2012年11月17日

また逃げるのですね 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」 感想

Shiro SAGISU Music from“EVANGELION 3.0”YOU CAN(NOT)REDO.
Shiro SAGISU Music from“EVANGELION 3.0”YOU CAN(NOT)REDO.

↑前作「破」(当BLOGの感想はこちら)と違って、サントラどころかBlu-rayすら買う気は起きませんね。



気がつけば瞬く間に三年が過ぎ去り、ヱヴァンゲリオンも映画三作目の公開と相成りました。
いやあ、本当に期待してたんですよ。上記感想のとおり、破は本当に面白かったですから。だからこそ、予約開始日に、公式サイトが落ちていることを確認するや強引に劇場窓口に駆けつけ、初回の切符を確保する程度には諸々を犠牲にして鑑賞したのです。

しかし、内容は本当にどうしようもない物であり、最悪の気分で劇場を出ることになりました。旧劇場版で学んだ「映画は一人で観に行くな。大外れしたときに、誰かと語り合えれば最悪の気分が楽しさに転化できる」と言う教訓を、何故私は忘れていたのでしょう?

でまあ、一応例によって最初にポイントを書いておきますか。


1,脚本が視聴者を放置上等。と言うか、どこで楽しませたかったのか?
2,アクション映画として全くなっていない。
3,異常なまでに画面が安いのですが、一体何事?


はい、では最初から。
今回の話には、盛り上がり所がありません。最初こそ、訳の解らない状況に叩き込まれたシンジ君にシンクロしてドキドキするのですが、出てくる真相は安っぽいか意味不明かそもそも説明されないかの3パターン(複数選択)。そもそも破のラストから繋がっているのかも不明確な上に、予告編の存在は完全になかったことになっており、気分はどんどん盛り下がっていきます。

大体、14年後と言っておいて、まず視聴者が一番気になる「では世界はどうなっているのか」をまるで提示しないままピアノの練習が続くシーンなど、「引き延ばしは予告編だけにしろよ」と、ウンザリした気分になりました。
崩壊したネルフ本部や戦闘時の不思議世界描写は伏線ぽいものの、後述しますが単なる手抜きにも見え、推理を働かせると言った方向に思考を向かわせるには余りに不十分。そして、一番大きな話の流れは、勝手に思い込んで暴走したシンジが勝手に落ち込んでTV版のような根暗に落っこちるという、躁鬱病患者の病態観察みたいな代物で、全く盛り上がりません。

大体、一番気合の入ったクライマックスの戦闘が、明らかにやっちゃあかん事をやっているシンジをアスカ&マリが止めようとすると言う、まるで燃えないシチュエーション。いやまあ、その後の宇宙戦艦(ありゃあ世界から浮きすぎて笑えません)防衛戦も、翼の上でせせこましい格闘戦経由自爆テロ。楽しくないんですよ。
あげくが、破であれだけ主人公ぶりを見せつけ、視聴者に「ああ、これなら、前作のようなどうしようもないラストを回避してくれるだろう」思わせたシンジ君があんなになってしまい、ひたすら視聴者の心にストレスをかけたまま物語は終わります。今回唯一信頼した相手にやめろって言われてるんだから、槍抜くなよ!
それ以前に、各組織の目的だったり、バックだったり、基本的な部分がすっ飛ばされていて、終始何がやりたいのか不明。例えば、ネルフはあんな廃墟にあるのになんでミサト達に襲撃されないのかとか、何故シンジは14年も寝てたのかとか、鈴原がどうこう言ってるけど世界の他はどうなってるのかとか、すっ飛ばしすぎていて雰囲気で掴むしかないのも辛いところ。
つまるところ、それっぽい単語をばらまいて煙に巻き、アクション映画として物語を完結させられず視聴者相手に逆ギレした、旧劇の失敗をなぞっているわけです。要するに、「逃げ」でしょう。

いや本当、これ面白いと思って作ったんですかね?破の面白さ・サービス精神ってなんだったんでしょうか?ま~た、根性の腐れっぷりを発揮して、視聴者をシメにかかったとしか思えない迷走ぶりです。


で、2。
前作はアクションとアクションの間をドラマでつなぎつつ、段階を踏んでシナリオも戦闘も盛り上げて行くという、何かの手本のような作品でした。
しかし今回は、冒頭の戦闘こそ盛り上がる物の、以後はしょんぼり。シチュエーションを用意したように見えて、宇宙戦艦でクラゲを釣るとか、棒立ち機体がファンネルを振り回すとか、絵面が残念な物ばかりです。また、中盤は全くアクションがありませんし、そもそもクライマックスが盛り上がる内容でないのは前述の通り。
空挺降下の遭遇戦だの防衛都市機能をフル活用した迎撃戦だの、最強の敵相手の絶望的な特攻各個撃破(される側)だのと多彩で飽きさせないシーンを連発した前作から、余りに劣化しています。

