2012年10月13日

そのままだが…/劇場版まどか☆マギカ その2 「永遠の物語」 感想

ルミナス(期間生産限定アニメ盤)
ルミナス(期間生産限定アニメ盤)

↑ガンダムユニコーンみたいに、上映と同時に劇場売店でBlu-ray置けとまでは言いませんが、とても良くできているオープニングにやられてCDを買おうとした層が即入手できない生産体制は、どう考えてもおかしいですよ。


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さて、一週間はあっという間に過ぎ去り、劇場版 魔法少女まどか☆マギカ その2 「永遠の物語」の感想です。
例によって初日初回を視聴してきました。しかし、30分前に行ったら、駅ビル映画館に上がるエレベータの時点で行列が出来て整理人員が出ているとは。売れるのはよいことです。例え、映画の内容がひどい物だったとしても……

と言うわけで、結論から入りましょう。

1,作品として不細工その物。ラスト4話をつなぎ合わせただけ。問題外。
2,しかし、「商品」としては恐ろしく優秀。あざとさここに極まれり。


まずは、1の内容です。
前半であれだけの新作カットや映像差し替えがあったので、みなさん当然期待した事でしょう。しかし、後編に新作カットは数えるほど。しかも、109分という時間が示すとおり、基本的には本編映像を繋げて流しただけです。全体の再構成もされていませんから、話としての起伏・リズムは滅茶苦茶で、お世辞にも良くできているとは言いがたいです。

そもそもラスト4話は、終盤へ向けた最後の地固めとなるさやか救出作戦失敗の9話、設定の全てが明かされる単品としても成立する10話、エンディングの11・12話と言う風に、3つの大山が並び立っています。これをそのまま流してしまうと、一本の映画としては緩急が付かず意味不明になってしまいます。
一応、これを避けるために、9話ラストに新作カットを大量に入れて「起」として強調し、10話部分をエフェクトで総集編ぽく演出して「承」とするような演出を加えていますが、話の軸が違いすぎるので成功していません。原作で神がかった鋭さを見せた10話後の「コネクト」も、劇場版では蓄積がないので唐突なだけ。

まあ、元々総集編というのが残念な構成になってしまうのは仕方ないので、前編のように新作カット等で楽しめればいいだろう、と言う意見もあるでしょう。ところが、これがまるで成功しておらず、またファンが望んだであろうツボは見事に外されています。

どう言うことかというと、一番大きな追加部分である9話ラストのシーンは大失敗しています。ここで、ほむらとキュゥべえの会話がほむらの部屋からよく解らない墓地に変わっているのですが、画面構成上原作の「ほむらの部屋にキュゥべえが押しかけてきて語る」ではなく、「キュゥべえを捜し出してほむらが問い詰める」と言う風に変わっています。これは、意味が無いどころか有害で、絶望的な状況下でそれでも歯を食いしばって耐えているほむらにキュゥべえが追い打ちをかけに来る、と言うシーンの意味を失わせています。(従来の形式であればこそ、あのセリフ「無理に決まってるじゃないか」が効いていたのです)

何より、わざとらしい荒れた墓場は演出意図がよく解らず、「都会の闇で戦うやさぐれた魔法少女」と言う基本イメージを崩してしまっています。と言うか、シーン自体が非常に冗長。10話冒頭部分に追加された教室のシーンと合わせて、短い時間で一気に話を転がしていった原作の切れ味を失わせています。
こう言う演出変更が難しいのは解るのですが、前編で指摘した高架道路のシーンなどと合わせ、大失敗と言って良いと思います。
ニュータイプのインタビューによると、シャフトは総集編の経験がほとんどないようなので、仕方ないのでしょう。逆に、今後この経験を活かしてスキルアップして行けば、より注目株の製作会社になると思います。

逆に、総集編で追加、と聞いた時多くのファンが期待したであろうほむらループの追加描写は、驚くべき事に一切無し。細かな画面のブラッシュアップやエフェクトの追加はありましたが、描かれるループは原作10話に出てきたもののみです。確かにあそこにゴテゴテ付け足すのは切れ味を失わせるのですが、ちょっとした日常シーンやアクションをテンポを崩さない範囲で加えるだけで、視聴者の満足度は大幅に上がったはず。何故一番のツボを外してくるのか、理解に苦しみます。

一応良かったところも指摘しておくと、ラストシーン近く、謎空間で抱き合うほむらとまどかは、原作の全裸からオープニングに出てきたワンピースに変わっています。(どちらにせよシルエットですが)
原作の全裸は演出意図が不明で、戦い抜いた魔法少女服か、あるいは一個人に戻っての私服が良かったのではないかと思ったものです。(と言うか、イデオンじゃ有るまいし…… と言うね)裸は映像のインパクトが大きいので、視聴者の気を散らしてしまいますから。(お色気シーンが悪いと言っているわけではありません。水着も裸もウェルカムですが、シリアスシーンに意味なく突っ込まれると違和感が先に立ってしまう、と言う事です。大体、エロさで言ったらふわふわしたワンピースで微妙に胸が強調されていたり居なかったりするオープニングのまどかさんの方が、謎エフェクト全裸より余程エロティックです)
閑話休題、涅槃(?)で微笑むオープニングの二人と合わせて、魔法少女でもなく制服でもない、個人的な友人同士と言うのを強調する「揃いのワンピース」は、良い視覚効果を出していたと思います。エフェクトでワンピースが隠れてる意味は、よく解りませんが。


