2012年04月12日

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 10巻 感想

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 第10巻
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 第10巻


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脅迫容疑:32歳の男逮捕 小説家にメール500回以上(毎日新聞)
↑何やら、リアルの方で話題になっていたりもしますが……
ちなみに、リンク先が毎日なのは、ファン的意味で記事が一番詳しかったから。意味の解らないリンク付きの産経とか、参照したくないじゃないですか。(多分、脅迫というキーワードだけで繋げたんだと思いますが)


8巻9巻で、物語としては完全に「逃げ」を打ち、一貫したシナリオ構成という観点からは決定的に劣化してしまった、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の10巻です。

さて、例によって結論を先に書きますが、非常に評価に困る代物となっています。


1,読みやすさ・場面場面の面白さはとても高レベル。「ライト」なノベルのお手本と言っても良い。
2,8巻9巻で生じた物語の骨格異常を、矯正するきっかけになるなら高評価だが……


まず1ですが、これはもう一々説明するまでもないですよね。ドタバタにせよ掛け合いにせよ、技巧的には全く不満がありません。負荷も何もなく、気持ちの悪いニヤニヤ笑いを浮かべながら、スラスラ読み進めることができます。
各キャラクターは、これまでの蓄積でのびのびと自然に動き回っており、作者が楽しんで書いている雰囲気(勿論、真実など知るよしもありませんが)が伝わってきます。ピンポイントの脇役にしても、しっかりキャラの立った行動で強い印象を残しますし、割とアクの強い場合でも不快感まで突き抜ける事は基本的にありません。
個人的には、日向(黒猫妹)と黒猫の会話が短いながらも好感触。ろくでもない兄弟勢揃いの作品世界の中にあって、とても微笑ましい掛け合いを見せてくれるので癒されます。

ただ、この面白さというのは、要するに「凄く出来の良い萌えゲーをプレイしているときの感覚」に他なりません。そして、特化した萌えゲーを腐している事から解るとおり、私にとってこれは誉め言葉ではありません。
結局の所、気づいてみればこの作品は京介を中心とする、ただのハーレム物に成り下がってしまったと言う事です。愛すべきオタク達の人間関係構築の話でも、その中での恋愛と兄妹関係の清算を通じた成長譚でも無く、単なるドタバタを中心とするラブコメディ。それは決してつまらなくなど無く、むしろ上で書いたとおり絶品の面白さです。しかし、この物語が面白かったのは、決してそれだけではなく、そのキャラクター達がゆっくりと成長していく過程であり、その人間関係の変化・昇華へとゆっくりと進んでいたからでした。
勿論、何度も書いているとおり、作者の主張が生硬に顔を出してしまうようなある種の熱さ(それ自体は瑕疵でしたが)や、安易な萌えシナリオにはしないというキャラクター配置も魅力の一因でした。と言うか、最初からこう言う方向だったらここまで面白くなっていないわけで、編集から入る軌道修正が角を矯めているように思えます。

そもそも例によって、作品についてのインタビューに、編集だの宣伝担当だのゲームのプロデューサーだのが出張ってきてる段階で、ね…… (←の前半に当たる2期アニメプロモはもっと露骨ですが)

さすがに、前巻のふざけたタイアッププロモーションや話の雑さは鳴りを潜めましたが、読んだ感想はやっぱり「終わらせ損ねた物語」でした。

そして、2です。
しかし、今回のラストで、また話を動かそうとする雰囲気が見られました。勿論あれは、単なる商業的要請から来る「ロングパス」であり、7巻から8巻の構成同様酷いオチで終わる可能性は有ります。
しかし、京介と桐野の卒業というイベントも迫っていますし、あと数巻で物語を畳むための「終わりの始まり」の狼煙だとするならば、大いに期待できるところです。

まあ、こうやって変に期待をかけて付き合い続けるから、無意味なシリーズの長期化が横行して作品の質が下がり続けるんだろう、と言うのは完全な事実なわけですが。

と言うわけで、とりあえずこのラストから続く展開だけは、見届けてみたいと思います。

ただまあ、商業的要請としては、恋愛に決着を付けるような展開はやって欲しくないんでしょうね。アニメ2期にせよギャルゲーにせよ、決着を付ける展開を事前に見せるのは問題という事になるでしょうし。

本当、角川のメディアミックスは、多くの優れた作品を生み出す一方で、多くの優れた作品を「優れた作品」レベルに押しとどめ、または持続させる中で凡作に落とすと言った罪が大きすぎるのではないか、と思う次第です。
ええ、売れずに消えていく良作が多いことを考えれば、そのセールスポイントを見抜いてプロモーションし、「優れた作品」レベルに引き上げるあそこの力を、”否定”することは、少なくともできないのですが……



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この記事へのコメント
先ほど読了しました。文中でご指摘されていたのとほとんど同じ感想で、非常に良くできていて面白いが、よくも悪くも荒削りで魅力的な個性がかなり薄まっていて、あたかも別の作者によって書かれたかのような印象を持ちました。おっしゃるとおり、編集段階で相当手が入っているんでしょうね。完成度の高い「はがない」みたいになってしまいました。
Posted by アロヲ at 2012年04月14日 17:48
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