2012年05月30日

『這いよれ!ニャル子さん』 原作1巻 アニメ1・2話 感想

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数少ない自由時間を何に使うかの取捨選択が、解体される財閥のように進行した結果、ボードゲームを除くほぼ全てのオタク活動が滞っております。

ですが、一応他の分野も撫でるくらいはしておきたいわけで、ニャル子さんは原作→アニメの順で触りを見てみました。


結果出てきた感想:
クトゥルフ神話は20世紀最大の同人シェアワールドであり、このくらいで怒っちゃダメだ。壁を殴って耐えるんだ、俺!


はい、勿論耐えられませんでした。
しかしこれは、決してクトゥルフで萌えキャラとか、そう言う話だからではありません。邪神が萌えキャラ化されるなんて珍しい話じゃありませんし、大体私が最初に触れたクトゥルフ物なんて多分菊地秀行のあれですよ。おかげで、今でも一番好きなクトゥルフの短編は『ピックマン氏のモデル』です。切れ味のいい短編って素敵。

閑話休題、我々良く訓練されてるわけで、「わしはクトゥルフと言ってのう」とか言う老人が出てこようが、ニャルラトホテップが空を覆って対空ミサイルをはね除けながら強襲してこようが、それくらいで腹は立てないわけですよ。ヒロインがネクロノミコン?フェニックス・ホークとアトラク・ニャチャが格闘戦?全部まとめて素晴らしい!
……ごめんなさい。「温帯」に関しては、まだ亡くなってなかったら悪口の2~3個はおまけで付いた気がします。


とにかく、諸々と違って、この「這いよれ!ニャル子さん」は、余りに肩すかしでした。ニャルラトホテップが萌えキャラ?良し。主人公が人格破綻者?良し。ルルイエがテーマパーク?良いじゃないか。
ですが、それらのネタは、これっぽっちも全く全然、クトゥルフ神話からの引用を活かせていないのです!いや、引用するならするで、やりようがあるだろうという話なのです。

例えば、ルルイエランドがテーマパークだというのなら、SAN値がどうこう言うのなら、ちゃんと設定を組んで狂気的な存在として描くべきでしょう。邪神名が種族名だというのなら、「来た奴がそう言う性格だった」で終わらせず、なんでそう誤解されたのかとか、話の膨らませ方はいくらでも有るはずです。
何しろこの作品、クトゥルフパロディを除いたら、クスリとも笑えないありきたりな話なんですから。

その際たるものが、人格破綻者で共感不可能な主人公と、逆に『単なる』萌えキャラのニャル子さんでしょう。

例えば、主人公は初対面の女の子の手にフォークを突き刺すようなキチガイなんですが、これをただのギャグとして描く意味は何でしょう?普通に考えて笑うどころかどん引きですよ。
しかしこれを、「一見可愛いけれど未知の物に関わってしまった者」の行動として描くことは可能なはずで、それだけで一気にクトゥルフっぽくなり、パロディにも深みが増してきます。

一番酷いのは、ニャル子さん。彼女は基本的に良いキャラなんですよ。ヘタレで狂っていながら、その攻撃対象を化物に絞ることで上手く邪神をアレンジしています。オタク文化がどうこう言うのは(最近だとアウトブレイク・カンパニーなんかもそうですが)オタクの恥ずかしい自意識が垣間見えて痛いはずんですが、何せニャルラトホテップなのでありになります。クトゥバに言い寄られてへたれる所とか、悪くないと思うんですよ。
ところが、事もあろうに一巻最後(アニメだと2話)で、ニャル子は「主人公が本当に好き」と言う事をいともあっさり表明してしまいます。これって、全部まとめてぶち壊しなんですよ。
「ニャルラトホテップだから全部許される」と言う事の意味は、奴は何を考えているか解らない・人間とコミュケートする人格は持っていても、底の部分で価値観どころか前提が異なる存在だからです。つまりは「そんな行動・態度は擬態だよ」と言う可能性が常にあるわけですね。
だから、萌えキャラとして振る舞えば振る舞うほど、逆にある意味原典に忠実になっていきますし、萌えている自分を外から眺めるメタな視点(「また騙されてるよ、この馬鹿」と言う視点)も入ってきて、見事にクトゥルフパロディとして成立するのです。ツンデレの逆と考えれば、解りやすいでしょう。
にもかかわらず、一巻最後の、あのどうしようもなく下らないシーンですよ。本当、擬態としての可能性を留保するだけで、いくらでもクトゥルフ物になるというのに。
と言うか、あんなオチにするなら、なんでニャルラトホテップなんですかねえ?ダーレスによって軒並み着ぐるみモンスター扱いされた、その辺の邪神にしとけばいいじゃないですか。あるいは、有り難くも安っぽい「旧神」の連中にしておけば、普通にシナリオラインも整理されたでしょうに。

と言うわけで、お話として、クトゥルフパロディとしても最悪の部類という感想になりました。愛と機転のないパロディは不愉快な物です。

クトゥルフ神話TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
クトゥルフ神話TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