と言うわけで、全くもって誉められた内容ではなく、「要するに、本編を大スクリーンで見られると言う以上の意味は無いな。これで正規料金かよKSG!」とか思いつつ視聴を終えかかったわけです。一言「読めねえよ!」と言うしかない魔女文字で書かれたスタッフロールも、「今回は背景ないの!?」と言いたくなったエンディング(「ひかりふる」の流れる方)にも、気持ちが冷えるばかりでしたから。


ところが、です。「なんか灯りがつくの遅いけど、まだなんかあんの?」と思っていたところに流れた来年の新作映画予告編が、もの凄いできが良いのですよ。
ここまで本編やBlu-rayで見飽きた映像ばかりだったところに、思わせぶりなワードや設定の片鱗を散りばめ、内容を予想させつつ激しいアクションで画面を揺さぶってみせる。正統派の映画予告編で、もの凄い勢いで期待感を煽られ、本編の不満が吹っ飛んでしまいました。実にあざとい手法で、作品としての誠実さは下の下になるんですが、間違いなく観客は一定の満足を得て映画館を後にしたはずです。終わった後、周囲から聞こえてくる感想も、本編ではなく予告編に集中していましたし。

と言うわけで、このまどか☆マギカ劇場版後編は、ファンにとっては余り見に行く価値のない作品です。お布施と割り切って見に行くか、Blu-ray等を持っておらず久しぶりに本編が見たい/話題になっていた作品を見てみたい、と言った理由なら、足を運ぶ価値はあるでしょう。
ただ、あざとい手法で終わった後の満足度は一定程度得られますし、期待を煽る予告編が見られれば満足というファンは相当数居るはずなので、「映画作品としての不出来さとは別に」決してお勧めできない代物ではありません。
歯切れの悪い話になりますが、以上が感想となります。それにしても、Blu-rayが出ても、買うのは躊躇ってしまいますねえ。本編のBlu-rayを持っていれば、同じなわけですから。




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この記事へのコメント
おっしゃるとおり、ほぼ原作をつなぎ合わせただけのものでしたね。個人的にはリボンほむらの髪型を漫画版のツインテールにしてみるとか一工夫してくれれば、印象も結構変わったと思うんですけどね・・・。

後、本編でルミナスとコネクトでOPが2回流れましたが、あれって前者をカットして原作10話に該当する部分終了後に初めてOPとしてコネクトを流せばよかったのでは?と思ってます。私は映画版が初見の人と一緒に見に行ったのですが、「なんでOPが2回も流れたの?」と素朴な疑問をされてしまい答えに窮してしまいました。

OP曲が計3回も流れて、その後エンディング曲が流れるというのはかなりテンポが悪いように感じました。本編をまんまつなぎ合わせても尺が足りなかった、ということでしょうか・・・。

そして、見飽きた本編の後だからこそ予告編の衝撃はなかなかのものでした。予告編だけもう一回みるために再度劇場に足を運ぼうかと思ってしまうあたり、相手の商売の仕方がうまいのか、それとも、私が立派に洗脳され信者となってしまったのか、議論の分かれるところです。
Posted by 名無し at 2012年10月14日 02:07
前編が良かっただけに残念でしたね…。
ただこれで確信したのですが原作のTVシリーズはやはりTVアニメとして最高クラスの完成度だったんですね。
毎週の、特にラスト4話のような独立した山場を次回までの一週間を利用することによって無理なく繋げ、本来独立したエピソードで成り立っているまどかという物語を一本の筋が通った物語にしている。これによってさながらジェットコースターのようなスリリングな気持ちを味わえたわけですね。
今回の映画の残念さはこのTVアニメならではの間のとり方の手法を映画でそのまま使ってしまったことに原因があると思います。
勿論演出が豪華に成りすぎて失敗したシーンも多々あってそっちも気になるのですがやはり今回の映画は間のとり方が壊滅的に下手で全体的にブツ切りになってる感がすごくありましたね。唐突なコネクトに代表される謎演出は間を取ろう、繋げようとしてやってしまった失敗なのだと思います。やっぱり映画化は難しいんだなと痛感しました。
劇場版としては残念でしたがTVシリーズの良さが再発見できたので結果的には良かったと思いました。
Posted by ふぇるみーた at 2012年10月14日 16:13
再構成するなら、9話で切って、後半を完全にほむら視点にする位じゃないと、まとまらないのでしょうね。
ただ、ご指摘のとおりOPの流し方とか単純に演出が死んでいると言う問題もあり、2時間映画の経験不足もあるのかなあ、と思ったり。
とりあえずその辺の評価は、来年の新作映画を観た上で、となるでしょうが。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年10月15日 17:58
TVシリーズには無い、映画だけの、まどかのある言葉に気付きましたか?
偉そうにレビューするなら、せめてそれくらいには触れてほしかったですね。
いくつかあなたのレビューを見させてもらいましたが、どれもこれもガッカリでした。無駄になった時間を返してほしいですね。
Posted by mn at 2013年05月27日 18:45
12話最後のまどかとほむらの抱擁シーンですが、ああやって裸になって色々相手の事を分かり合う演出ってなんか結構あったような気がします。
自分はあのシーンが裸である事に意味を見出してます。
裸とは?要は生まれたままの姿であり、何もないという事です。
つまり、まどかが裸で消える事によって、その本当に消えてしまうんだという切なさがあったのではと思います。
Posted by 通りすがり at 2014年02月11日 23:41
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