2013年01月15日

ひどい映画だなあ 『ホビット 思いがけない冒険』 感想




↑BLOG主が小学校六年生時に読んで本当に面白かった原作は、今でも十二分に通用する内容です。

今回前置きがやたら長くなったので、時間のない人は、スクロールして箇条書きで結論書いてる部分から読むと良いと思います。

日本語が眠すぎて何度読んでも2巻か3巻で挫折する「指輪物語」(問題は架空民俗学ではないのです。あれは普通に好きです。内容自体の日本語訳がひどすぎるのです)と違って、「ホビットの冒険」は本当に楽しかった読書体験として記憶に残っています。
今でも鮮明に覚えていますが、小学校六年生ともなれば、いっぱしの読書家気取りの少年は図書室の本など馬鹿にして読まない物です。とは言え、丁度手元の本が切れて図書室の物を手に取らざるを得ないタイミングもあるわけです。そこで、「でかくて字の細かい本の中で、一番巻末の推奨年齢が高かった」という、実に中二病な理由で手に取ったのがこれ。ところが、昼休みに適当に眺めたら馬鹿にしつつ棚に戻そうと思っていたのと裏腹に見事引き込まれ、結局借りて帰って一晩で読破した物です。

さて、そう言うわけですので、この作品の映画化は観に行かざるを得ません。同じ理由で観に行ったナルニア国物語ってのもあったわけですが、ほら、あれはもう最終巻の宗教臭さが、小学生段階でアウトだったわけですよ。「アスラン万能ならちゃんと全員救えよ!主人公達必要ねえだろ」と、一神教に対するツッコミが有効に機能しちゃうわけじゃないですか。ついでに戦記物を絶対にやらせちゃ行けないディズニー(人死なない・血が出ない・「汚さ」の描写ができない)でしたから、失敗の前例とは考えなかったわけです。
ちなみに、ロード・オブ・ザ・リングは見てません。有名な小説が原作の作品は、原作を読んでからしか見ない主義なんです。

と言うわけで、期待に胸膨らませて映画館に出かけたのですが、ウンザリした表情で映画館を後にしました。

とりあえず最初に、私の感想に影響を与えたかも知れない因子を。
正月で東京にいたので新宿ピカデリーで観たのですが、これが最悪。学生の親戚と観に行ったのですが、事前にチケットを買っておこうとしたら「学生証がないから売れない」となめた事を言われたのです。何だ当たり前じゃないか、と思ったあなたの疑問は当然。実は、あの映画館は、「入場時」に学生証・身分証(シニアの場合など)の提示を求めるのです。飲み物などを抱えて両手がふさがっている観客が身分証が出せず、入口で渋滞が起きるというのがいつもの光景で、来る度にウンザリしていたシステムです。当然、そこで確認するのに何故購入時に必要なんだと言った物の、「入場時に身分証を確認することはない」「システムが変わったわけでもない」と強弁されて、引き下がらざるを得ませんでした。事前に買っておかないと、全席指定なので隅に追いやられるんですよね。
そして、当然のごとく、入場時には親戚が身分証を要求されたわけで……

本当に、あの映画館はクソだと思います。

ただでさえ、馬鹿長くて狭いエスカレータでの移動、座れる場所が極端に少ない上に狭苦しいロビー、お馬鹿な発券機(開館からこれだけ経って、券が詰まるとかタッチパネルが効かないとか言うトラブルが頻発するなら、納入会社変えた方がいいと思いますよ)、と不満が蓄積してる状態なので、やっぱりバルト9にしておけば良かった!いやまあ、親戚の時間の都合だったので仕方ないのですが。

さて、そう言うわけで映画その物に対する印象が必要以上に悪くなっている可能性がありますが、結論から。


1,不要なシーンは削ろう
2,シナリオに緩急を付けよう
3,企画段階から見直そう

ボロクソですが、撤回する気はありません。もう、ファンタジーに敬意を表してTRPG感覚で視聴しながら「俺がPLなら、こんな行動あるか!」「マスター、もちっと真面目にシナリオ組めや!」とイライラするレベルでしたから。

まず1ですが、そもそも原作は、3時間×3本などと言う超大作映画にする必要のあるような長編ではありません。所詮ハードカバー一冊分です。と言うか、ミュージカルシーンが時間を食う「レ・ミゼラブル」が一本の映画に収まっているのに、これがこんなに肥大化する意味が解りません。
とにもかくにも、無駄なシーンが多すぎます。最初のドワーフの下品さを長々と見せて観客を苛つかせるだけのシーン然り、直後に目的が喪失(結局馬失ってるじゃん)するトロールのシーケンス然り、全く意味のなかったお宝発掘シーン然りです。ついでに、無理矢理「指輪物語の前史」であることを強調したが為に、長々と時間を取っている茶の魔法使いやエルフの谷のシーンなども基本的に不要。そもそもホビットは指輪物語とは無関係に成立していますから、前史であることを強調するにしても要所要所でのカット強調で良かったはずです。
原作どおりだから、と言ったって、岩巨人なんぞシナリオ上全く意味がありませんし、逆に凄く印象的な「お誕生日のプレゼント」と言うワードをすっ飛ばして狂気演出を弱めていたりと、首尾一貫しません。


