2012年04月15日

時代考証の杜撰さは伏線?/「魔法使いの夜」 感想1

魔法使いの夜 初回版
魔法使いの夜 初回版

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制作における自由度といい内容といい、段々商業を圧倒しつつある同人作品ですが、やはり流通の問題は常にあり続けるわけです。
と言うわけで、発売日にヨドバシで買える有難みを噛みしめつつ、「魔法使いの夜」のプレイを開始しました。
と言っても、見事な忙しさで、起動できたのは週末になってからだったりしますが。


さてまずは、五章前半までの感想になります。

……の前に、喜び勇んでプレイしようとしたら、いきなりプロテクト誤爆ですよ。誤爆対応ツールが標準添付されていますが、そんなものが標準添付になるような精度の低いプロテクト自体、ユーザーに喧嘩売ってる以外の何者でもないわけで。

ええ、頭に来たのでとっととnodvd化です。誤爆されたあげく、情報送信なんぞする気はありません。そもそもメイン機のDVDドライブは、ヨーロッパユニバーサリス3 DIVINE WIND の指定席なんです。発売日に正価で買ってるんですから、文句言われる筋合もありませんし。
元々私、FATEの凄さ(量とかお話の完成度とか)は高く評価しながらも、根本的な物語の構成が好きでなかったんですよ。今は亡き「νばるへぶ」さんの感想にほぼ完全に同意する、と言っておけば、解る人には解ってもらえるでしょう。(あれだけまどか☆マギカを高く評価しながら、FATE/ZEROを見ていないのはそう言うわけです)今回の件で、その悪印象が別方向でさらに強まってしまったところで、何とかプレイ開始です。
いつもの通り、この辺を割り引いて読んで頂けるとよろしいかと。

さて、始めてまず気になったのはBGMです。最初のピアノ曲なのですが、不協和音がもの凄く耳障り。ちょっと意識を向けると突然不快になるんですが、なんでしょこれ。まさか今時DVDから直接再生しているわけでもないでしょうから、元々の曲の問題でしょう。
他の曲は全く気にならないのですが、何故最初の曲だけ水準を割っているのか不思議です。

一方、映像は更に進化しており、実写とアニメの中間のような背景が、硬質な物語に非常に良くマッチしています。細かなフェイドアウトやレイヤーを被せる演出も、余裕のある体制にのみ許される贅沢な作り。ただ、クリックでも飛ばせない演出が多いのは引っかかりますね。特殊処理の影響だと思うんですが、進行速度を自分でコントロールできないとストレスがたまります。一回異常に処理が重くなって、フリーズしかけたポイントもありましたし。
しかしまあ、パターン数の多さは凄いですね。見せ方自体も、単純な背景+立ち絵ではなく、処理付き背景+キャラクターパターンの多重レイヤーで、ちょっとしたアニメのよう。恐らく話題になるのは派手で綺麗な魔法エフェクトとかだと思うんですが、作戦をCGモデルで表示して解りやすく示したりとか、行き届いています。良いですねえ、こう言うの。

なお、オープニングムービーが流れるまで(そしてオープニングムービーそのもの)の「掴み」の弱さも驚くべきところで、最初の「引き」となる伏線を除いては、何の起伏もありません。しかしこれも、5分や10分でプレーヤーがこの作品を見捨てるわけがないと知る大作だけに許される、これまた贅沢な作り方。こう言うのが横綱相撲という奴で、羨ましい限りです。まあ、たまにそれを勘違いして、最後までプレーヤーを楽しませないまま終わってしまう代物とかあったりしますので、油断は禁物ですが。


そして、例によって情報をシャットダウンしていたため、始めて一時間でやっとこの作品の舞台が1980年代と気づく遅まきさ。のわりに、駅前や服装の描写は割と現代的なのはどう言う訳なんでしょうかね?電子レンジやテレビやスチーム暖房など、80年代にしては新しすぎるような。(この辺は、後半で詳述します)
あ、オープニングで、恐らく10年余り前の出来事に関わる古い車について「1980年代の車には良くあった」と言っているのは、多分伏線で間違いないと思うのですが。少なくともこの文章から、あの回想の主体が80年代よりあとの時代にいるのは間違いないわけですし。


