2011年10月26日

雑誌「ユリイカ」 まどか☆マギカ特集号 感想

ユリイカ2011年11月臨時増刊号 総特集=魔法少女まどか☆マギカ 魔法少女に花束を
ユリイカ2011年11月臨時増刊号 総特集=魔法少女まどか☆マギカ 魔法少女に花束を


一応読み切ったので、感想を。
ユリイカ2011年増刊号は、丸ごと一冊使ったまどか☆マギカ特集です。内容は、スタッフや評論家の対談が5本、単独での評論が8本、それにおまけの用語解説や漫画家等によるカット絵です。

とりあえず、3つに分けて感想を書きましょう。

1,対談
私は声優に作品パーツとして以上の興味を持たないオタクなので、声優対談は余り有用と思いませんでした。役者の役柄解釈という点では結構面白い面もあるのですが。
評論家の対談については後述。

恐らく一番興味深いのは、虚淵×田中ロミオの対談でしょう。CROSS†CHANNELと絡めつつ、制作体制や作品へのスタンスなどを語り合っており、結構興味深い内容です。
ただ、田中ロミオが「ライターが偶像化されていると思う」「芸能活動とライティング活動を両立させてほしいみたいな要望があっちこっちから来るんですけど、そんなバカな、というのは思いますね」と言っているとおり、割と身も蓋もない内容が多いです。ファウストなんて知らんがな、(あの文章を仕込んだのは脚本家ではなく演出)みたいな話とか。

何より、REWRITEで本当にひどい事になってしまった後だけに、虚淵玄が田中ロミオを褒めちぎるのに、もの凄い白々しい物を感じてしまう辺りが…… まあ、虚淵氏はREWRITEはやってないそうですが。
それと、まどか☆マギカとは無関係なんですが、田中ロミオが創作スタンスとして「『泣ける話を期待してたのに違った』とかその逆とかでお客さんが不満に思うということを避けたい」と書いているのを見て、驚愕しました。と言う事は、REWRITE(当BLOGの感想はこちらは、泣ける話を期待されているとは思わなかったと言う事なんでしょうか?少なくとも、田中ロミオは泣きゲーの名作を過去幾つも物にしており、泣きゲーを作れないなどと言う事は無いはずなのですから。

閑話休題、両者とも、割と遠回しにですがエロゲ業界事情を嘆いているのは、やっぱりそうなんだなあ、と言う思いを再度確認。「人類は衰退しました」の後書きで書かれていたのと同じですが、やはり90年代から00年代を彩ったアヴァンギャルドな方向性は、もはや難しいようです。


2,評論
評論家のサブカル評論なんて、自分の知っている領域に無理矢理引き込んで、半径3mの感覚的文章を振りまくだけでしょ?
と言う皮肉は、やっぱりほとんど当てはまります。ただし、具体的な画像描写を挙げてその特殊性というか面白さを説明している対談なんかは、それなりに楽しめます。

他はまあ、推して知るべし。とりあえず、美少女物と対置される呼称として「サブカル」を挙げている人とかは、どうした物か。しかも、その定義を崩したのがエヴァンゲリオン?エヴァのヒットはオタク業界での美少女物の地位確立(恋愛シミュレーションの大ヒットとパソコン普及によるエロゲの一般化)より半歩先んじてるはずですが。

虚淵氏自身が菊地秀行や香港映画からの影響に何度も言及しているのに、そっちと絡めた評論が無い辺りとか、薄いですよね。QBによる肉体改造なんか、伝奇とサイバーパンクのセオリーをそのまま使ったもので、伊藤計劃との同時代性なんてそりゃ同根てだけの話だろう、とか。

特に気になったのは、誰も彼も作劇その他の「特殊性」に言及するばかりな所です。確かにイヌカレーの空間表現や面白いカメラワークは演出として優れていましたが、奇抜な演出だけならもっとえげつないのはあるわけです。対して、丁寧に作られたシナリオラインや短サイクルで伏線の構築・回収を繰り返したテンポの良さなど、「基本に忠実なところ」「手間と暇をかけて王道を歩んだところ」を指摘している人は居ません。記憶にある中では唯一田中ロミオが、シナリオラインとしてはエロゲーでは普通、なるべくしてなった(奇抜ではない)話、と指摘していたくらいです。この辺、EVAの特殊性ばかりを褒め殺しにした頃から変わりませんね。