次に、2。シナリオがやたらと退屈なのは、アクションシーンと非アクションシーンの配置が下手くそだからです。実質的にアクションシーン無しのオープニング(ドラゴンの姿を見せない、と言う趣旨は解りますが、弓を射かけられてびくともしないシーンの一つくらいあった方が良かったのでは?)に続き、不快なビルボいじめから延々とした行軍で約1時間。トロールのシーンまでアクションはなく、実に退屈です。逆に、トロール戦からオーク相手の平原戦の間には、ほとんど一瞬の宝発掘シーンがあるだけ。その後はエルフの谷から野営地での故郷を巡る会話までアクション無し。(岩巨人のシーンは、暴風雨に襲われているのと変わらないので、アクションとしては爽快感が無く計算から外しています)そして、どうでも良い・必要のないビルボと雑魚ゴブリンの一騎打ちのあとは、「なぞなぞ何回出してんだよ!とっとと突いちまえよホビット!」と言いたくなる、ダラダラした謎かけシーンまでアクション無し。かと思うと、その後はエンディングまで延々と戦闘ばかりで、途中で疲れてきます。ダンジョン内の逃走シーンは長すぎますし、一番見栄えのいい対ゴブリンの王戦は、引っ張った癖に勝負は一瞬。そしてまた、「いい加減落ちろよ」な感じの崖っぷち攻防戦と、緩急がまるでついていません。

そもそも、シーンの演出も良くありません。
なぞなぞのシーンが締まらないのは、「ビルボが物理的に優位に立っている」からです。あれが、剣を持っているのがゴクリであれば、狂った相手にリドルで立ち向かわねばならない緊迫感は凄まじい物になります。しかし、剣を持っているのはビルボの方なので、「こんな狂ったモンスター、とっとと突き殺せよ」と言う感想しか抱けなくなります。
と言うか、悪役とのリドル勝負って、普通そう言う物ですよね?物理的に対抗できないから、相手の要求するお遊びに乗らざるを得ず、あるいはリドルと言う物理力以外の土俵に相手を乗せざるを得ない。結局ビルボは地力で出口に達するわけで、シーン全体が不要になってしまっています。

この辺、映像化すると際だってしまう部分ですから、シナリオを変えない意味が解りません。そもそもトールキンの作品は、神話を創造するという目的で書かれた物で、エンターテイメントとしてのできの良さは、上位の目的として設定されていないのですから。

また、血が出ないせいで、へぼい&解りにくい状態になっている演出。ダメですよ、あれ。やたらと乱戦ばかりの上にカメラが引いていますから、血しぶきが飛ばないと「どこで衝突が起きているか」「そしてどっちが勝っているか」が不明確になってしまいます。それこそ、「300」を見習えと言う話です。
なお、「英語書いてるんじゃねえ!」と言う部分は、ええと、アメリカだから仕方ないんですか?でも、地図上にはルーン文字も書かれてるわけで、幾ら何でもあれはなあ…… 異世界を創造することに血道を上げたトールキンに対して、一番の侮辱じゃないかと思うんですよ。

でも、イギリスっぽいムーアや森の情景は、なんかそれっぽかったのでそこは素晴らしいと思います。ホビット村の様子とか、袋小路屋敷の内装とか、ワクワクしますよね。


で、3なんですが、とりあえず企画段階から間違ってます。「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚をやるなら、それこそ一本、長くても二本で、各二時間以内に収めるべきでしょう。スターウォーズエピソード1~3の三部作も大概眠かったですが、こんなの観てられません。大体、ホビットの冒険は指輪物語の1/5程度の量しかないのですから。
逆に、原作の完全再現が目的であるならば、それもまた「それ意味あるの?」「面白いの?」と言う突っ込みは絶対に必要だったはずです。要するに、指輪物語の夢よもう一度!同じ三部作でガッツリ長編やるぜ!と言う企画が、無意味なシーンの連続による冗長なシナリオを産み、削るべき所を削れない緩急も付かない、劣悪な映画体験を提供してくれることになったのでしょう。
「面白い原作をつまらなくする」と言う点において、原作に対する忠実さはそんなに意味が無いんだなあ、との思いを新たにしました。レベルEアニメ版(当BLOG内の感想はこちら)とか、あの辺を思い出します。

