2012年01月30日

機動戦士ガンダムAGE 第16話 感想




機動戦士ガンダムAGE 第1巻 【豪華版】(初回限定生産) [Blu-ray]
機動戦士ガンダムAGE 第1巻 (初回限定生産) [Blu-ray]


あんまり途中で視聴やめるのは好きじゃないけど、24話くらいで打ち切ってくれるととても有り難いなあ、と言う厭戦気分で視聴を開始した、機動戦士ガンダムAGE、第十六話です。


第16話「馬小屋のガンダム」



困ったことに、やっぱりオープングは良くできているんです。連携して乱戦に対処するパイロット候補生(?)達と、スピード感のある殺陣。これをそのまま本編でできない理由は解るのですが、だからってあそこまで手抜きの戦闘にしなくてもいいじゃないですか。

そして、本当に意味不明な冒頭の戦況説明。
非正規戦力がメインの戦艦5隻で火星側橋頭堡を叩き壊せる事を証明したのが、第一部のラストでした。なのに、何故25年間戦線が膠着するんですか?膠着だけなら「距離の暴虐」で火星が防御で耐えていると解釈できるのですが、火星側が勢力圏を拡大している?
ええと、本当に何が何だか解らないのですが。第一、25年間って凄い時間ですよ。「神も見捨てた」第一次世界大戦で4年間、二次大戦で6年ですよ?それだけの時間地球圏でドンパチやり続けて、世代も一回りして、連邦政府も火星側も政権維持できるんですか?


で、立派なレイシストに成長したフリットの描写から、第一部の意味がようやく明らかになります。つまり、純粋な少年が戦争で歪んでしまう過程を描いた物だ、と。
その可能性は前回少し触れましたが、だったら何故第一部でもっとそれらしく演出しなかったのでしょうか?せめて、憎しみを呻くフリットに向けて、エミリーに「それじゃダメよ」とか呟かせるだけでも、だいぶ変わったはず。
まあそもそも、ここに落とすのであれば、UEによる破壊の悲惨さをきちんと演出しなかったと言う瑕疵が、更に大きくなってしまうのですよ。本当、これだけなら王道なんですけどねえ。ラスボスが最終回で語る「ラスボスが歪んでしまった理由」を、一部丸々かけて描くと言う構想だったわけでしょう?言ってみればたったそれだけの簡単なお仕事で、何故あそこまで脚本と演出を失敗できるのでしょうか?

例えば、UEによるコロニー破壊や、ファーデーンで子ども達を載せたトラックを狙われた際に、「こんなひどい事が出来るなんて、やっぱり敵は人間のわけがない」みたいな事を言わせておくとか、その程度の事もしてないってどうしたもんなんでしょうね?だって、結果から言えば、第一部のあれらのシーンは、敵の残虐さ・異質さを引き出すための物だったわけでしょう?


で、学園の裏でギャグ混じりに不良と喧嘩してるこう言うシーンは普通に描けてる訳です。だから、戦争とかそう言う「大きな物語」と関わらないのが、この脚本家にとって一番幸せな道だと思います。結果物を見せられる視聴者的にもね。


しかし、何の屈託もなさそうにフリットの妻に収まってるエミリーとか、どうしたもんでしょうね。
また言い過ぎだ何だと言われそうですが、根本的に想像力が足りてないと思うんですよ。
あの屈託を抱え、戦争の悲惨さを見せられた(エミリーは一番センシティブに反応していました)エミリーが、戦争狂いになったフリットと簡単に結婚できるのか?25年という歳月(しかも1世紀ぶりの戦争のただ中)で、世界はどう変わるのか?少なくとも、学園物経由豪華な夕食から入る描写が、相応しい変遷ではないでしょう。
第一部にしてもそうで、宇宙でコロニーが吹き飛ばされるとはどれだけ恐ろしいのか?故郷を失った人々はどれだけ悲惨な事になるのか?そもそも脱出直後の漂流をどう乗り切るのか、連邦という広域行政機関はどうそれに対処するのか、と言った当然疑問に思うべきポイントを総スルーし、つまりは豊穣なドラマの芽を軒並み摘んでいるわけです。
これらは決して細かいポイントではないですし、触れるだけでもかなり効果的になるはずなのに完全無視なのは、想像力が及んでいないからでしょう。こう言った「世界」の作り込みは、創作者の腕の見せ所であり、また作る側も見る側も楽しめる醍醐味のはずなのですが……

