2012年09月02日

こんな素晴らしい作品だったのか!/おジャ魔女どれみ 全4期鑑賞

おジャ魔女どれみ(1) [DVD]


9/18追記 ナ・イ・ショの感想はこちら


少し前に書いたとおり、おジャ魔女どれみシリーズを、一期から順番に視聴しておりました。そして、このたびついにTVシリーズ全4期を視聴完了。ちなみに、見始めるまで把握していなかったのですが、「おジャ魔女どれみ」「おジャ魔女どれみ#(しゃーぷ)」「も~っと!おジャ魔女どれみ」「おジャ魔女どれみ ドッカ~ン!」の順で全四期。これに三期の時間を舞台としたOVA「おジャ魔女どれみ ナ・イ・ショ」が加わるそうです。

なお、短期間での走破完了は、ドラクエXの単調かつ退屈なLVアップ作業に平行して視聴でき、一気に進んだというのが大きいです。

閑話休題、感想は表題のとおり。
当初とかなり予定が異なり、途中で色々設定を足したり引いたりしているとは言え、4年間にもわたる彼女たちの成長の記録は、見事なドラマを生み出しています。一期で積み残された問題が四期で解決したり止揚されたり、踏み出す一歩の重さが伝わるドラマ作りは、教本になるレベル。
音楽も、アニメソング、つまりアニメという作品の一部として相乗効果で素晴らしく盛り上げてくれるパーツとして最高の素材で、関係ないグループの販促で選定されるまがい物とは一線を画してどれも好印象。AMAZONでCDを買い漁ったのは言うまでもありません。
魔法少女物としても、オモチャを売るという目的が上手くはまり、気持ちのよい・いかにも振り回したくなるデザインの変身道具が見事です。魔法で出てくるのは服だけで、その服は自力で着なくちゃならないというデザインは、発明じゃないですかね?衣装を単品で無理なく商品に落とせるわけですから。
個人的には、変身は2期のカスタネット型が好みです。デザイン単品としては、パティシエ服が最高峰。

何よりも、4期に渡って描かれた物語は、いずれも「友情」を基調として成長に伴う難題に向かう内容で、子ども達にとっては現在進行形の、大人達には「いつか辿った道」を示す身近なドラマ。キャラクターやドラマが余裕を持って丁寧に作られているため、感情移入度が半端無いレベルに達していきます。


なお、観はじめるきっかけ(その話を観たいが為に、最初から視聴していった)4期第40話「どれみと魔女をやめた魔女」ですが、本当に傑作でした。止め絵・引いたカメラと言った本シリーズの中では特異な演出技法に、淡い背景描写と歪んだ空間を組み合わせ、変わりゆく時間をガラスの揺らめき越しに表現する画面作りがまず最高。そこに、ここまで影の薄かった主人公・どれみを中央に据え、「大人には一人でなるしかない」と語りかける脚本。こんな物をテレビで流されたら、そりゃあ当時魂を粉砕されて一生アニメ道から足抜け出来なくなるファンが続出したわけです。確かに、細田守の最高傑作と呼ばれるわけが良く解りました。本人には不満かもしれませんが……

ただ、おおかみ子ども辺りの酷さ(感想はこちら)と比較すると、あの監督さんは積み重ねを描くのが苦手なのかなあ、と思ったり。重ねた結果を一点集中で出力するのは凄いのですが、映画は感動させるための前提が足りていない気がするので。


なお、もの凄い感動し、今まで観ていなかった自分を許し難く感じたわけですが、引っかかる点もありました。
一点目は、2期目からどれみ達に「母親」と言う役目を背負わせてしまった故の矛盾で、馬鹿でドジで元気な等身大少女のキャラが歪んでしまい、4期ラストまで輪郭が不鮮明になってしまったこと。何より、「子育ては甘くねえんだよ!!」と言う内容の「シメ」を母親がどれみに、どれみがももこにやるシーンなどは、背筋が寒くなるほど気持ちが悪かったです。母性至上主義は、得てしてこう言う無茶をやってしまうので、私は斎藤美奈子のアニメ批判には一定の理を認めます。(まあ、←の本は、評論云々以前に読み物として最高に面白いんですが)大体、小学校4年生(~6年生)つかまえて、貴様には母親としての覚悟が足りない!とかシメにかかる脚本って、普通に引きますって。大人だって引くでしょう。少子化ってのは、「そんな面倒なら回避します」と言う、合理的選択が取られた結果としての側面もあるわけでしてね。

