2012年04月19日

期待される水準を過不足なく維持/「魔法使いの夜」 感想2


魔法使いの夜 初回版
魔法使いの夜 初回版


感想その1はこちら


今回は、第五章後半から七章+サブエピソードまでです。一応見えてる範囲では、ここが折り返し地点みたいですね。


ミラーメイズの戦闘が終わった息も吐かせぬまま、大仕掛けの魔法が廃園を覆う展開は圧巻。静から動へのなだれ込みと言い、バンクと流用が基本の言わばアニメに対するリミテッドアニメであったはずのノベルゲームとは思えない、映像美と画面展開に圧倒されます。単に動画を流すなら、まだ解るんですよ。そうではなく、あくまでもノベルゲームの文法の中で、信じられないほど贅沢にリソースを突っ込んでいる。「白詰草話」をプレイしたときの驚愕を彷彿とさせる物がありますが、手間のかけ方はこちらの方が上でしょう。時代が下っているのである意味必然ですが、当時と今の業界市況を比べると、蛮勇をふるったのはむしろこちら。

シナリオ的にも、きちんと段階を踏んで情報を提示しつつ戦闘描写は合理的で、緩急も付いている優等生。遊園地外れの10分間は謎でしたが(その前の売店内と違って、時間的余裕の理由が提示されていない)、逆を言うとそれくらい。一気に読ませます。

あ、結局戦闘描写が力押し一手なのは、FATEの頃と変わらない傾向。個人的に好きじゃない(単線的なインフレ合戦では、物語的な仕込みが機能しにくい)のですが、作者の性向と文章の書き方から見てこれこそがやりたい内容でしょうから、単純に好みの問題になります。ドラゴンボールとジョジョの戦闘どっちが好きか、みたいな話ですね。

ただし、なんか途中のカットインで、オープニングのあれが普通に青子の過去っぽいと解ったのは…… つまり、あの「80年代の車には良くあった」というのは、単なる文章の瑕疵なの!?
月にしても、「妙にCGで強調してるけど、文章に伏線見あたらなかったし、月の像もクレーターの位置とか普通に現実のそれだしなあ」とか思っていたら、あのオチですしねえ。インフレ戦闘もそうですが、こう言うのが作者の趣味なんでしょう。つまり、伏線の構築と回収とかには、根本的に興味がないんじゃないかと思います。FATEもそうでしたし。勿論、こう言う方向性が人気な以上、批判する筋ではないんでしょうね。この辺については、私ははっきりどうかと思いますが。伏線がないことは、逆説的に展開を容易に予測できる(ご都合主義が貫徹するため)と言う事ですし。

繰り返しますけど、この辺は一長一短なんですよね。登場人物の心情を逐一地の文で描いてしまうのも、一歩間違えれば陳腐一直線ですが、こう言う解りやすさの追求があの派手で目を引くエフェクトへのこだわりにつながるわけです。勿論、そもそも本作の場合、心情説明なんかは割と自然に文章に組み込んで、陳腐にならないように工夫されていますから、欠点も抑え込んでいると見ていいでしょう。
おそらく、文章自体が下手なわけでなく、正規の訓練を受けていない(編集を経る機会がなかった)事から来る基礎の抜けなのだと思います。人称問題がクリアされていないなんて、典型ですし。勿論、編集が仕事しない事に定評のあるラノベとかも、割と似たような状態ですが……

とは言え、80年代の高校授業では極めて珍しい「電子工学」なんて試験科目が出てきていたり、そもそも現実世界とは根本的にずれているという可能性も、一応あります。作者の方向性的に、考えにくいところですが。

ところで、キャラ的には、青子でも有珠でもなく、使い魔のロビンが一番良いですね。動画無し、最低限のアクション、台詞はゼロ(建前上)。なのに、あれだけキャラが立つんだから見事です。一番キャラが立ってのは饒舌になる前というのは、まあ仕方のない所ですが。

と言うわけで、色々思うところがありつつも、楽しく読み進めております。



さて以下は、この作品自身の内容とは関係しない部分です。

ただ、できが良ければ良いほどこみ上げてくる、ある種の哀しさという物があります。
単純な物語の分量としては、このゲームはラノベ三冊分ほどでしょう。つまり、2000円以下の商品と競合します。
動きもエフェクトも素晴らしい。しかし、絶賛ダンピング価格で制作される、「画面全体が動画」のアニメーションは、毎期湯水のように放映されています。
そして、世界的な予算をかけて馬鹿みたいな規模で作られる映画は、1800円で選り取り見取りです。

つまり、物語の出来や素材の良さと言う部分に戦場を限定するとき、「ゲーム」はその優越性を喪失し、レッドオーシャンに突っ込んでしまうのです。(ゲーム業界自体がレッドオーシャンですが、少なくとも独立したニッチです)

元々TYPE-MOONはゲーム性に重きを置いていませんでしたが、ひぐらし式の一本道構造を取った本作に不満が出るのは、仕方のない所かと思います。

繰り返しますが、私はFATEより余程気に入っていますし、クオリティの面で前回書いたような部分以外に不満はありません。それどころか、ノベル系PCゲームの中では、「素晴らしき日々 ~不連続存在~」(感想はこちら)以来のヒットでした。
しかし、その上でやはり、ゲームと言うメディアを買う意味の半分を占める期待感は満たされませんでしたし、何か納得の行かない物が残るのです。








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