と言うわけで、絶対にお勧めしませんが、原作好きなら色々負の意味で語れることも多いので、観に行って損はしないかも知れない、と言うやや矛盾した評価でまとめたいと思います。
実際、原作好きな人間と談義するのはとても楽しい代物ですよ。原作好きで評価高い人も結構居て、それはそれで納得できる面もあるので面白かったりしますし。

まあ、二部については、その時心の余裕があったら観に行こう、ぐらいの感じですかね。




当BLOG内の、映画関係記事はこちら







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この記事へのコメント
というか見る奴が悪い
このネット社会、自分に合いそうな作品なんていくらでもリサーチできる
毎回1800円と二時間ドブに捨てて文句垂れるってドMなんでしょうか
Posted by うっちー at 2013年01月17日 23:05
初めましてU・Mと申します。
自分は映画「ロード・オブ・ザ・リング」も小説「シルマリル」も凄くハマり
ました。小説「ホビット」はオリジナル版(イギリスで最初に発売された
表紙を使った物)と岩波書房版両方とも読み、両方とも完読しました。
(残念ながら「ロード・・・」の原作指輪物語だけは読む事は出来ません
でしたが・・・)なので映画「ホビット」も凄く楽しみだったのですが・・・・
確かにちょっと微妙でしたね。
何も「ロード・・・」の様に戦闘シーンをメインにしなくとも小説にあった
まったり感をもっと出してほしかったです。

そもそも映画「ホビット」は最初からすったもんだの連続で、最初は「前編
は原作に忠実に、後編は完全オリジナル」の2部作になる筈が「前編、
後編共に原作に忠実な2部作」となり、更に3部作に水増しされた様です。
自分は「1部だけではさすがに心もとない(時間がカツカツになるかも・・・)
3部は長過ぎる。2部作ぐらいが丁度良かったのに・・・」と今でも思ってたり
します。
Posted by U・M at 2013年01月22日 20:04
映画ロードオブザリングのファンなので、
似た雰囲気のこの作品を見に行きましたが、
本当につまらなくて、酷いものでした。

調子に乗ってたら竜に乗っ取られちまったので取り戻したいとか、
その時点で旅の最終目的がくだらない。

旅の仲間全員ドワーフで区別つかないし、
問題発生→ガンドルフが魔法で解決みたいなつまらない展開の繰り返し。

2作目、3作目?さあ?今どうなってるか完全に興味ないです。
レンタル100円になったころ気が向いたら倍速でながら見するかもしれない程度ですね(笑)
Posted by ぴろき at 2015年01月14日 20:50
あなたが書かれていることをそのまま己に置き換えてみて?

長々と文句ばっかり、、、笑
退屈だったら退出すればよかったのでは?

面白くなかった割には細かい所までよく観られている様で、楽しんでおいでじゃないですか。

知ったかぶりの偏屈ブログでこれからも自己満足に浸って下さい(*^^*)
Posted by ひどいブログだなぁ at 2015年03月31日 15:38
原作ファンですが、映画は映画で楽しめましたよ。
アクション云々は、好みの問題ですし、実写するに当たっては、ファン以外の人間も見る訳ですから全ての原作ファンの納得が行くように
というのは無理なんだと思いますよ。
そこを念頭に入れて、映画として楽しむというのも、ありだと思います。
Posted by ゆう at 2015年12月30日 09:35
視点がちがうとこんな評価もあり,なんでしょう.
個人的にはそれなりに楽しめた上で,原作本も後で読んで映画の位置付けもよくわかりました.

原作が児童文学ですらか,原作がいかによくできているかがわかります.原作本を読んだ上で,「よく考えられいる」と思うか,「しょーもない演出入れるな!」と思うかが評価の分かれ目ですね.この側面から言えば評価が極端に分かれるのかも知れません.

戦いの描写と言い,ロード・オブ・ザ・リングに匹敵するものがあると思います.トールキンの原作が持つ世界観を完全に描き切ったとは言えないかも知れませんが,決して「駄作」ではないと思いますよ.

個人的には星4〜5の間,の評価です.
Posted by 通りすがり at 2017年03月26日 17:51
あなたがなにも分かってないんだなってことがよく分かりました。確かに自分も下品なドワーフのシーンはあまり好きではありませんが、あなたがカットすべきと思っているシーンの多くは、指輪物語で語られた裏の出来事の描写が含まれていたり、世界観を広げる描写であるため絶対に欠かせないものだと思います。ゴラムのシーンへの感想にしても、本当に原作読了済みなのか疑ってしまいますね。
Posted by hk at 2017年06月25日 00:03
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