2009年02月28日

『風と共に去りぬ』 感想

関連する芝居を見る機会があったので、読んでみました。いやあ、文庫で5冊とかビックリです。

風と共に去りぬ


ちなみに、私が読んだのは多分↑の版。昔風の二段組みで1200ページという恐ろしいハードカバーでしたが、一冊にまとまってるのがありがたいです。
リンクはAMAZONのアフィリエイトですが、でかくて邪魔なので図書館で借りるのが吉でしょう。

で、これなんですが、面白すぎて本当にビックリしました。

最近ラノベとSFしか読んでいなかったせいか、鮮烈な人物描写が場面場面を幻灯のように心に浮かび上がらせてくれます。特に主人公スカーレットの、「物凄く頭が良く適応性もあるが、想像力が皆無」な描写や対比となる「聖女」メラニー行動など、色々な要素が上手く調和して、深みのある人間を演出しています。

何が凄いって、黄色人種の私が読んでいても、「南部の大義」に感情移入できるんですよ。ここに描かれている南部の描写が、もうどうしようもないほど美化されたものだとわかっているのに。そして、大義も習慣も蹴飛ばすスカーレットに、苦々しい思いを喚起されて当惑する、と。

ただし、そのスカーレットの奔放な行動は間違いなく魅力的で、最高の悪役たるレット・バトラーの皮肉な言葉も、一々真実をついています。
特に、スカーレットの行動は、男であれば全く非難されるいわれのないことが多かったり、行動や思考自体は極めて合理的だったりする辺りが見事。善も悪も美点も欠点も全てのキャラクターの中に混在し、しかもいわゆる「文学」のように内面に潜り込んでグチグチとモノローグを連ねるような方法は取らないのが魅力的。端折りすぎの面もありますが。

とはいえ、流石に黒人に関する描写は、読んでいて嫌~な気分になるんですけどね。
ただ、ラヴクラフトの著作を喜んで読める文系オタク(言うまでもなく自分のことです)なら、この程度はスルーできるでしょう。多分……

とにかく、あまりに面白いのにビックリしたので、興味があっても手を出しあぐねていた方は、是非一読してみることをお勧めします。
南北戦争は日本人にはほとんど馴染みがないですが、今なら目の前の箱で適当に調べながら行けば全く問題ないですし。

南部は労働適齢期の男性人口の25%くらい死んでるらしいとか、世界初の近代国家による総力戦とか、そう言う知識と連関させるとさらに面白さがアップします。

個人的には、昔マイノリティ史の講義で習った、アメリカ南部における「レイプ事件」(黒人と白人の関係が発覚した場合、全てレイプ事件として処理される)とか、「汝姦淫するなかれ」(特に南部上流階級においては女性は性行為に苦痛しか感じない、と言う事になっており、そのように教育された。おかげで、罪の意識に押しつぶされる女性多数)の話とかを思い出して、実にニヤニヤできました。


ところで、評価の低い続編なんですが、
「著作権フリーになって、勝手に続編を書かれる前に、”ふさわしい価値観”で書かれた続編を誰かに書かせよう」
と言う著作権保持者の行動は、死後残る著作権の問題に、実に面白い皮肉を投げかけると思いませんか?

著者は、この作品をきちんと完結したものとして扱っており、勧められても頼まれても金を積まれても、決して続編を書こうとしませんでした。
少なくとも、「続編を書く権利」が相続されるって、おかしいですよね。「続編を書いた人間から利用料を取る権利」ならともかく。


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