他には魔法の扱いですね。別に体系が滅茶苦茶なのはどうでも良いのですが、「便利だから頼ってはいけない」と言う妙な戒めが貫徹していたのが気になるのです。要するにあれは、魔法界にとってはただのテクノロジーなわけで、それに頼らず「自分の手」でやるという規範は単なる反文明主義なわけですよ。2期で魔法に頼らず赤ん坊を育てようとする展開とか、頭を抱えましたよ。大体、あの物言いって、魔女や魔法使いにとっては喧嘩売ってる事になるわけなんですが、誰もたしなめないし。
この価値観が無自覚に貫かれるので、最後の「魔女にならない」と言う展開が説得力皆無になってしまっているのが、恐らく本作でもっとも厳しいところ。どれみ達は色々言ってるんですが、結局「魔法は必須ではない」と必要条件を述べてるだけで、「魔法はいらない」と言う十分条件は全く満たしてないのですよね。離ればなれになったら魔法は便利ですし、5人一緒なら永い時も越えて行けるはず。何より、全員が揃って魔法を拒否するというのも、全員が己の価値観で異なる道を選ぶというラストの中で浮いていて、何だかなあと言う感じでした。

これは、40話で悩んだ末に魔女の道を選ぼうとしたはずのどれみが、何の葛藤もなく、あまつさえ言わずもがなのような顔をして「魔女にはなりません!」と断言する事も一因でしょう。むしろ、それぞれの道を見つけて去っていく友人との対比として、彼女だけが初志を貫徹して魔女の道を選ぶ、と言う方が正しかった気がします。この後書く進路描き分けの問題ともかぶりますが。
このサイトさんが予想している(リンク先はリアルタイムの感想)ように、一人だけガラスの時間の中にシフトして、友人達の思い出を抱えて生き続けるどれみさんというのも、決して間違っていない「あり得た」エンディングでしょう。私が、ポーの一族や超人ロックが大好きな人間だという事を、さっ引いたとしても。

あ、最後に、5人が分かれるあのラストは本当に素晴らしいんですが、結局全員が親の意向を容れて友人より優先させる、と言うのはどうなんでしょう?オトコノコ向けの作品であれば、あそこはイニシエーションとして親の意向を越えて自らの価値を貫徹させるのがセオリーなわけで、さすがに違和感が強かったです。自分を思い返しても、あの年代で「親と一緒にいるか友人と一緒にいるか」を迫られて、前者を取る奴なんてまず居なかったと思うのですが。

これは大事な所なんですが、各人は自らの夢を選びますが、気色悪くも全員が全員親の意向通りなんですね。例えば、おんぷは私立中学に行く結果両親と一緒に住めるようになりますし、ももこなんか「友人より両親の方が自分のことを思ってくれている」と言う信じがたい理由で(あの年齢であの結論に至るのが信じられない、と言う事です。反抗期まで行かずとも、あの年齢の自分であれば共感できない価値観です)引っ越しを決めます。
と言うか、「巣立ち」を描くなら、友人より先に親から巣立たないと意味が無いのですよ。これは価値観の話ではなくて、一般に出生時から所与の物として与えられている親子関係は、ある程度自分の力で獲得された友人関係より当然古いもので、成長に伴って優先度が下がる順序が違うと言う事です。
ただこれはあくまでも、全員が同じであることの問題です。家族の再生を目標としてきたあいこがあの選択をするのは自然で、どれみでなくとも何とか笑って送り出したいと思うでしょう。はづきの選択が結果的に親の意向と一致したのは、一人だけなら許容範囲です。しかし、全員となると……
例えば、友人より夢と言う話にするにしても、親の用意した学校以外の学校を受験するとか、ドラマとして王道の展開はあったはずなんですよ。それを、あんな風に処理されてしまうと、斎藤美奈子でなくとも「これってどうなの?」と言いたくなります。明らかに物語の純度と切れ味を落としてしまっていますから。

ただ、これらの問題点は基本的には些細な傷で、このシリーズが傑作であることはいささかも揺るぎません。今書いた事というのはつまり、「減点要素は-50点分くらいあるが、他の部分で+200点くらい。だから100点を付けるのに何の問題もありません」と言う事です。

いやあ、本当に良い作品でした。計201話もあると中々人に勧めるのは厳しいですが、最近旧い友人に合うたびに「いいから観ろ!」と言って嫌がられるか、「まだ観てなかったのか!」と嘲笑われるかのどちらかと言う流れになっております。いや本当、一見お勧めとは正にこの事。TSUTAYA辺りに行けば一週間100円でしょうから、全話見ても5千円かそこらですよ。

やっぱり、マスターピースという奴は、ちゃんと補給しておくべきなんですねえ。
まあ問題は、押さえておくべきマスターピースもまた時間と共に積み上がり、人生で絶対消化できないと言う事なのですが。
それでも、生きている限り、無為に時間を過ごすことなく、もとい、本来無為な物に全力で資源を投資し浪費し費やして、素晴らしい物をどん欲に摂取していきたいと思いますです。

ああ、本当に良い話でありました。
あとは全13話のOVAが残っているのですが、これは配信やレンタルではなく、現物を押さえたいところ。とは言え、とっくに絶版なので、買って所有欲を満たしても、制作者には一文も入らないのが悲しい所です。Blu-rayを出すか、いい加減制作者向け投げ銭システムをどこかが実装してくれないものか……



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この記事へのコメント
この前、たまたま古本屋で小説版どれみを見かけました
Posted by かがみん at 2012年09月03日 18:18
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