2013年01月30日

最近読んだライトノベルの感想

瀬尾つかさ「スカイ・ワールド」シリーズ、宇野朴人「天鏡のアルデラミン ねじ巻き精霊戦記」シリーズ、むらさきゆきや「覇権の皇姫アルティーナ」の感想を、6冊まとめていきます。


スカイ・ワールド (富士見ファンタジア文庫)スカイ・ワールド2 (富士見ファンタジア文庫)スカイ・ワールド3 (富士見ファンタジア文庫)

まず最初の感想は、前にも取り上げたことのある作家・瀬尾つかさの「スカイ・ワールド」シリーズ。

内容は、「ネトゲの世界に入り込んでしまった!」。
と、最近はこの一言だけで概ね通じるようになってきましたが、名作「クリス・クロス」を見れば解るとおり、このテーマはラノベにとって鉄板であります。さすがに、「マイクロチップの魔術師」の魔術師を引っ張って、SFとしても…… なんて言うつもりはありませんが。

さて、この作品が他と一線を画しているのは、「何故それが起きたのか」と言うミステリとしてのSF面を中心に据えた構成を取る点(と言っても、この部分はあくまで物語最大の謎であり、既刊での扱いは伏線程度ですが)と、「ゲーム」に関する含蓄です。概ねこの手の作品は、異世界召喚物の亜種であり、「ネットゲーム」としての必然性を上手くとらえ損なって居る場合が多い物です。しかし、逆を言えば、異世界召喚物の亜種であると言う事は、その異世界の設定こそキモとなるのは、言うまでもありません。

さて、このスカイ・ワールドですが、永遠の空に浮遊島が浮ぶという、アゴラを統べたかつての帝国が残せし許し難き罪業だの、愛すべき馬鹿企業の例によってバランスの悪いRPGだのが即座に連想される基本設定です。
しかし、ゲーマーであればすぐに理解すると思うのですが、この「スカイワールド」は、間違いなく「面白いゲーム」です。豊富なクエスト、作り込まれた世界、過去のネトゲから応用された基本システム。そして、プレーヤースキルの入り込む余地の残し方や、巧みなバランス調整……
恐らく、ディアブロからウルティマオンライン辺りまで、新しもの好きのゲーマーが夢見た「未来のネットゲーム」とは、間違いなくこのような作品だったはずです。見た感じだと、SKYLIIMのデータ量を数十倍にしてバランスをプレーヤースキル依存型に調整した感じでしょうか。
これは、あちこちに見え隠れするTRPGの影響(作者は熱心なD&Dファンらしいです。約3mの棒……)からも見て取れますね。ネットゲームに期待された物とTRPGの面白さは、重なる部分が非常に大きかったですから。

ただ、ちょっと納得がいかない部分がありまして、それはライトノベルの宿命とも言うべきキャラクター配置です。ぶっちゃけた話、巻が進むにつれて女性キャラばかりが増殖していき、結果として焦点を歪めてしまっているのです。これは、一々キャラクターの魅力を描くことに分量を取られるという事と、一周回ってキャラクターの魅力が引き立たないという問題を生じます。何しろ、どいつもこいつも魅力的な女性キャラなので、「魅力的な女性キャラ」と言う属性が薄まってパーティが均一化してしまっているのです。せめて、最終目標であるライバルキャラと、3巻の焦点になるコントローラは男性にしておくべきだったんじゃないのかと。あ、3巻ラストで姿だけ出てきたのもそうですね。
ハーレム物の問題は、「萌え豚」批判とは裏腹に、有難みを喪失して個々の女性キャラが魅力的でなくなってしまうと言う部分にあるので、この路線がこれ以降も続くとどんどん辛くなっていくと思います。

いやあ、巻毎に描かれる様々な形の戦闘・陰謀・ルールの応用は、本当に面白いんですよ。しかしそれだけに、画竜点睛と言うべきキャラクター配置で引っかかってしまうのです。特に、あのパーティ構成って、主人公が気にしている固有スキルなんぞより、余程嫉妬の焦点になると思うので、それはいいのかという突っ込みが、ね……


