2009年03月03日

ローゼンメイデン・トロイメント

前のエントリーは漫画の話なので、カテゴリーが違ってしまうのが困ったものですが、続き。

ローゼンメイデン・トロイメントも観終わったので感想を。周回遅れも良いところですね。こんなに面白いと解っていたら、ちゃんとリアルタイムで観たのになあ。
まあそんなことを言ったら、今積んでいるゲームや本を、きちんと「リアルタイム」で処理しろと言う事になるかと思いますが。積まれた物が織りなすタワーは、オタクの部屋のランドマークですよねえ……

トロイメントは原作とずれつつも、「アリスゲーム」に焦点を当ててテーマは引き継ぐ優れたアニメとなっています。
ですが、焦点が移ったことでに、非常に面白い事実が浮かび上がってきました。

「究極の少女」「完璧な少女」と言われる「アリス」になるためには、姉妹を皆殺しにしなくてはなりません。
つまり、前のエントリーで書いた主人公の悩み(成長で得るものと失うものの狭間)とパラレルに、ヒロインの真紅の側も、不死者として永遠に続く幸せなお茶会のような暮らしを捨てることを、要求されるわけです。

実に綺麗な構造ですが、一つ大きすぎる問題に気付くと思います。

つまり、真紅が、ドールズが要求されている「アリスゲーム」とは「成長」そのものであるにも関わらず、その結果得られる属性は、究極の・完璧な「少女」となっているのです。
この恐ろしいまでの矛盾!

※誉めてます。一人でスタンディングオペレーションしたいほどに。

一応、解釈は二通り可能だと思います。

1,「アリス」は成長する「人間の少女」
つまり、永遠の少女人形は、人形を越えて真の少女となる。そして成長し、やがて大人になる、と言うパターン。ドールの外見年齢が、そのままアリスゲームにおけるパワーバランスになっている辺り、あながち間違っていないと思います。

テーマとしては非常に綺麗にまとまりますが、成長し、やがて少女でなくなる存在を「完璧な少女」と呼ぶのは無理がありそうです。そもそも、アリスと言う言葉は普通、(既に元となった少女や小説の域を超えて流通して)「永遠の少女」と呼びならわされます。

ただ、ローゼンが、「永遠に幸せなあなたのお人形」ではアリスとして不完全だ、と言うのなら、そして、彼が人口生命体の創造を至上命題とした錬金術師であることを考えれば、これはこれでアリかもしれません。


2,「アリス」は「パパのお人形」
斎藤美奈子の『紅一点論』(これは本当に面白い本です)で言われている指摘そのままに、ドールズはローゼンの「可愛い娘」です。父親の存在は、主人公のジュンが「ただネジを巻いただけの人間」呼ばわりされるのとは、わけが違います。

そして、アリスゲームとは要するに、父親の愛情をめぐって姉妹が殺し合う事なわけです。そこで、姉妹への思いを優先して父の願いをないがしろにするような娘は、「完璧な少女」ではない、と言う解釈も出来るわけです。

「永遠に幸せな父親の娘」ですね。父のためなら姉妹も殺し、ジャンクになっても這い上がる…… 真っ黒な話になりますが、だからこそドラマになるでしょう。当然ラストシーンは、「もう父親など必要ない」と大見得を切って、ジュンの力で不死者ローゼンを退けるという展開が期待されます。

この解釈でこの展開をした場合、永遠に続くお茶会空間は、単なる幼年期の安全地帯ではなくなります。真紅が、少女が自分で勝ち取った場所になります。ですから、成長テーマ「捨てねばならないものと、手に入れるもの」に一つの明確な回答を出し、物語は綺麗に収束するでしょう。

ただ問題は、原作でもアニメでも、決してローゼンは歪んだ人間とは描かれない事でしょうか?(普通に考えれば、歪んでいると言う突っ込みが入らない事の方が、不自然なのですが)
ただこれにしても、ローゼンはわざとドールズを自分に背かせるためにアリスゲームを要求した、と考えると納得は行きます。フォーマット「父の背中を越えてゆけ」ですね。
アリスゲームを貫徹することではなく、アリスゲームを降りることが正解であり成長。『はてしない物語』の美しい結末を思い出させます。


とまあ、この様にワクワクしながら観たり読んだりしたせいで、新シリーズも単行本を買わざるを得ない心境に。
本当は、もう少しシリーズがたまってから読みたかったのですが、もうリアルタイムでなければ我慢できません。



さて、考察はその辺で置いておいてと。
ドールズでは真紅と翠星石の魅力が、一段抜けていると思います。
くんくん探偵の格好をした真紅の格好良さは、「血を吐きながら準備OK」と言った感じ。「可愛い」ではなく「美しい」描写で統一されているのは見事です。アンティークドールから感じるある種の威厳を考えると、大正解の描写でしょう。
また、翠星石の小悪魔的な行動など、「trick or treat!」とか言われたら、「Sir! trick一択であります! Sir!」とか、海兵隊用語で応えたくなるほど可愛らしいです。罵倒も海兵隊用語でお願いします、みたいな?

いやあ、こんな退廃的な代物がDVDなりテレビ受像器なり、はたまたネット経由で普通に観られるなんて、日本は本当にいい国ですね。
退廃とか爛熟とかって素薔薇……あわわ、素晴らしいですよね。だって、平和じゃないと絶対にできないんですから。

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