3,その他
漫画家連のカット絵は、中々良いです。薄い本を買い漁ったせいで価値観がぐらついているのかもしれませんが、味を活かした素敵な絵が並んでいます。
志村貴子の控えめに微笑むほむらは透明感があって綺麗ですし、吾妻ひでおのほむらは魔法少女物の歴史を感じさせる正統的な物。(吾妻ひでおの絵柄でほむら、と言う絵面から来る感想です)なお、サブカル代表と思しき西島大介のほむらは、「凄く正しい気がするけど、同時に凄く反発したい」と言う感覚を惹起するという意味で、極めて「サブカル」的(笑)。あのデスマスクを思わせる貼り付いた無表情が、感情を抑えきれずに漏れ出させてしまうほむらのキャラクターと、ずれているように感じるからでしょうか?全体の雰囲気としては、まどか☆マギカと言う作品にも合致し、とても良い絵なのですが。
なお、期待していた篠房六郎のは、マミさんの普通の一枚絵でガッカリ。「百舌谷さん逆上する」でやって居るような、アナーキーな魔法少女系の絵をぶつけてくるんだと思ってました。雑誌的にも。

最後に、対談にせよ評論にせよ、致命的だろうと思った部分を。
冒頭に、論者や対談者の経歴等を載せていないのです。

一応記事の最後に肩書きは書かれているんですが、スタッフ辺りはともかく、「ライター」とか一言書かれても「誰あんた?」状態ですよ。ググれカスと言われそうですが、(ググった論者も居ますが)「誰が」「どんな立場で」書いているかというのは、評論や論文にとって「何を」書いているかよりしばしば重要です。この辺の、「お前等これくらいは知ってるんだろう」みたいな態度が垣間見えるから、いわゆる「サブカル」は嫌なんですよ。(ちなみに、こう言う態度は、本来「教養」を振り回すハイカルチャーの物。純文学とか。「サブカル」という呼称は、最初から極めて倒錯的なわけです)
と言うかですね、「どこの誰だか解らない奴の書いた評論」だったら、ネットに幾らでも転がっているわけで…… アナログな雑誌で出す場合、そこが重要な付加価値じゃないですか。


とまあ、全体的な欠点が一点、他は玉石混淆という内容。ま、雑誌としては普通ですよね。
なお、雑誌としてみた場合かなりお高め(1500円)ですが、薄い本に比べればコストパフォーマンス良いですし、脚本家の対談とかに興味がある方なら、買ってみても良いんじゃないでしょうか。
とりあえず私は、「こんなもんかな」と言う低期待度コミで、値段相応と感じました。



当BLOG内の、この他まどかマギカ関係のエントリーはこちら





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この記事へのコメント
やはりRewriteの出来は本当に悲しいものでした。

私としては、やはりヒロイン関連が一番残念でした。ちびまる子ちゃんをそのまま美少女にしたようなヒロインの小鳥や、エリートダメ人間の朱音といった他の恋愛ゲームにはなかなかいないような斬新なヒロインを出しておきながら、結局の作品上のメインヒロインは、もはや何番煎じかわからないわからない綾波チックなキャラでした、というのは残念の極み。

というより、篝の正体が気になる、というプレイヤーはいたでしょうが、篝と恋愛がしたかった、というプレイヤーはどれだけいたんでしょうか。オーラスルートで、プレイヤーの大半が気になっていたのは小鳥との行く末のはずです。これは、作品のシナリオ構成を考えれば、ライターもそうなるように書いたはずです。なのに、MOON編で、ただ一言「小鳥と結婚する未来もあった」で終わらしたことはもう暴動もんですよ。

なんというか、Rewriteを一言で評価するなら"中途半端"ですね。恋愛ものとしても中途半端だし、テーマ性の表現も中途半端だし、バトル物としては言わずもがな。

ここでRewriteの話をするのは記事違いかもと思いましたが、話題に出ていたので書かせていただきました。長文失礼いたしました。
Posted by nanasi at 2011年11月04日 23:17
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