2012年04月05日

演出だけは得意なんだ!/映画「戦火の馬」感想


戦火の馬

↑原作の小説は、元々児童文学らしいですよ


なんだかんだでスピルバーグは好きなわけで、特に話題にもなっていない「戦火の馬」を見てきました。
なお、原題は「WAR HORSE」で、要するに軍馬と言う意味です。この辺の変更は、日本人の戦争アレルギーがあるのかもしれませんが、内容を見るに放題の方が合っていると思います。

とりあえず値段分程度は楽しめたのですが、感想は以下の通り。

1,さすがスピルバーグ。映像の美しさは素晴らしい。
2,脚本が支離滅裂。主人公への感情移入不能。


ではまず1から。
今回のエントリー名は、「宇宙人ポール」(感想はこちら)で本人が言っていたセリフから取ったのですが、正にそんな感じ。
序盤、小麦畑から一斉に立ち上がり、サーベルをきらめかせて突撃する騎馬隊の格好良さたるや!泥濘まみれの塹壕中間地帯で、静かに語り合う英独の兵士のシーンも良いですし、何よりラスト!夕日が落ちかかるムーアを横切り故郷へと向かう人馬のシーンは、そこだけ眺めていたい見事な映像美です。

で、問題点の指摘である2。
正直、何楽しんで良いのか、わかりゃしないシナリオなのですよ。
特に序盤、人間の主人公が物語の主人公たる馬に惚れ込む理由が、全く描写されません。要するに「一目惚れ」としか言いようがないので、感情のフックになりません。馬が鋤引いて畑耕すだけで感動できるお手軽な人間は、一体何人いるのでしょうか?児童文学というか、子ども騙しの最たる物でしょう。って言うか、サラブレッドに鋤引かせんなよ!

主人公が馬しか友達の居ない寂しい奴というのならまだ解るのですが、一応友人もいますし、何処まで行っても「なんでそこまで?」と言う印象にしかならず。馬に性的興奮を憶える変態だという裏設定でもあれば、納得できるかもしれません。

例えば、登場人物の中で、中間地帯で語り合う名もなき兵士と並んで印象に残るフランスの少女は、あの馬に惚れ込むのが納得行くんですよ。両親を戦火で失い、年老いた祖父と二人きりで、死んだ母の乗馬姿に憧れている。短いパートできちんと感情移入させますし、別離の理不尽さも舞台相応。
ところが、主人公は貧しい農家のはずなのに行動パターンはわがままなボンボンみたいで、状況の深刻さからは常に浮き上がり、要するに馬しか見てない馬鹿野郎です。

と言うか、人間はピンポイントで出てくる連中(恐らく馬丁上がりと思われるドイツ兵とか)が結構良い味を出している一方、スポットが当たると超適当に。これまた子ども騙しな「悪役」にしかなっていないドイツ将校(荷役馬ならともかく、軍馬鹵獲したなら騎兵隊に回せよ……)とか、開戦初期の志願兵で負け戦も経験していないはずなのにいきなり脱走に突っ走るドイツ兵兄弟とか、唖然とするレベル。

シーンも上記のように良い物が多いのに、主人公の馬がドイツ陣地を逃げ出すときのカットとか、どうした物かと悩むレベル。菱形戦車出したかったと言うのは解るのですが、だったらちゃんと塹壕戦で使ってその怪物性を見せつけるカットって物があるわけで。

なんか、制作期間が異常に短いお手軽企画だったらしいので、力の入った部分とやっつけパートに落差が出るのは仕方ないと思うのですが、物には限度があるんじゃないかと思わざるを得ませんでした。

とりあえず、あの頭おかしい主人公か、あるいは馬その物に感情移入できる人間でないと、感動するのは難しいと思います。
いや、映像美という意味では、存分に堪能して心動かされる物はあるのですけれどね。



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タグ :映画

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この記事へのコメント
 『歴史群像』に記事が載ってたので興味はあったんですが、うーん……。

 要するに『プライベート・ライアン』みたいなものと思えばいいんですかね。
プライベート・ライアン:冒頭のオマハビーチ上陸シーンだけで値段分の価値はある!!
戦火の馬:冒頭の騎兵突撃シーンだけで値段分の価値はある!!
 といった感じで。だとしたらまあいつものスピルバーグという訳でものすごく納得がいくんですが(爆)。
Posted by あまね at 2012年04月07日 23:52
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