2012年08月21日

こいつはひでえ/映画 リメイク版「トータル・リコール」 感想


追憶売ります (ハヤカワ文庫SF)


↑原作はディックですから、そもそもそのまんま映像化してもハリウッド映えするはずもなく、改変は必然。とは言え今回のは……


「トータル・リコール」は、1990年に公開された名作(と言う事になっている)映画のリメイクです。
リメイク前からして色々歪だったのですが、圧倒的な視覚効果やスピードで推しきっていた作品でした。(念のため言うと、これはハリウッド映画の基本スタイルです)ところが、今回はもう滅茶苦茶。監督と演出と美術を、三人集めて殺し合いをさせたいくらいの状態です。

欠点は多岐にわたり、いつものように結論を簡潔に書くのが難しいのですが、無理にまとめるとこうなるでしょうか?


・設定が支離滅裂で滅茶苦茶
・そこまでして特殊な設定を導入したのに、演出と乖離している
・って言うか、センスが古くさいんだよ!


まず最初ですが、今回の設定は以下のようになっています。

「化学戦争で荒廃した地球は可住地域が限られ、2つの国家だけが生き残っていました。ブリタニア連邦(EU)は、従属国家『コロニー』(オーストラリア)を支配し、その労働力をフォール(地球貫通トンネル)で毎日通勤させることで利用していたのです。しかし、技術革新によりこの労働力は不要になったので、コロニーを滅ぼすことにしました」

最終段が、明らかに他の設定と繋がっていない事に気づくと思います。
労働力が不要になったのであれば、単に入国を制限すれば良いだけです。両国はフォールで繋がっているだけなのですから。

と言うか、フォールが完成する前は両国はどうやって交通していたのかとか、そもそも問題は労働力だけなのかとか、突っ込み出すときりがありません。フォールで侵攻してくるのが解ってるのに、防衛措置すら取らないコロニーとかね。あれ、出口から大量の質量を穴に放り込むだけで簡単に止められるでしょ。

と言っても、繰り返しギャグのようにしつこくプッシュされる妻役の工作員とか、無意味に射殺される親友(主人公の行動に必然性はありません)とか、脚本は何もかも酷すぎるので、段々どうでも良くなってきます。

そして、これは前作でもそうだったのですが、何故諜報機関が主人公の記憶をいじるだけで放置したのか意味不明なのですよね。監視置くくらいなら、殺しちゃえばいいはずなのですが。今回は一応罠として放置した、みたいな事を言ってるんですが、主人公の記憶が戻ったのは偶然で、何がしたかったのか意味不明です。

まあ、設定がおかしいのは前作からの引き継ぎ部分も大きいので、この部分はこれくらいで流しておきます。
ただ、新規に投入された設定で、有効に機能している物が1つも見あたらなかった、と言う事だけは指摘しておきましょう。

まあ、それ以前のものも多すぎますけどね。ブリタニアとコロニーは別の国のはずなのに、コロニー内をシンセティックが最初から大手を振って歩いてるし。それどころか、「シンセティック」が自律行動型ロボットだという超重要な設定(これが量産ベースに乗ったので、コロニーの労働力は不要となる)が、どこでも説明されてないとかな!


そして、2番目。設定の滅茶苦茶さが、むしろ問題の中心です。

何しろ、「化学戦争で滅びかけた地球」のはずなのに、登場人物達は常時素肌を剥き出しで、降り注ぐ雨に濡れまくります。一応ドーム都市かとも思ったのですが、終盤で主人公がガスマスクが必要なエリアからヘリで直接都市内に乗り付けているので、間違いなく地続き。
それどころか、ガスマスクを付けて活動している場所ですら主人公は半袖姿で、頭が痛くなります。

大体、コロニーをブレードランナー丸出しの「猥雑なアジアテイスト」で描いておいて、その中で平気で小綺麗なデジタルガジェットが出てくるのは、何考えて脚本書いたんでしょうか?それで居て、一番未来ガジェットとして強調すべきリコール社の施設が似非中国風ですよ。あのなあ……

デジタルガジェットを出すなら、猥雑な雰囲気と混ぜる方法はいくらでも在るわけです。ディスプレイをCRT風にして描写するとか、剥き出しの基盤とか、それこそサイバーパンクの十八番ですから。

この「小型のデジタル機器出しときゃいいだろ」みたいな投げやりな演出は徹底していて、前作でもっとも有名だった「変身装置で税関突破失敗」のシーンで使われるガジェットが、単なる「立体映像被せる首輪」になってる始末。退化してるじゃねえかよ!!

そもそも、「記憶が偽か真か」がキモなのに、開始直後に工作員視点のシーンを入れてしまう監督は、一回専門学校からやり直すべきだと思います。叙述トリックが成立しないでしょ!?
ラストシーンのシンセティックとの格闘戦(これ自体本作のダサさの真骨頂ですが)で、主人公の工員経験(植え付けられた記憶)が役に立つのかと思いきや、そんな事は全くない展開とかも。


でまあ、もう書いているだけでも疲れてきたのですが、3番目。
中盤に出てくるブリタニアの未来都市が、「エアカー」と「ジェットヘリ」と「縦横に行き来する空中エレベータ」と言う、泣きたいほどに20世紀テイスト。一周回って新しい、と言う事もなく、つまんないカーチェイス(路面との摩擦が無いせいで逆に安っぽい)から一般人を巻き込むことを微塵も考えないテロリスト面目躍如の連続アクションまで、最悪の予定調和が続きます。どう考えても先回りできるはずのない場面で、毎回出てくる妻役工作員とかね。

シンセティックとか、折角の自律行動ロボットなのに、普通に手で人間用マシンガン持って射撃するか格闘かの二択ですよ。ロボコップ(とED209)の方が、今観てもよほど未来でしょう。

この辺ひょっとして、あえて古さを残すためにわざとやってるのかも知りませんが、ウンザリするだけです。

映像は結構頑張っていると思うんですが、ゴミみたいな脚本とクズみたいな演出が全部ぶっ壊しているので、見に行く価値は全くありません。
いやあ、久しぶりに酷い物を見ました。今度見に行く予定の「プロメテウス」と違って、事前に覚悟を決めていったわけではないので大ダメージです。やれやれ。



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タグ :映画SF

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