2012年11月06日

紛う方無きゴミ映画 「009 RE:CYBORG」感想





なんか、原作が好きな友人によりますと、初期はさすがに古すぎて辛いので、原作は中盤くらいから読むと良いらしいですよ。



ここのところ立て続けにゴミ映画を引いてうんざりしていたわけですが、またやってしまいました。

「009 RE:CYBORG」は、現代を舞台にした009の続編、と言う位置づけになります。原作は未完で終わっていますが多くのバラバラなエピソードがありますから、そんな断章の一編という扱いでしょう。

なお私、原作は昔読破しようとしたものの、序盤の古くさい絵と展開に耐えきれず投げてしまったため、原作との比較などはできません。



でまあ、いつもの通り結論から書いていきます。
ほんとうに良い部分が見あたらない映画だったので、ただの欠点羅列ですが。


1,上滑りする上に意味不明の演出
2,まとめる気もない滅茶苦茶なシナリオライン
3,上滑り以前に形を為していない脚本


まず1ですが、実はこれはぶっ壊れたシナリオの副産物ですので、軽くふれるだけにします。
とにもかくにも、シーンを盛り上げるギミックとして演出がまるで機能しません。大仰に出て来る癖に特に意味のない白い少女、全く意味のない事が最初から解っているのに派手に盛り上げようとする(当然見ている側は白けるだけの)冒頭の009 VS 005の格闘、本当にどうでも良いシーンで無意味に使われる003の能力描写……
一体何がやりたいのか解らないシーンが延々と続く映画なので仕方ないのですが、冗談ではなく眠くなってきます。と言うか、ドバイに核が落ちる前後で見事に数分意識が飛びました。リメイクのトータルリコールですら、耐えられたんですが。

でまあ、やはり問題はシナリオなわけです。
そもそも、アクション映画というのは「殴る相手を割り出す」「殴る方法を見つける」「ぶん殴る」が基本的な展開です。ところがこの映画では、殴る相手はそもそも存在せず、殴ったら気持ちいい相手(悪役)は存在するのにぶん殴れず、そもそも殴るつもりがあるのかもわかりません。
代わりに突っ込まれるのは、聖書もどき(あのバベルの塔に関すると思われた聖句が、本当にただの「もどき」だったことが解った時の衝撃と言ったら!)のクソ下らない精神論。その災害が何故今起きたのかとか、そもそもどうやったら止められるのかと言った基本的な設定は、全て吹っ飛ばされています。

これは、冗談や嫌味ではありません。ラストのSLBMは一連の災害の一コマでしかなく、あれを防いだところで次が起きるだけの、単なる戦術的局面です。(むしろジェットと009の会話で、あれを止めたら災害が止まるかもしれないと考えているらしき内容が出てきて驚きました。そんな根拠、何もないでしょ?)そして、災害を広げたと思しき会社や政府に対しては、最後までスルー。手も出しません。
あげく、「敵」の存在や正体・目的については、セルフ自己啓発セミナーで悟ってしまった主人公が特に根拠のない能書きを垂れているだけで、一切解決しません。前にもどこかで書いたと思うのですが、登場人物がたどり着いた「真実」を「事実」として作品中で運用したいなら、相応の展開が必要なんですよ。典型的には、過去の映像を幻視させたり、その話を聞いた他の登場人物がそれが正しい、と補強してみせるなどの方法です。ところが、この作品はそれを行わないため、頭のおかしい連中が頭のおかしいやりとりをしているだけ、としか言いようのない異様な雰囲気となっています。


で、この辺で3に移ると、つまるところ脚本が死んでいるのです。
全ての重要な情報は、中身のない長ゼリフと小学校の討論かと見まごうような論拠レスの抽象論開陳に終始し、映像的な演出もそれを暴くためのエキサイティングな展開も出てきません。

そもそも、冒頭で009と博士が合流したシーンからして、突然博士がアメリカ陰謀論をぶち上げ始めると言う頭の痛くなる展開でしたね。別に陰謀論をベースとするのは一向に構わないんですが(面白いエンターテイメントのパターンの一つですから)、その論拠を一切述べないところが終わっているのです。
例えば、議会があの計画にGOサインを出したという証拠として何かの会議の盗聴記録を聞かせるとか、資金の流れがどうこう言うそれっぽいチャートを見せるとか、色々有るでしょうに。おかげで始まってしばらくは、博士が黒幕なのだと思っていました。ジェットが「疑心暗鬼になっているのは大統領だけではない」みたいな事を言ってましたし。(ちなみに、あのセリフも伏線でも何でもありませんでしたね)

