2012年02月02日

最近読んだ本の感想

現在、私はトロピコ 4で絶賛独裁者街道邁進中ですが、疲れるので長時間持続は困難。一方、ACVはストーリーミッション終わった段階で、色々ガッカリ(決して駄作ではないんですよ)で意欲減退。
と言うわけで、どちらもちゃんとした感想は後日として、今日は書籍でも。



ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)
ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)

まずは、大樹連司の『ボンクラーズ、ドントクライ』の感想。
内容は、ヒーローごっこに明け暮れるだけのダメな映研に入ってきたきつめの美少女に感化され、ダメ人間が映画を撮る話。舞台は90年代末で、当時の自分を思い出して涙。映研の看板だけで特撮ごっこに明け暮れる主人公達と、理系部活を乗っ取ってTRPGに明け暮れていた私は、大して変わるところはありません。
そして、余りにリアルな主人公のポジションの説得力は異常。最近よくある「女の子とつきあえないダメな主人公を前面に出す」と言うのではなく、ダメ人間の不器用さを愛すべき物として描く、優しい視点。結論は、全く甘くねえけどな!大前提が現実だし!
でも、あの微笑ましく青臭い心の動きなんか見てると、やっぱり我々(私)がダメなのは、高校時代とかにああ言う甘酸っぱい体験をリアルでし損ねたからなんでしょうねえ……

なお、部長みたいなうざい特撮オタは当時の仲間にもおり、今でも時々会ったりしてますが、正にあんな感じでしたね。でも、そのヒーロー論にハッとさせられる辺り、良くできてます。ありきたりと言っちゃダメですよ。あれは、90年代に生きる部長が、物語を通してたどり着いた結論なんですから。

ま、基本的に極めて地味な小品なんですが、同作者の著作としては、放課後のロケッティア(感想はこちら)に次いで気に入りました。ゾンビが出てこない方が面白かったんじゃないかという感想になってしまったオブザデッド・マニアックス(つまらなくは無いです)と比較すると、現実に根付く地に足の付いた話の方が向いているのかもしれません。



ニコニコ時給800円
ニコニコ時給800円

続いての感想は、『ニコニコ時給800円』。零式を最後に見なくなったなあ、と思っていたら、海猫沢メロンはハードカバーというか一般書っぽい方向に移ってたんですね。
とりあえず最新刊を取り寄せて読んでみたのですが、ええと…… 悪くはないんですが、もの凄く普通の一般小説。
ゆるい連続性の群像劇で、阪急電車(批判的な感想はこちら)などよりよほど楽しめたのですが、作者の持ち味だった濃厚さ・過剰さは一切無し。しかも個々の話は、一番肝心な部分とオチが省かれていて、もの凄くモヤモヤする内容。ソツなく手堅くまとまってるんですが、そんな話が読みたくてこの作者の本は手に取らないよなあ、と言う感想にならざるを得ないです。この方向で大成したら、初期作品は軒並み黒歴史扱いになるんでしょうね。



沢木道楽堂怪奇録―はじまりのひとり (メディアワークス文庫)
沢木道楽堂怪奇録―はじまりのひとり (メディアワークス文庫)

三番目は、寺本耕也『沢木道楽堂怪奇録 はじまりのひとり』の感想。『超能力者のいた夏』(感想はこちら)で気に入った作者の第二作。まずは、ちゃんと二作目が出たことに安堵の拍手。
内容は、恐ろしく正統派の幽霊譚。幽霊が見える探偵まがいの何でも屋が主人公で、ワトソン君役が一話ヒロインの女子高生ですが、後者は余り前面には出ず。
第一話の、正統派を通り越して陳腐の領域に片足突っ込んだ話に眉根が寄りましたが、表題作の第二話が実に気色の悪い(誉め言葉)SF怪談で満足。小松左京の短編風味、と言えば解る人には解ってもらえるでしょうか?キャラクター的には、三話のうざいオタク(の幽霊)が一番立ってまして、こいつはレギュラーになったほうが、引き出しが増えてよかったかも。ただ、扱い難しそうですし、仕方ないかな。
とりあえず、話は色々展開できそうですし、続きが出たら読んでみるつもり。表題作からの続編展開次第では、割と本格的なことをやれる可能性もありそうですし。後者については、面白くなるか実に難しい(様々なSF作家が挑んできたテーマなので、字義通りの意味です)ところだとは思いますが。



アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1
アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1

四番目は、『アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者』第一巻の感想。
内容は、政府に雇われて、オタク文化伝道師として中世ファンタジー世界に送り込まれたヒキニートの話。
と、これだけ書くととてもライトノベルなライトノベルですが、さにあらず。多くの人が初期設定を聞いた段階で思うであろう、「伝道も何も、基盤文化が違いすぎる」と言う問題がメインテーマ。
オタク文化なんて物は、属性的には大衆文化の代表格なので、「平和」で一定の文化・教養レベルを持つ「大衆」が存在する「近代的」で「自由」な社会じゃないと、広めようがないわけですよ。その辺の諸々を中盤から前提に出して、とりあえずアクション一個で一巻を締める(問題の提示をオチに使う)構成は、こなれていると思います。
ただ、一周回ってこれをラノベでやっているというのが、大きなハンデになっている印象。具体的には、この事案を担当しているのが自衛隊(せめて内閣府か外務じゃないの?)であるとか、主人公(せめて技術顧問名目とかさあ)とか、キャラクター達(ラノベ的美少女ばかりで肝心の異世界が霞む)と言った問題があり、どうにも食い合わせが良くありません。小川一水のラノベ寄り作品を更にきつくした感じでしょうか?
発想は面白いですし、話の展開次第では凄い魅力的な物語が展開すると思うのですが、これこそ世界史の参考文献並べるような勢いで細部を詰めるか、アドバイザーを使わないと「悪い意味でラノベ」に終わってしまいそう。とりあえず続きは読んでみるつもりですが、「全盛期の田中芳樹に書いて欲しかったテーマだなあ」と言うのが正直なところ。
結局、ラノベ的外観のせいでどこまでが伏線でどこまでが作者の素なのか解らないのが、一番モヤモヤするところかも。例えば、ああ言う形で「アウトブレイク」を仕掛けたいなら、まず印刷技術を持ち込むだけで、凄まじいことが勝手に進展するわけですし。
とりあえず、判断は次巻以降に保留。


パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)
パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)

五番目は、『パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)』の感想。
内容は表題そのまま。そして、良質なドキュメント。
確かに疑問だったんですよ。パチンコの客層とアニメの客層は余りにも違うし、アニメキャラが使われているからパチンコを始めた奴など、オタク仲間で見たことがないわけで。(元々アニメファンのパチンコプレイヤーは居ましたが)
その素朴な疑問から出発して、関係者にできる限りインタビューを行い、ちゃんと一定の結論を素描してみせる作者は、やっぱり腕のいいライターだと思います。いや全く、この取材拒否の山見たら、普通放り出しますよ。もっとも、GONZOの広報は幾ら何でも対応が頭悪すぎるので、経営陣は「広報」の意味を担当者に叩き込んだ方が良いと思いますが……

個人的には、もう少し数字が欲しかったのですが、具体的な開発予算や宣伝費の内訳は、あの辺が限度なのでしょうね。良くやってると思います。
結論は数個の箇条書きで済むのですが、それを書くのは余りに酷いネタバレというかこの本の商品価値の否定になるので、以下に軽く触れる部分を除き、直接は書きません。ただ、ある程度予想できる&説明として首尾一貫して合理性もあって、納得できる物になっています。

ただし、パチンコ台高騰の理由が「版権料」というのは、明確な論理矛盾かと思います。元々開発費用を抑えると言うのがアニメ採用の大きな意味と書かれてるわけで、プッシュ要因はその前段にで触れられている宣伝費でしょう。副次的効果が本来の目的をねじ曲げてしまういう意味では、一時期のゲーム業界を彷彿とさせますね。

とりあえず、とても良くできたドキュメントでした。力の入ったノンフィクションも、良い物です。




"葵" ヒカルが地球にいたころ……

最後は、野村美月 『ヒカルが地球にいたころ……』シリーズの感想。
これは既刊全て(3巻まで)読破。毎回出てくる、源氏物語になぞらえた女の子も素晴らしい(ベースが類型細部の綿密な描写で肉付けをすると言う、理想的な造型)なんですが、どんどん格好良くなっていく主人公の少年が、誰より魅力的だったり。
ま、覆せない悲劇を前提としてその中であがくキャラクター達は、みんながみんな素敵なのですけどね。



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