肝心の内容ですが、3章までの段階では、重要な情報は上手くぼかされており、「一体何が起きているのか」を類推するしかない「じらし」が上手く機能しています。一応一回戦闘描写もありましたが、描写されるのはあくまでも戦闘その物で、戦闘の意味や世界のルールは見えてきません。明らかに裏で進行しているらしい超常の事態についても、「進行している」と言う事実は露骨に示されるのに、内容は不明。上手い引っ張りです。

そして一気に話が動く5章からは、手の込んだエフェクトと画面全体を使った描写力で、グイグイ話に引き込みます。章の切れ目における「引き」の作り方も、やめ時を見失う憎い構成。この辺の丁寧さは、FATEの時も感じましたが堅実で技巧的。

また何より、FATE最大の不愉快ポイントであった登場人物の問題(うそ寒い正義と自己中心的な理屈を都合良く使い分けて恥じない変節漢で卑怯者の主人公や、てめえの罪を一切背負う気のないトリのヒロイン)が今の所顕在化しておらず、楽しくプレイすることができます。もっともこの辺、凛が中心だった間は無邪気に楽しめたFATEとパラレルな面もあるので、不安な面もありますが。

何にせよ、ここまではさすがの大作ぶりで、プレイ時間が取れない事が真剣に悩ましいレベルです。あー、引きこもって48時間とか連続プレイしたい!!

ところで、プレイ時間6時間を超えて選択肢が全くないのですが、これはそう言う類なんですかね。



ただですね、「物語」として、時代考証の酷さだけは、ちょっと許し難い物があるんですよ。

いえ、スカートの短さとか、そう言う事を言いたいのではありません。「現代から見ると控えめ」くらいに押さえていますから、あれはむしろ考証とのバランスを取ったところでしょう。
しかし、神が宿るべき細かな部分でアラが多すぎて、まるで没入できないのです。

まず、違和感の多くは、80年代を描くのに「80年代の製品」を使ったことによる物じゃないかと思います。当然ですが、家電にせよ小物にせよ、新製品に置き換わるわけではなく長く使われる(特に年代を遡るほど)ので、80年代の風景を強調するなら、70年代の物を中心にするべきだったのでしょう。80年代という舞台の意味である、レトロ感を出すという意味でも。コンビニやカラオケボックスみたいな、現在に比べて極めて少ない(後者に至っては、ほぼ0のはず)店舗しかなかった代物についても、もう少し気を使って描写して欲しいなあ、とか。
他、違和感という点だと、解説文章で一人称視点と三人称視点が入り乱れる事があるのは、ちょっとまずいでしょう。何らかの叙述トリックというようにも見えませんし。

なお、キッツィーランド関連の設定は、ちょっと酷いような……
建設着手が「今をさかのぼること十年前」で、3年間かけての完成が81年。そして閉園が86年。ところが、最初に言及される開園時が「安定期に入った80年代後半」で、あげく「JRの駅が落成しようとしていた」と来ました。
73年生まれの奈須きのこが知らないわけ無いと思うのですが、国鉄がJRに変わったのは87年。あらゆる意味で計算が合いません。ついでに、バブル景気というのは80年代末からですから、81年オープン86年閉園の同園を「バブルのあだ花」と言うのも酷いミス。
プロローグと同様、ミスじゃなくて叙述トリックかとも思ったのですが、どう考えても矛盾が残ります。

この辺、レトロな舞台を用意する場合絶対に押さえねばならない諸々で、プレイ中の違和感が半端無いことに。文章に引っかかって「あれ?私の勘違いだっけ?」と調べる度に予想どおりの回答を見つけ、ゲンナリしてきました。自分が生きてきた時代からと、油断してろくに調べもしなかったんでしょうか?一つ二つなら笑って済ますところですが、こう多いとなると……
直後の地の文も、「人々の生活水準は右肩あがりで、誰もが未来に不安をいだかなかった、狂騒の時代」とかって、80年代後半から前半を回想して言うセリフじゃねえですよ。それこそ80年代末なら、バブル入口。何ですかこれ?
なお、80年代くらいと言えば、普通に米ソが核兵器向け合ってチキンレース疾走中。ノストラダムスの大予言が人口に膾炙するくらい「未来に不安」が溢れていた時代でもあった、と言うのは強く主張したいところですが、これはこの際置いておきます。一応上記引用部分のような80年代観は、今では一般的なようですし。


とまあ、現在の所引っかかるのは細かな部分と時代考証くらいで、とても楽しめています。ファイアーエムブレム・覚醒の発売も迫っていることもあって、早く進めたいのですが、さて時間をどう捻出するか……




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