2012年12月11日

良質ショートショート 『独創短編シリーズ 野﨑まど劇場』 感想

独創短編シリーズ 野﨑まど劇場 (電撃文庫)
独創短編シリーズ 野﨑まど劇場 (電撃文庫)


野﨑まど(常用外漢字のためか、ネット書店だと「野崎まど」)は、メディアワークス文庫で変わった小説ばかり書いている作家です。基本的に、適度に関節を外したユーモアと堅実な文章・展開、そしてラストの超展開が毎回のお約束でしょうか?
オチで頭を抱えながら、「いや、SFマガジンで紹介されていたことを思えば……」と唸る羽目になった死なない生徒殺人事件小説家の作り方が典型ですが、一方ksmrの表紙が釣りになりきれず「お約束」に落とし込む過程で安っぽさを拭えなかったパーフェクトフレンド
などを見ると、色々方向性を試そうとしている物と解釈して「注目」カテゴリに放り込んであった作家です。

そして今回の「野﨑まど劇場」ですが、これは電撃magazineの連載に書き下ろしと没原稿を合わせたショートショート集です。上記のように、方向性の幅が広がると面白く成りそうだと思っていたので、本屋で見かけて即購入しました。

そして内容ですが、本当にバラバラ。「ああ、こう言うのSF作家は好きだよね」と言いながらやや目線を逸らしたくなる冒頭の『Gunfight at the deadman city』に始まり、「これ没の理由は『SFだから』じゃないだろう」と言いたくなる『ビームサーベル航海記』なんかが外れの部類。イラストは釣りだろうと思ったら、一周回ってもの凄く最近のラノベっぽくなった『森のおんがく団』や、ネタとしてはGunfight~と同じ方向なのに話芸で魅せる『苛烈、ラーメン戦争』が当たりの部類。同じ没作でも、オチを二段構えにした所が上手くもあり瑕疵にもなっている(部分的に同じネタを二度繰り返しているため)『第二十回落雷小説大賞 選評』や、よく解らないラノベ的変化球を外すと本当にビックコミックで読み切りで違和感のない(編集者がそう言う風に書いてます)『魔法小料理屋女将 駒乃美すゞ』など、色々な試行が一定の効果を上げており、読み応えがありました。あ、ショートショート集なので、読破所要時間は極めて短くその意味では読み応えはありません。

なお、没小説では「そのネタ絶対電撃向けじゃねえよ」感が題名からにじみ出る『電撃妖精作戦』の妹キャラが素晴らしいので、是非スピンオフで小説を書くべきです。自称硬派SFファンで、本棚でイーガンの後ろにデュラララを隠している腐女子という設定は、ごく狭い範囲のファンを獲得できると断言しましょう。
でも、それなら頭の中の妄想は普通のじゃなくて、ディック×ハインライン(ヘタレ攻め)とかであるべきじゃなかったかと思います。(参考資料:作家の項)

とまあ、玉石混淆は短編集の常なので気にならず、むしろ変わった石と楽しい玉の混在する、良質なショートショートでした。この調子で、色々な作品を物にしていって欲しいと思います。


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