2012年01月07日

ザ・オーソドックス 桜坂洋「ALL YOU NEED IS KILL」感想

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)
All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)


「ALL YOU NEED IS KILL」は、ハリウッドで映画化が決まったと言う事で話題のライトノベルです。アニメ化も実写化も珍しくなくなったあの界隈で、その方向もあったのか、と驚くことしきり。
というわけで、これを機会に読んでみることにしました。

この作品は、宇宙から送り込まれた自動機械に侵略(正確には、機械の側は生命体の存在を頓着せずにテラフォーミングを行っている)される地球を舞台に、敗北の一日がループする地獄に閉じ込められた新兵の物語です。

内容は、ループ物として極めてオーソドックス。ループから逃れようとする試みも、中盤の展開もオチも、この手の作品に親しんだ読者なら見慣れたものでしょう。
ただし、その内容や描写はきちんと丁寧に行われており、奇をてらわない堅実さが好感触です。せいぜい、キャラクターの描写バランスにはもう少し改善の余地があったかもしれない、というくらいでしょうか?ただそこは、可愛いキャラクターを前面に出せねばならないライトノベル故の要求だと思うので、映画化されたら間違いなく筋肉とおっさんが増量されるのが今から目に浮びますが。

上記のとおりシナリオはとてもオーソドックスなのですが、その中で、描き込む所と軽く流す部分のメリハリがこなれており、やはり技巧的に優れていると思います。例えば、ミリタリー物が良くやらかす「延々と訓練シーンが続いて単調になる」とか、逆に「主人公達がどう言う立場・どう言う目的で戦っているのか不分明で感情移入できない」というような問題は、発生していません。当たり前だろうと思われそうですが、こう言う基本部分は、基本だけに良くおろそかにされ、良くできた作品に重大な瑕疵を残すのは良くある事です。

ループの理由なども、ちゃんと設定と絡めて説明されていて好感触。SFとして見れば色々穴はあるのですが、その辺は「敵のテクノロジーは謎だから良くわからねえ」で流すという方向みたいです。レーベルを考えても、妥当な(仕方ない)所でしょう。ハヤカワや創元ではないのですから、無いものねだりです。

と言うわけで、これにハリウッドが目を付けたというのは、実に納得できる話です。解りやすく、話の展開はメリハリが効き、アクションと感情描写もしっかり押さえる。何というか、「教科書通り」と言うと悪口のようですが、アウトラインの面白みの無さは、逆にしばしば中身の面白さを保証するわけで。
この感じだと、映画の内容も、精々キャラクターの設定をいじるくらいで、ほぼ忠実に映像化してくれるんじゃないかと思います。ヒロインがシガーニー・ウィーバーで敵のデザインがエイリアン、ってオチもあるかもしれませんがね。まあ、宇宙人ポールを見たばっかりの私には、むしろそれはご褒美になりますが。


ところで、よく似た作品で、いつまで経っても続きが出ないのがあった気がするんですけど、あっちはいつになったら完結するんですかね?



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