2011年12月10日

輪るピングドラム 第22話 感想


輪るピングドラム 7 (Blu-ray Disc)
輪るピングドラム 7 (Blu-ray Disc)


前話までの感想はこちら


忙しくてBLOG更新も滞りがちですが、これの視聴は外せません。
物語は、気づくと残り三話。一視聴者としては、演出に煙に巻かれている間に、引き返せない崖っぷちまで追い詰められた感のある、輪るピングドラムの22話です。


第22話「美しい棺」



さて、舞台上のコマは出そろって、ここからどう言う詰め将棋?と思っていたところ、いきなり「今までずっとそこにあったのに、動くと思わなかった」コマの投入から。まさか、ダブルHをこのタイミングで戦線に投入とは!
これで、前回ラストでデッドロックにはまり込み、視野狭窄的に暴走を開始した各キャラの動きのベクトルが、変化を始めるきっかけとなるわけですね。うわあ、上手い!

それと、この期に及んできちんとギャグっぽい演出を入れ、しかもそれが違和感なく機能しているという事実に喫驚すべきでしょう。普通、切羽詰まった状況でああ言う方向を出すと、視聴者は白けてしまうのですが、見事に乗り越えています。

ちなみに、彼女たちのレーベルは「PING RECORD」。そう言うスポンサーへの目配り(?)、嫌いじゃないですよ。


ペンギン1号が読んでいる「2011年宇宙の旅」は、ご存じ「2001年宇宙の旅」と「2010年宇宙の旅」を合わせたもの。表紙は、早川から20年前に出た決定版(リンク先のAMAZONを見れば解りますが、そのまんまです)をパロっています。
内容を一々関連づけるのは不毛かつ無粋と解っているのですが、やはり気になります。これは冠葉を、2001年で反乱を起こしながら、2010年で人類を助けるために協力し、そして一つ上のステージへと進化したかのHAL9000になぞらえているのでしょうか?

と言うか、1号がエロ本以外を読んでいるのは久しぶり(はじめて?)なので、どうしても気になります。


このシーンで、空気を読まない小芝居を挟む事もできず、倒れ伏したまま動かない1号とか、実に示唆的。


そして、このシーンの陽毬は何故あそこまで優しく冠葉を癒すのか?本当の陽毬なのか?
陽毬の存在のあやふやさは前から指摘してきたところですが、(一部は、本当の兄妹ではなかったという形で回収されました)この辺にいたって、ますます現実と幻想の境界が曖昧になっていきます。
最もこの作品については、最終的に幻想の存在を完全否定する落ちもあり得るのではないかと疑っていますが。


いつも真面目な3号が、グラビアで1号の気を引こうとするも、1号は微動だにしない。この辺は、とても解りやすい解説演出。
なお、1号が2011年に続いて手に取る「こころ」は、新潮文庫版の表紙。サイズは文庫じゃないですが。題名がパロディではなくそのままなのは、著作権が切れているからでしょう。2001年/2010年との関連は今一解りませんが、これも自分を犠牲にする人間の物語という事で手に取らせているのでしょうか?

勿論、最後に手に取らせる新潮文庫版の「ファウスト」で、二人の行く末を暗示させるのも忘れません。

ところで、AMAZONへのリンクをぺたぺた貼っていて思いましたが、こう言うのって、作品中で実物を使い、かわりに上がった売上の何割かを制作会社にキャッシュバックするようなシステムは、普通にアリですよね。アホな権利者側が「使うなら金寄越せ」と言うだけで、正の効果を考えずにぶち壊す様子が目に浮びますが、使用料を取るのではなく許可を出してむしろ金を払う方式の方が、WIN-WINになれるんじゃないかと思います。
実際、小説で登場キャラクターが愛読していると書かれた本を買ってみたり、映画で主人公が食べていた物を試してみたりというのは、誰でも経験がある事ですしね。