また、サイボーグであることがアイデンティティである各キャラクターの能力演出は、ダメさの最たる物。006はまだ良いのですが、004の指マシンガンがアサルトライフルを跳ね返すケルベロス(偽)に通用する事を強調・理屈付けせず、フランソワーズをオペレーターとして再編成しながらまるで役立てない。ジェロニモなんて、ありゃ怪力じゃなくて防弾筋肉ですよね?
いくらでもあったはずなんですよ。財団強襲シーンで、クラッキングでオスプレイ(しかしまあ、やっぱりあの機体は格好良いですね。見た目が未来的「悪役面」なのがはまっています)の2~3機たたき落とすとか。また、最後の作戦にしても、フランソワーズの計算能力があったから、SLBMをボコボコたたき落とせた、と言う話なんですよね?そうでなければ、わざわざ艦を乗っ取る理由もないわけですから。

特別な能力を持っている連中が、その力を駆使して共通の敵に立ち向かう。そんな王道のシナリオで、よくあそこまでいい加減な描写に出来たものだと、逆に感心します。

そして、「君はどこに落ちたい?」をやりたかったのかやりたくなかったのかよく解らないラストについては、もう……
あの、ジェットが009を拾う理由って、何もないですよね?009を拾っても帰還できるわけではなく、むしろ成功率が下がるだけ。(届かなかったのは、質量が2倍になったからですよね?)009の最後のセリフも意味不明で、陳腐を絵に書き思わせぶりにしとけば高尚にみえるだろうという低劣な意識が透けてみえるエピローグになだれ込む展開に、血管が切れそうになりました。
座っていたのが通路から離れた席でなければ、スタッフロールが始まる前に席を立っていたかも知れないところです。

と言うわけで、かけられた予算の大きさが逆に怒りをかき立てる見事な駄作でしたので、余程原作に思い入れがあり、どのようなものであれ関連作を見るという決意を固めた方以外は、絶対にお勧めいたしません。

とりあえず、この胸くそ悪いムカムカは、来週のEVAQが払底してくれる事を祈る事にします。




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この記事へのコメント
やっぱ駄作でしたか
もともと009は押井がやるはずだったものを神山健治が途中で変わった感じなんだけどさ
押井と神山作品で評価してるのありますか?
Posted by 人はおおむね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり生きたりすることに飽きないことだ。 at 2012年11月10日 14:32
攻殻は原作が苦手でアニメを一切見ていないので、神山さんについてはなんとも。
ビューティフルドリーマーやパトレイバーは、原作に対して筋は通した上で娯楽作品として完成度が高いので好きですよ。
逆にアヴァロン等のまとめる気も楽しませる気もない代物については、ため息しか出ません。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年11月10日 22:14
 はじめまして。
 コメントを書くのは初めてですけど、以前より拝見しておりました。

 009は好きだったので、今回の映画の評価は、少し残念です。

 ところで、本文中に

>ジェロニモなんて、ありゃ怪力じゃなくて防弾筋肉ですよね?

 と、書かれていますが、005の能力は「銃弾も弾き返す強靭な肉体」と「怪力」です。
 映画を見ていないので断言は出来ませんが、005が「俺の怪力を見せてやる」と言うような台詞を言っていない限り、特に問題が無いように思えます。

 後、009の導入としては、私は平成アニメ版をお勧めいたします。
 中期~後期の石森絵を意識したキャラクターデザインで、比較的原作に近い物語が進むので、もし、まだ009に触れてみたいと思っていらっしゃるなら、是非、ご覧下さい。

 それでは、失礼致します。
Posted by 結晶 at 2012年11月15日 19:46
>結晶さん

あ、防弾筋肉は別口なのですか。
一応、言いたかったことは、折角の怪力設定を画面上で全然活かせていないと言う事です。ケルベロスが派手に砕けるわけでも、壁をぶち破って奇襲するでも無く、描写としては「弾が効かないから強い」だけで、とても退屈なシーンになっていました。
せめて、彼の見せ場を防衛戦ではなく攻略戦にすれば、イージス艦内を壁ぶち破って進むとか、非破壊オブジェクト満載の空間で格闘戦とか、色々できたと思うのですが。

平成アニメは、機会があったら見てみようかと思います。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年11月15日 22:21
確かにあれは酷そうですね。
幼い時平成アニメを全部見てたのであれは受け付けられないです…
Posted by 無名 at 2015年08月01日 02:29
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