と言うか、なんかやってるのが形而上の概念的闘争で、アクションで相手をぶん殴ることの快感・それで物語が動くダイナミズムが欠如してるんですよ。だから、アクション映画としては失格です。そもそもアクション映画じゃないという話については、破が人気が出たのはアクション映画として凄くできが良かったからだよ、と言う指摘に留めます。


そして最後なんですが、なんであんなに安っぽいんですか?
もう飽き飽きした地獄絵モドキのセカイ描写もそうですし、動かない絵・白い壁と青い空ばっかりの背景。極めつけは、どう見てもブルースクリーンの背景の中で、エヴァが格ゲーのデモのような見飽きた動きをしている予告編。3年間の歳月と豊富な予算をかけたようにはまるで見えず、一体何事かと額に縦皺が寄りました。多分細かいところに多くの技術が投入されているのでしょうが、本来一番派手にやるべき世界崩壊のシーンを、事もあろうに巨神兵東京に現るで代用するクソっぷり。(あの併映ってそう言う事ですよね?)
また、序や破で多く見られた、ネルフという巨大な組織が動いていることを描写するモブや設備への執拗な描写は全くなく、主人公の周囲から少しでも離れると世界が存在するのかも解らない、正にセカイ系。あの崩壊ネルフで働いてる人間は居るのかとか、いるとしてそいつ等はなんであの狂ったおっさん達について行ってるのかとか、余りに細部を蔑ろにしています。

何かもう、期待していただけに心の底からガッカリしました。こんどはきちんと描ききってくれるんじゃないかと思っていたんですが、結局の所「仮釈放中の元サイコパス」と言う監督に対する評価が正しかったことになりそうで、残念至極。ヱヴァ新劇をやりきったあとであれば、またやらかしても「でも、ヱヴァは結局ちゃんと完結させたしね」と言う扱いになったはずなんですが、まあ……



あ、そうそう。一応公正を期すために言うと、雰囲気はTV版後半・旧劇の雰囲気にかなり近いので、そっちを好きな人にはむしろウェルカムかもしれません。
私は上記の通りですが。




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この記事へのコメント
こちらも観てきました。
正直細部までは理解が及ばなかったんですが、
シンジ(庵野さんの言う駄目な視聴者)を四作かけて前に進ませよう、というコンセプトだけは見えたので
エンタメ的にはともかくシンジの物語としてはとりあえず次回待ちかなというくらいには期待を持てる出来だったと思います。
最後にSDATを落としたのも、自分に閉じこもる手段からの決別の暗示でしょうし。
ただ最後に綾波があれを見つめてたことを考えると、最終的に綾波自身が(オリジナルか2人目かは知りませんが)
シンジにとっての幼年期の象徴となりそうで、完結編ではシンジが綾波と自分の意思で別れることになるかもしれないと勝手に思ってます。

しかし……単純な面白さとして、破はともかくテレビ版にも劣っていた気がするのは否めないかな、と。
Posted by あらさー at 2012年11月17日 15:04
個人的には始終ドキドキしっぱなし
振り回されまくりで結構おもしろかったですね。

もやもやが凄いので、エンタメ性は前作に及びませんがね。

ただ、作品がつまらんということは感想ですけど
それで作り手の在り方を疑ってかかるのは感想ではなく傲慢ですね。
感想は己の感性によるものであって、それが個々に根ざす以上一般性の欠如した代物です。
それを根拠に他人の人間性を疑い、中傷的な呼称を書くのであれば、それは幼稚に過ぎる行為です。
Posted by すなすけ at 2012年11月17日 17:19
むしろシンジの「????」という状況と視聴者の理解不能な状況を
うまくシンクロさせた点でとても評価できると思うのですが?

確かにホモォが長すぎるので中盤はダレましたが、
面白さという点では「考えがあって欝展開」という方向性が見え
決して逃げではないように感じましたが。

というかですね、TV版のラストでも私はとてもガイナックス的で
評価していたのに、逃げとかなんとか言われて悲しんだ記憶が。

後は、面白くない=監督の人間性が悪い、という結論は
批評家としては最低では?

