は、是非描いて欲しかった所。あるいは、リンに友達との関係を優先されてへこむ大吉とか。
恋愛物として着地させるためには、その成長を描くわけに行かなかった、と言う事かもしれません。でも、だとしたら、単品では決して出来の悪くない後半の評価も、変わらざるを得ないかな。

あ、そうそう。最後のどんでん返しですが、あれだけはさすがに「チョットマテヤコラーーー!」とか、片言の日本語で叫びつつ、壁とか殴りたくなりました。あれは無いです。そのオチは、70年代とかで捨てといて下さい。「じゃあ一体誰が○○なの?」と言う疑問は、どうでも良いと言わんばかりにスルーされて放置ですしね。この辺を見ると、後半の路線変更は編集のてこ入れだったんじゃないか、という邪推も湧いてきます。

と言う風に、ちょっぴり不満はあるのですが、前半の圧倒的なパワーと全体としてみた場合の完成度は一流。流行物は悉く死ね!と言うほど強烈な信念を持っていない限り、一読してみて損はないと思います。少なくとも、4巻までは迷わずお勧めできますね。言うまでもなく、どうせなら全巻読んでみて欲しいですが。
本当、漫画ではここ最近一番のヒットでしたので。




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