天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記 (電撃文庫 う 4-4)ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫)

続いて、宇野朴人の「天鏡のアルデラミン ねじ巻き精霊戦記」シリーズの感想。南アジアを思わせる異世界(ま、一応)を舞台に、歴史ある帝国で心ならずも出世していく、やる気のない士官と皇族の話です。これが実に、今時珍しい正統派の戦記物。天の時・地の利・人の和を武器にしたり足を引っ張られたりしながら、軍事的才能と異端である「科学」の知識・方法論で活躍する主人公の姿に、往年の田中芳樹作品を思い出すのは私だけではないはずです。
1巻の段階では、裏設定とは関係ない、異世界描写の粗雑さ(単語・口調の選定や日本語でなければ成立しないはずの慣用句など)が気になったのですが、2巻になると一気にこなれ、また話も大きく動きます。勿論、1巻の段階で戦術描写その他にひかれたがための読書続行なので、これは「良くなった」ではなく「より良くなった」と言う意味です。
多少技術発展が急激すぎるきらいもありますが、そう言う細かい点を補って余りある骨太の展開と脇を固めるキャラクター達に、今後も目が離せません。
ただ、その魅力的な脇役達は高確率で割とあっさり退場してしまうので、上記スカイ・ワールドとは対極の不満が生まれてくるのが不思議なところ。特に、2巻の裏方として凄く面白く使えそうな士官と、一歩引いた位置から主人公を客観視する役割を振れそうだったキャラが惜しいですね。逆を言うと、あれだけ使いでのあるキャラをあっさり捨てられるほど、構想がしっかりしていると言う事ではないかと期待するところです。

なんにせよ、これも有望株としてチェックに入れた作品です。


覇剣の皇姫アルティーナ (ファミ通文庫)

感想のオチに使わせて頂いて申し訳ないんですが、この、むらさきゆきや「覇権の皇姫アルティーナ」は、上記2作と対照的な残念作。
割と魅力的なキャラクターを用意しながらその能力の描き方を決定的に間違え、設定を詰めず、色々とボロボロになっています。
まず、軍師キャラの優秀さを描くのは非常に難しいんですが、こんな「TRPGでLV1パーティが85%の確率で採用します」みたいな作戦を優秀さの証と言われても…… それ以前に、あの厳しい世界の中で綺麗事を高らかに宣言するには、それはそれは強い決意が必要なんですが、なんと皇姫は「母親から庶民の話を聞いていたから」とか言う呆れた理由で説明終了。
いや、アルスラーン陛下みたいに、素朴な正義感から出発して成長していくってんなら良いんですが、主人公はそこを突かないし何とも言えない気分に。それこそ、同じラノベなら烙印の紋章みたいに、もっと強烈な設定を付与できたはずです。


何にせよ、日常物ばかりでなく、割と大きな物語や設定を扱う異世界物が再度隆盛の兆しを見せてくれていて、「多様性こそラノベの命」と信じるオールドファンには嬉しい限りです。(前にも書きましたが、私は俺妹みたいな日常物も好きですよ)
おかげで購入ばかり増えて積ん読山・AMAZONタワーが不気味な増殖を続けておりますが、もう仕方ないですよね。嬉しい悲鳴に押しつぶされて時間切れ試合終了となるのは、オタクと言う人生・生き方のの宿命その物ですから。




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この記事へのコメント
記事と全く関係の無い話で恐縮なのですが、リトルバスターズのアニメは2期をやるそうですね。

感想を見なくなって久しいですが、やはり視聴はやめてしまったのでしょうか?
Posted by xibo at 2013年02月01日 19:09
更新頻度からも解るとおり色々忙しくて、感想書いたところまでで止まってます。正直、視聴を再開する気力もないのですよね。
てか、ああ言うファン向け限定のゆるい作り方をするなら、OVAで良かったんじゃないかと思います。
Posted by snow-windsnow-wind at 2013年02月02日 01:18
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