旧作新作通じて、結局「破」が一番異端なんだなぁと思ったお話でした。
Posted by 名無し@ニュースにちゃんねる at 2012年11月17日 19:57
期待して楽しみにしてやって来た観客に、唾吐きかけて人格否定してのけた監督の人間性を、誉めろって方が無理ですがな……
と言う話は置いておいて、どうも誤解というか伝わってない人が多そうなんで一応補足。

「仮釈放中の元サイコパス」

ってのは、十数年前にあれだけの事をやらかした監督が、今回は娯楽作品として筋の通った物を作っていた、その様子を表したたとえ話ですんでね。
保護監察とか終わるまで油断できないとか、散々言われてたでしょう。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年11月17日 20:16
2chに以下のような書き込みがありました。

次世代(トウジの妹=当時の妹ぐらいの世代)が見ると考えてリメイクしたら、前世代のおまえらが(エヴァの呪縛でまるで成長してない)食いついてきた
庵野がこいつらいいとししてコレはあかんわと、元々考えてた当たり障り無いシナリオに大きくテコ入れして、おまえらを皮肉ろうとした結果がQという事ね

管理人様のレビューを鑑みるに、あながち間違ってないかもしれませんね。
Posted by sd at 2012年11月17日 23:23
>sdさん

14年間で変わっていないファンを云々は良く見る解釈なんですが、むしろQで露呈したのは余りに成長していない監督の姿だと思うんですよね。
結局エヴァ以上の物を作れずに決別したはずの作品に回帰し、娯楽作としてきちんと完成させられるかと思えば、旧態依然で古くさいセカイ系に回帰してしまう。
皮肉のつもりだとしたら、これほど皮肉な話はないと思います。
Posted by snow-windsnow-wind at 2012年11月18日 00:24
コメント返信ありがとうございます。

考察なんかでは、Qは序の前のループの話だというのがありました。破のラストでカヲルが初号機を止められなかったら、という話だそうです。

これなら、カヲルの「今度こそ幸せにしてみせる」という発言が合いますし、破とつじつまが合わないところ(特に破の最後の槍に貫かれたのが変わってる所とか、破のラストから考えて、Qのニアサードインパクトの被害はあまりにも大きすぎるところとか)も一応説明がつくような。

ただ、記事でも指摘されている通り、空白の14年間の説明が皆無なので、空想の域をでないわけでありますが。

本作が4作目を盛り上げるためのあえての旧劇回帰なら、むしろ14年前のテイストをここまで再現できたと評価する所なのですが、そうだとしてもやはり単体の映画としての出来という観点では、つらい評価をつけざるを得ませんね。
Posted by sd at 2012年11月18日 19:01
震災で変更したらしいですね
庵野監督は普通に演出とか映像はイケてるんですけど
ちょっと頭のピントがずれてるから(宮崎駿もそう
変な社会理解のうえでああいうものを作っちゃったって感じでしょうか

でもこのカオス感がエヴァって感じもして少し嬉しい
Posted by なんか at 2012年11月18日 20:40
初めまして。

破はあれだけエンタメしていたのに、Qでテレビ版のゼルエル戦後~カヲルの首チョンパまでの陰鬱で破綻していく物語を律儀に繰り返していて驚きました。

例えば、
冒頭で回収されたシンジがアスカ・マリと共に、建造中の戦艦をネルフの攻撃から守り抜き、完成とともにネルフに逆侵攻し、人の生命・尊厳を踏み躙っても過去のやり直しを求めるゲンドウ・カヲルを打ち破る――
といったエンターテイメントにすることはできたでしょうに、敢えて避けたとしか思えません。

私だけしか理解してあげられないダメ男(旧劇)が朗らかな人気者(破)になって寂しさを感じていたら、また元のダメ男(Q)に戻ってほっとしたような気分です(笑

完結編は破と同じ最高のエンターテイメントを目指して大団円として作られると予想しているので、今は安心してダメさを愛でられるのかもしれません。
Posted by 旧劇好き at 2012年11月19日 01:03
はじめまして。
出てきた専門用語が全く説明されないなど、ある意味エヴァらしいポイントが多くなってましたところは良くなかったですね。正直あと一作で全部まとめれる気はしない。アクションパートが見どころ不足というのも同意です。


ただ破の終盤の視野狭窄したシンジに突っ込みが入ったのは予想に反して良かったですね。正直何も考えず吠えて叫んで世界を滅ぼしかけた幼児退行者にしか見えず激萎えした部分でしたので…これなら最終作では本当の意味で”成長した”主人公になるのではと、その部分にだけは期待が持てました。
Posted by 根無し at 2012年11月20日 05:26
なぜエヴァではなくヱヴァなのか考えたことありますか?
あなたのレビューは上っ面ばかりの他人面ばかりで、何ひとつ面白くないのですよ。エヴァが繰り返しの物語だということも気付いていないし、自分が皮肉られていることをまだ他人事のように言っている。
いつまで呪縛に囚われているのですか?本当に逃げているのはヱヴァじゃなく、あなたですよ?いい加減自覚しなさいな。
Posted by mn at 2013年05月27日 18:37
↑と、いまだにエヴァにとらわれてるキモオタおっさんが申しておりますw
Posted by nanasi at 2013年06月08日 00:44
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