士官学校の下りとかもねえ。なんでそこ、親子の対立を強調しないんですかねえ。そして、エミリーさんは息子を士官学校に放り込んで、それで良いの?キャラ違っちゃってますし、そこで対立しておかないと、その後の展開で「やむを得ず銃を取る」と言う流れに惰性で入ってしまい、フリットとは違う道を進む可能性と言う伏線を張れません。


ところで、アスノ家は長子相続性みたいですね。こう言う所もなあ。今時それじゃ盛り上がらないでしょうに。資質とか状況から、もっと仰々しく引き継ぐべきなんでは?てか、私がアセムの妹ならぶち切れますぜ。


絵の酷さは、もう突っ込む気も失せるレベル。頭身くらい揃えればいいのに……


で、ツッコミばかりしたくないのですが、折角日常が敗れる敵の襲撃なのに、人が死んでいるという描写も防衛軍の声も描かないのは何のつもりなんですか?戦争の世紀へと突入した宇宙の諸相なわけで、生活を蹂躙される市民の描写や、故郷を守るべく戦って敗れる防衛部隊の肉声、発生する避難民の姿があってこそでしょう?第一部もそうでしたが、パロディ的な描写を繰り返す前に、ファーストガンダムが序盤で何を視聴者に印象づけて、あの世界に引きずり込んでいたかを把握して欲しい物です。
って言うか、出てくる被害者がヒロイン一人って、幾ら何でも安っぽすぎるでしょう。作劇上必要なコマが彼女だけと言う割り切りなのでしょうが、そんなんだから、世界が何処まで行っても書き割り状態なんですよ!!

でさあ、第一部であれだけ短期間で兵器の進化を繰り返していて、25年間の戦争では兵器の進化はゼロですか?ヴェトナム戦争をムスタングで戦えと言われたら、そのまま脱走しますよ。ガンダム世界で言うなら、RX-78でユニコーンの世界にぶち込まれるようなもんです。

と言うわけで、色々グダグダではあるのですが、第一世代と第二世代の対立という構造を話の中心に引き出せるなら、それなりに面白くなる気はするんですよ。第一部の出来を見る限り、無理でしょうけど。
ま、気が向いたら次も見るという方向で、一つ。



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この記事へのコメント
アセムはフリットの事を尊敬しているようでしたね。
親を親としてまだ捉えているところから、様々な葛藤を経て
「親も一人の人間なんだ」という事をやりたいのかもしれません。
それが出来れば、三世代にしたという体面はなんとか保てそうです。それが出来ればね。

フリット編に比べると大分マシでしたが、やはり細部が疎かになってましたね。
そして色々省略し過ぎていて、子どもには分かりづらい話の流れになってる気がします。
Posted by あまたん at 2012年01月31日 02:13
初めまして、「まどかマギカ」ってどんな話なんだろうと思って検索していた去年の3月に
こちらに初めて訪問させていただき、それ以来、ずっと読ませていただいております。


ガンダムAGEですが、たまたま見たネットニュースの中でプロデューサーの方が
こういう戦略ですと語っていましたが、私の読み取り不足かもしれませんが
どうもDVDやプラモが売れなくてもゲームで
売るからいいということらしいです。

http://gigazine.net/news/20120131-seiji-takeda-anime-business-forum-2012/

ちなみに私は、2部に入ったところで視聴を止めてしまいました。



ところで、こちらにコメントする時、メールアドレスを書いた方が
いいんでしょうか?
Posted by みさ at 2012年02月01日 02:42
私も視聴をやめてしまいました
でも制作者達は確実に良い経験だったでしょうね
先生の次回作に期待します
Posted by 斜め横 at 2012年02月01日 23:22
>みさ さん
ゲームも所詮周辺商品の一つなので、コアコンテンツであるアニメ本体が面白くなければ、元も子もないんですけどね……
リンク先は、DVD/Blu-rayの代わりにゲーム、という話ですね。試みとしては面白いですが、これは単純に「ちゃんと作ったガンダムのゲーム化をレベル5に依頼」でよかっただろうと思います。やりたかった事(ゲーム化しやすいようにゲーム屋が原作も作る)は解りますが、ただの良くある「畑違いクリエイター爆死プロジェクト」になったわけで。