もっとも、このブームのおかげで、↑のルールブックが再版を繰り返して馬鹿売れしたようで、素晴らしい事です。一冊買い足しちゃいましたよ。SANチェックは素晴らしい物です。ついでに、枯れ野と化しているTRPG業界に人が来てくれるといいなあ。
……どうせみんな、オンセで済ませちゃうんでしょうけどね。あれはTRPGとは全く別の遊びなので、頑張って仲間集めてプレイして欲しいもんです。

もっともクトゥルフの呼び声は、難しい部分があるのは確かなんですけどね。
あの、「ホラーの登場人物をプレイする」つまり「危険に首は突っ込む」「しかし、死ぬことを目的とするわけではない」と言うバランス感覚は、キーパーとして、伝えるのがなかなか難しいところです。

まあ、TRPG仲間が見つからない人は、コンベとか参加してみるといいんじゃないでしょうか。
はじめようとする人は学生が多いと思うので、「近くの大学名+TRPGコンベンション」とかでサーチすると、割と出て来ると思います。社会人の場合も、大体コンベって年齢制限とかありませんから、同じ方法でOK。あ、「住んでる都市名+同上」ってのも大ありです。「やりたいシステム名+同上」とかね。サーチ範囲を最近にしておかないと、古い情報ばかりで困ったことになりますが。

ちょっと昔なら、割と色々な高校にサークルがあって、入口になってたんですけどねえ。平野耕太先生とか、間違いなくあの時代の残党でしょう。



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この記事へのコメント
ぼろくそですねえ
ぶっちゃけ欠点として指摘されている、クトゥルフ神話から名前を引っ張ってきては
いるがクトゥルフっぽさがないからこそ売れたのではないかと思ってみたり。

クトゥルフ神話のTRPGルールブックが売れたのは素晴らしいことです。神話知識がニャ
ル子さんオンリーの人とガチ原理主義者で卓を囲んだらどうなるか実に興味深い。

TPRGについてはオンセどころかニコニコ動画のアイドルマスターや東方のキャラが
TRPGする動画を見るだけって人が多いのではないかと思っています。
もっともそのうち何割かが実際にTRPGをしてくれれば普及としては成功と言えるので
しょうが、TRGPは複数人が同じ場所に集まって数時間かけてセッションするというと
ても贅沢な遊びなので普及は難しいでしょうなあ。。。
Posted by shio at 2012年06月01日 01:41
 やっぱり耐えられませんでしたか(苦笑)。

 何と言うか、いろいろ脇が甘すぎますよね。『地球人類はまだ精神的に未熟だから…』とか言っときながら、出てくる地球外知性連中が全員地球人と同レベルの精神構造と言動の持ち主とか。確かに精神が同レベルでないとラブコメなんて成立しないんですが、だったら定番ネタだというだけであんな決定的に他の要素と対立するフレーバーを持ち込むべきじゃないですし。
 文章力は割りとまともな部類かとは思うんですが、個人的には『できのいい同人小説』の域を出ていないと言うのが正直な感想ですね。

 まあ、一巻最後で「主人公が本当に好き」については、元々そこで完結していた作品が入賞・デビューしたためそのままシリーズ化、というお約束コースのせいでしょうから、弁護の余地はあるような気がしますけど。
Posted by あまね at 2012年06月03日 16:29
>shioさん
確かに、クトゥルフ神話っぽくしたら売れないのは当然なんですが、最低限の「筋」は欲しかったと、そう言う話です。同じテンプレでも、落とし込む先が腹黒ヒロインのフォーマットなら、グッとニャルっぽくできるわけで。

TRPGにせよクトゥルフ神話にせよ、入口として機能する分にはありがたいですよね。古くはキャプテン翼読んでサッカー始めた少年達みたいなもんで。ただ、ニャル子さんや動画だけで見た新人相手にキーパーやるのは、謹んで辞退したいですが。ロードス島読んでD&Dの卓に入ってきた新人、と言ういにしえの悲劇の繰り返しとは言え……


>あまねさん
ホラーって半歩定型を外すと簡単にギャグにできるので、目の付け所は良かったと思うんですけどね。恋愛・異種族・歪んだラブコメって、古くは星新一、最近なら小川一水なんかがSFとして面白くアレンジした小品を出してますし。
正直作品内の萌え描写は凄く弱くて、イラスト効果を除外して考えると、同人小説というのは言い得て妙だと思います。
一巻ラストについては、あれを落ちにするなら、それこそ「何を考えているか解らない」を、もっとアピールする必要があったと思います。主人公が何度かそんな事をセリフで言ってますが、伏線として丸っきり活きてませんでしたし。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年06月03日 17:05
あはは……

まぁジャンル的には、クトゥルフというよりケロロ軍曹に限りなく近い
(パロディが多い、居候、宇宙人etc)
のでそれが駄目だと、きつい物があると思います……

クトゥルフ人気については、アニメの影響もありますが↓のリプレイが流行った事も原因だと思います。まぁ、実況プレイ動画の層が移動してきてたのもありますね。


http://www.nicovideo.jp/watch/sm14018645
Posted by 目のく at 2012年06月05日 00:48
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