2012年03月14日

これは確かに良い掌編 『ビブリア古書堂の事件手帖』 感想



ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)


今回は、全然関係のないところで唐突に名前を聞いたライトノベル(?)、三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの感想です。興味を持って読んでみましたが、なるほど「当たり」でした。

内容は、北鎌倉の古書店主でビブリオマニア(本狂い)の「栞子さん」と、過去のトラウマで活字をろくに読めない主人公のコンビが、古書にまつわる謎を解き明かすと言う物。
謎とは言っても相手にするのは、祖母が残した本の書き込みから秘められた過去が浮かび上がる第一話を筆頭に、セドリ屋が盗まれた本を探し出したり、遺品の古書に託された想いを読み解いたりと言った、日常の小さな事件です。しかし、その一つ一つが本を巡る登場人物の人生と重なり、とても優しい世界観を醸し出しています。

ちなみに、一巻の構成は実に古典的なアームチェア・ディテクティブ物。古書について語り出したら止まらない人嫌いの栞子さんと、体育会系無職の主人公は、実に良いコンビです。
推理小説は余り好きではないのですが、推理させる事では無く、謎がひもとかれる展開に焦点を絞った作りで、楽しく読むことが出来ました。
また、古本屋ではなく「古書堂」の題から解るとおり、出て来る本は最低でも40年以上前の古典達。ただ、その内容はきちんと作中で説明されるので、知らなくても全く問題ありません。と言うか、私もちゃんと読んだ事のある作品がなかった件…… 逆に本当に詳しい人だと、書名が出てきた段階でオチまで解ってしまうのかもしれません。

また、やはり良いのは出てくる古書店の雰囲気でしょうか。北鎌倉の駅の近くに、ひっそりと建つ光景が目に浮びます。私は鎌倉は結構行くのですが、最初読んだとき「ああ、こんな店あった気がする」とありもしないモデル(著者によると、北鎌倉駅周辺にはそもそも古書店はないそうです)を、幻視してしまいました。
本好きになる過程で古書店を回らなかった人間は余りいないでしょうから、正に本好きのための物語なのでしょう。勿論、現在古書店が絶滅危惧種となって居る事は知ってのとおり。そして、それに相応の理由があることも我々は知っているわけです。しかし、それでも、「あの日」の古書店が持っていた雰囲気を追体験させる設定と描写は、「こんな店と店主が、今でもどこかにいてくれるのだろう」と言う想像をかき立てる力を、きちんと確保しています。
……まあ、栞子さんみたいな人って、古書店の店主よりも、各地の図書館が色々な意味で壊滅(結果的に利用者が増えたんだから、と言う価値観は否定しませんが)する前の司書さんに多かったと思いますが。今でも、大学図書館なんかでは見られますね。

閑話休題、どんな傾向であれ、本が、読書が好きな人にはお勧めの一冊(現在二巻まで出てますが。なお、続刊予定)でした。たまには、ご無沙汰して久しい古書店をめぐってみたい、そんな事を考えたり。まあ、過去行っていた古本屋が壊滅したからこそ、今があるんですけどね!この辺り、個人ショップが大手チェーンに統合されて行き、結局家電量販店とAMAZON以外で買い物をしなくなっていったゲーム市場とパラレル。

とまあ、また一つメディアワークス文庫から、購入シリーズに追加です。この作品なんか、もはやライトノベルではない(表紙がアニメっぽい、と言う最終防衛ラインすら不明確。いや、確かに一般文庫と言い切るのは違うのですが)と言って良いと思うわけで、電撃は順調に一般小説市場に食い込みつつある感じですね。ライトノベルを「卒業」させずに活字市場に留まらせると言う意味で、本当に上手いことやってるなあと思います。俺妹なんか野感想で書いたとおり、電撃のマーケティング・生産手法にいい加減腹を立てていても、こう言う点は評価してもしきれないですね。

では、またエントリーの間が開いてしまいましたが、今日はこの辺で。



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