メアドは、書いていただく必要はありません。記入欄があるのは、単なるBLOGの仕様です。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年02月03日 00:32
「ここが一般にウケる作品をほめたためしがない」
「ここでほめられた作品が一般でウケたためしがない」
ここはそういうところですが、この作品に関して言えば、
「ここがほめず、一般でもウケない」ようですね

…しかし、そこまで言うなら、もう本当に「切り時」では?
惰性でもクレームつけながらでも、最終回まで視聴を続けたら、結局製作サイドの思う壺ですよ?
種なんかそれで続編の種死まで作られ、そして皆ガタガタ言いながら種死の最終回まで見たんですから、正直「どっちもどっち」としか思えません

ガンダムは、実はアニメ業界からは嫌われています
なぜなら「コアなファンがモンスタークレーマーと化している。過去作を踏襲すれば『新味がない。スタッフ無能』と酷評され、斬新なことをやれば『こんなのガンダムじゃない。スタッフ無能』と酷評される。そしてとにかく何でも気に入らなければ『スタッフ無能』と叩く」からです
…それって「終コン」そのものじゃね?

皆がやりたがらないから、福田負債だの今回のエビだの、得体の知れないやつらがやらされ、駄作になるのです
ある意味、コアなファンの「自己責任」そのものです

なお、私は第四話が野球中継で放送延期になり、録画に失敗した時点で切りました
DVD借りるほどの作品ではないようです
Posted by 春香彼方 at 2012年02月07日 05:11
「一般」の定義を変えれば何にでも当てはまるまとめ、ありがとうございます。
って言うか、ベストセラーも人気作も、普通にお勧めしてるんですがねえ。

あと、視聴率の話と収益の話と作品の内容は、分けて書くことをお勧めします。どの側面から論じるかで、全く話が変わってきますから。
例えば、ご指摘のSEEDなど、メインターゲットたる小学生にちゃんと人気が出てオモチャも売れた、優良コンテンツ(商品)ですよ。その意味では、制作者は極めて良い仕事をしたことになります。

そもそも、あれだけ予算をかけられ一定の視聴率も確保できて実績になる大きな仕事で、「皆がやりたがらない」なんて、あり得ないと思いますが……
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年02月08日 01:35
ではポイントを絞りましょう>どの側面から論じるかで、全く話が変わってきますから。

『…しかし、そこまで言うなら、もう本当に「切り時」では?
惰性でもクレームつけながらでも、最終回まで視聴を続けたら、結局製作サイドの思う壺ですよ?』

小学生向けの販促アニメに多くを期待しすぎです
つーか、大の大人が小学生向けの販促アニメ本気で鑑賞して、本気で政治だの軍事だの持ち出して批判する方が間違っているのです
しょせん『子供だまし』の代物に何を期待してるんです
第一、snow-windさんの言う薀蓄を全部盛り込んだら、小学生向けの商業エンタの枠に収まりませんよ?

われわれは歳を取りすぎ、余計なことを知りすぎました
もう子供じゃない、子供じゃいられない、子供向けの作品を素直に楽しむことはできないのです
素直に楽しめないようになってしまったのなら、もう本当にアニメやゲームそのものを「切り時」では?
それが嫌なら、多少のアラには目をつぶるんですね
Posted by 春香彼方 at 2012年02月08日 06:00
製作の思う壺とか期待しすぎとか、オタク仲間同士でグダグダ語るのは楽しいけど
他人の作品批評に対してそれを理由につっこんでも
「大きなお世話」以外の何者でもないじゃないすか

あと必要なのは薀蓄じゃなくて子ども(男の子)心をくすぐる演出だって
一貫して言ってると思う
いやむしろ、子どもは我々が考えている以上にう・ん・ち・くはスキかもしれないですよ
Posted by ななしよぅ at 2012年02月08日 15:55
>春香彼方 さん
あなたが、子どももオタクも等しく舐めていると言う事は、よく解りました。
私は一貫して、子ども向けとしても失敗しているのではないか、と指摘して来ています。
そしてロボット物は、ガンダムに限らず基本的にオモチャの販促アニメです。その中で精一杯の表現をやって視聴者と勝負してきた制作者達を、愚弄しているとしか思えませんね。

と言うか、

>それが嫌なら、多少のアラには目をつぶるんですね

って、何様ですか?
前にも書きましたが、そう言う言い草は、「ならなんで不快なページをわざわざ見てるの?」と言う不毛な形で、自分自身に跳ね返るんですよ?
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年02月08日 20:20
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