とまあ、そんな話は置いておいて……


運命の選択とは、すなわち今居る世界の否定。個人的動機で世界を焼き尽くすのは「許されない」と言う事になっているけれど、主人公としては120%正しい正義の行動。この、とても典型的なアンビバレンツは、冠葉が「主人公ではない」事で、とても解りやすく浮かび上がります。
なお、ここで陽毬がそんな事を望んでいない、と言うのはほとんど何の意味も持ちません。シータから帰ってくれと言われてそのままパズーが引っ込んで良いはずがないし、ラピュタの悪用防止とパズーの無事(「海に捨てて!」)を最優先する相手の願いなどうっちゃって、ヒロインを助けてこその男の子(何度も言いますけど、物語上の役割の話ね)です。
本当、お話の基本構造は凄く類型的で解りやすいんですよ。しかし・だからこそ、それを面白く魅力的に見せる事は難しいし、本当に実力を問われるところなのです。


陽毬が言っているとおり、幻想を消し去り、陽毬は救われず、有り得べからざる命が消えれば全ては解決するのです。一人を生かすために大勢を犠牲にする世界など、間違っているに決まっています。
しかし、これは社会構築シミュレーションではなく、社会の中で孤立した個人達の物語であり、視聴者の視点はその合理的な解を受けいれられる場所にはありません。


しかし、前回の多蕗夫妻襲撃の犯人が痴情のもつれってオチは、さすがに「おい!」とか叫びそうになったり。いや、ここでナンチャッテを挟みますか。

ただ、ようやく幼年期の呪縛を脱し、「愛されていた」と言う事実だけを心の宝石として前に進み始めた二人の物語は、とても綺麗に幕を閉じました。恐らく桃果にとっても一番満足のいく結末でしょうし、素晴らしいハッピーエンド。
でも、それでも、本当にそれだけで良いのだろうか?とは、哀しく狂った二人に感情移入していた私としては、引っかかるところではあるのですが。特に二人の場合、桃果から愛され救われるだけで、結局何も返せなかった(桃果としては、二人が生き残ってくれただけで、十分だったのでしょうが)と言う現実があるわけで。

少なくとも、冠葉は彼らと同じ道は取れないでしょう。何より、彼はまだ、陽毬を失ったわけではないのですから。


そしてメインストーリーの方は、冠葉の能力がほぼ明らかに。「任せろ」と言っていますから、ピングフォース関連の人材は、何らかの超能力者なのでしょうね。だとすると、桃果も何らかの形でピングフォースと関係があるのでしょうか?
この作品の非日常的側面は全てピングフォースへとつながるのですが、その中で桃果だけが異質です。「ピングドラム」という言葉で関連性が仄めかされるくらいで。となると、未だ正体がよく解らないペンギン帽が、両者をつなぐ架け橋となるのでしょうが……

それと、ピングフォース関連では、冠葉&真砂子の父が「恐ろしい事をした」が「あの人達に使い捨てられた」と言うのが新情報として提示されます。教祖じゃなかったんですね。あるいは、教祖だったけど組織に使い捨てられた?だとすれば、ピングフォースとは結局何なのか?

あ、そうそう。↑の画像もそうですが、モブを徹底的に記号として描く演出が、結局の所社会からの阻害を表して居た、と言う事を端的に示します。今回も、冠葉を追いかける警察は、拡声器ごしの機械的音声だったり、サーチライトだったり、警察車両だったりと、徹底的に非人間的に描かれています。


つまり、夏芽家の事情は、家を捨ててピングフォースに走った父と、そこから離脱した真砂子&マリオと言う事みたいですね。

ここまでの展開とはつまり、以下のようになるでしょう。
社会から阻害された子ども達が(疑似)家族を作り、ただそれだけを防波堤として、世界の中で生き延びてきた。しかし、お互いを至上とするその行動は、結局互いを不幸にし、より一層状況を悪化させていく……

やはりこうなると、家族関係の外にいるダブルHの存在は、重要な要素になりそうです。


そして次回は、今までほとんど狂言回しにしかなっていなかった晶馬に、ついにスポットが。残り2話でどう畳みかけるか、期待と不安で胸が潰れそうです。

いやあ、Blu-rayが出たら、まとめて見返したいですね。
それではまた来週。



当BLOG内の、その他アニメ関係のエントリーはこちら






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この記事へのコメント
“ダブルHをこのタイミングで戦線に投入とは!”
でもダブルHの毛は異常に長くて馬鹿みたいにデカい。(笑)
ところで以前、オープニングの曲として流れていたノルニルとは運命を司る3女神ノルンのこと。 
そしてトリプルHがそれぞれノルンに相当するのでは。
エンディングで見せるトリプルHの衣装がプリンセスと同じであることも意味あることと私は勝手に思っている。

