2012年04月17日

著作権が守る物/行政の公開情報を引用して逮捕と言う麗しき世界


この手の問題について、絶対に批判的な取り上げ方をしない産経だけが記事を掲載しているというのが、情報の流通経路を解りやすく示していて面白いですね。

個人ブログに市のHPをコピペ 著作権法違反容疑で無職男を逮捕(産経ニュース)

政府(「地方自治体」と言う単語は"LOCAL GOVERNMENT"のわざとらしい誤訳で、彼らは国と同じ「政府」です)の公開情報を引用した結果が、逮捕。こう言うのを警察国家と言いまして、ソ連や北朝鮮や中国を我々が馬鹿にしてネタにする根拠でございます。

とりあえず、問題点を整理しましょう。


・批判を受けた市が、相手方を潰そうと、明確な権利の濫用を行ったこと
・その濫用を、警察が先導したこと


まず前者ですが、行政は批判されるためにあります。市民を如何様にも縛れる権力は、常に主権者からの監視に晒されるのが当然です。余程のことがない限りこの義務は外されることはありません。多少の行き過ぎなど、権力に対する監視に穴が開くことに比べれば、些細な問題です。
そして、その「行き過ぎ」に対しては、幾つかの明確な基準が設けられています。例えば名誉毀損であり、例えば威力業務妨害です。「公務執行妨害」と言う恐るべきツールもありますが、これとて一応の掣肘が課せられています。

ところが今回、市が取った手段は「著作権法違反」でした。著作権は、言うまでもなく文化を守るための物です。市が税金で運営しているWEBページの内容(しかも内容は告知)に著作権が認められること自体、日本の著作権法の瑕疵です。著作権を設定して制作のインセンティブを与える意味は、全くないのですから。
これは、死んだ子どもに関する情報を転載して罵詈雑言を書いていたページを同法違反で逮捕したときと同様、完全な著作権法の理念違反で、つまりは濫用です。著作権は、気にくわない・許せないと思う表現を潰すための物ではありません。むしろ、その様な濫用が行えるという事自体、著作権という「特権」(何度でも書きますが、著作権は近代において絶対の鉄則である所有権に制限を加えて生み出される、法的な特権に過ぎません。自然権でもなんでもない、印刷ギルドの独占権が由来なのです)の問題点を浮かび上がらせることになります。
つまり、こんな代物を金科玉条として拡大に汲々とする現状は、明らかに間違っているだろうと。

そして今回については、明確に警察が糸を引いています。記事にあるとおり、相談を受けた警察が編み出した抜け道(見た限り、市・市職員やそれらと懇意の警察に気にくわない内容なのは間違いないでしょうが、名誉毀損にも威力業務妨害にも該当しません)が、「著作権法違反」だったのですから。ダウンロード違法化や著作権法の非親告罪化が、一体どのような道を拓こうとしているか、馬鹿でも解ると言う物でしょう。

ちなみに、問題のページはこちらみたいなんですが、率直に言ってこだわりの強い精神的に問題のある方だと思いますが、別件逮捕の正当化には全くなりませんわな。
転載されている写真は市のWEBページからですし、データや記事内容も同様。むしろ、これらが違法とされるのであれば、企業のWEBページ内容を使った企業批判も、官邸WEBページの内容を使った政府批判もできない事になります。

ちなみに、逮捕を主導したのは「千葉県警サイバー犯罪対策課」とありまして、大暴走のあげく実務レベルで著作権法を組み換えてしまった、京都府警類似部署のご同類。そして、こんなもんに逮捕状を出しやがる裁判所のザルっぷりは、もはや乾いた笑いさえこわばるという物です。

何だかもう、関連団体の暴走について散々書いてきておいてなんですが、ひょっとして問題なのは拡大ではなく、著作権制度その物だったりするんじゃないでしょうか?と言うか、こう言う使われ方が普通に可能だと裁判所辺りに判断されるんであれば、著作権なんて無い方がマシと言わざるを得なくなりますよ?だって、政府への批判の担保と文化の護持、どっちが優先かと言われたら、そりゃ生き死にに関わる方と答えざるを得ないですもん。
今回の自治体にせよ警察にせよ、制度の問題点を指摘して国民世論を喚起しようとか思ってるんでしょうか?そうだったらご苦労様とねぎらって上げたいところですが、勿論そんなわけはないわけで……

まあ、さすがに吠えない駄犬こと最高裁も、ここまで露骨な権利濫用なら、無罪判決出すと思うんですけどね。勿論、全然信用していないというか、それが100%信頼できるような状況なら、駄犬呼ばわりしたりしないわけですが。



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この記事へのコメント
著作権については、消費者側の姿勢にも問題があるように思えます。

一つの著作物に対して著作権を有する著作権者と所有権を有する消費者側で互いの権利を主張して対立し合う、とういうのが本来のあり方だと思うのですが、違法DL罰則化を喜ぶ人たちを代表に、著作者側に肩入れする人たちが多いです。

しかも、それは著作権者のことを真剣に考えてのことというよりも、自分は金を払ってるのに金を払わないやつがいるのが気に入らない、という理由が多いように思います。

自分の気に入らないものはすべて規制してしまえ、という考え方の蔓延が近年の著作権者たちの暴走に一役買っているのではないでしょうか。

あまり記事とは関係のない話題で申し訳ありませんが、どこかの美少女ゲームメーカのWebサイトに、無断の"引用"を禁じますという文言があったことを思い出しました。
Posted by 名無し at 2012年04月19日 16:08
あの辺は、他人が得をしているとみなすと、そこに上がろうとするのではなく相手を引きずり落とそうとする、美しき日本の心ですねえ。
金払っている我々も、フリーライダー達の存在から利益を得てる場合もある(居ないよりマシ)、と言うような話を違法DL関係のエントリーで前にしましたが、なかなか納得はされませんね。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年04月19日 20:57
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