「いよいよ決行の時が来た。テディを一つの輪っかに50個投入しろ」
テディといえばプリンセスを連想させる。プリンセスも呪われた闇の世界から来たのだろうか。
プリンセスの正体は一体何者なのか?
残り少ない放送回数となったが、抽象的な解釈ではなく具体的にその正体を明かして欲しい。

また、「もう、あの薬は効かないんだ。」とのことだが、今のところ陽毬は元気が良いみたい。
果たして冠葉はいかなる方法で陽毬を救う気でいるのだろう… 

「私達の父親が過去にどれほど恐ろしいことをしたかあなたにも分かっているでしょう。そして父はあの人達に使い捨てられた。」
真砂子の訴えは悲痛で心を打つ。
そして冠葉は警官を爆殺。 冠葉はついに冷酷非情な殺人鬼に変貌してしまった。
真砂子は冠葉を「冠葉」と呼んだり「お兄様」と呼んだり感情が複雑に交錯しているようだ。
「マリオさん。ごめんなさい。あなたを救えなかった。」
それにしてもマリオって一体何なのだろう?
物語に於いて何のために存在し意味があるのかさっぱり分からない。
そして、最期はKIGA銃を手に凛として立つ真砂子の颯爽たる勇姿に萌えた。
真砂子は味のある中々魅力的なキャラだ。 これからの真砂子の活躍に期待したい。

とまあ、以上が今回の感想です。
“陽毬は何故あそこまで優しく冠葉を癒すのか?” 陽毬には何か決意のようものがあるようです。
その決意が破局を意味するのか救済へと繋がるのかは分からないですけど。
今まで陽毬はかわいく描かれていたけど、今回は美しさが溢れていました。
また今回は何だか暗かったけど重厚で重みのある内容に仕上がっていましたね。
感動が回を追うごと深まっていきます。
果たして破局が待ち受けているのか、救済の手が差し伸べられるのか気になるところです。
Posted by ノルニル at 2011年12月11日 01:00
真砂子父については16話で組織に使い捨てられた事実が語られてましたよ。そして冠葉が同じく氷壁の上のペンギンにされてしまうであろうことも。真砂子の最後のシーンは前OPと同じ立ち姿だったのが印象的で、それだけにこれが最期になりやしないかとひやひやしてます。

今回で求めた兄の愛情を得られた真砂子に対し、メインの高倉三兄妹は未だ迷走していますね。愛故に暴走する冠葉。彼を大切に思いながらも止められない二人。
「童話の様な物語」なら、前回の晶馬の行動や今回の陽毬の説得で冠葉は改心するかもしれない。けど、そうはならない。それは具体的な解決策が無かったのもあるでしょうが、この二人の「愛」が幼いところで止まっているからなのかも。愛を巡る輪の中で、この二人だけ「異性への思い」がはっきりとは描かれてないんですよね。
それはどこかおとぎ話の王子様とお姫様の様で。だからこそ現実的な冠葉には届かない。後期OPはネタバレの塊ということですが、始めから晶馬&陽毬と冠葉は違うルートを走っていたのかも。純粋な愛情も尊いものですが、二人がその「愛」を理解する事が解決策なのかもしれませんね。

対し多蕗とゆりの大人組は今回で決着がつきましたが、彼等が知ったのは愛を得ていただけでは無く、自分達だけが愛に飢えていた訳では無いということ(失恋ゆえに凶行に走った彼女を見ての理解?)ではないでしょうか。だからこそ、自分達は桃果に教わった愛を他の誰かにも教えなければならない。それこそが彼女が自分達を彼女がいなくなった世界に残した意味だと。そう理解した様に感じました。二人がりんごに返した日記が、この巡り巡る欠けた愛の物語への鍵となるのでしょうね。

ラストに晶馬自身の回想がここに来て漸く出て、誰か(りんごや家族)に纏わる形でしか語られなかった彼の物語が語られる事で、物語が収束されていく感が伝わって来ました。予告からして誰かと決着がつけられるみたいですが、それがハッピーエンドへ続く道になって欲しいものです。
Posted by みけ at 2011年12月14日 13:58
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