2013年02月22日

傑作のなり損ない『ROUTE DOUBLE』感想

ルートダブル Before Crime After Days(通常版) ルートダブル~Before Crime After Days~(初回版)

↑左がXBOX360版、右がPC版

ルートダブル~Before Crime After Days~は、最近元気がないを通り越して絶滅危惧種まっしぐらのノベルゲームで、期待されていた一本です。何しろ、コンシューマでそれなりの規模と時間をかけて開発されるオリジナルタイトルと言うだけでも現在希少ですし、監督がインフィニティシリーズで有名な中澤工となれば尚更です。

ではなんでこんなにプレイするのが遅くなったかと言われそうですが、全部忙しさが悪いって事にしといて下さい…… いやまあ、家にいる時間の総量が減ると、ねえ。
と言うわけで、何とか暇をやりくりしつつ時間を捻出してプレイしたのですが、「急いでプレイする必要も無かった」というレベルに落ち着きました。例によって、結論を先に書きましょう。

1,システムは意欲的で話の展開も悪くない。ただし、序盤の話。
2,シナリオのテンポも良く、情報の開示手順も上手い。ただし、序盤の話。
3,とにもかくにも、後半の腰砕けと冗長さで、色々全部ぶち壊し。


まず、最初に選べるルートAをプレイしている間は、「ああ、こんな良作をプレイしていなかったなんて、なんて俺は間抜けだったのだ。余暇時間のブラックホールとしか言いようのないMMOなんか、やってる場合じゃなかった」とか思っていました。これは今でも変わりません。ルートAだけなら十二分に素晴らしい作品です。

本作序盤のシナリオは、実験用小型原子炉を有する研究施設に閉じ込められたレスキュー隊3名と民間人数名が、必死に脱出を模索するという展開。そこに、居るはずなのに見つからない生存者の謎や、発見される惨殺死体、そして高まり行く放射線レベルの脅威という緊張感のある展開をぶち込み、とても面白いパニックアドヴェンチャーに仕上がっています。
この辺、折角の災害物なのに緊張感の欠片も無く、「序盤はひどいが何とか耐えろ」とか言われ続けたEVER17から驚くほど真っ当に進化しており、これは最終的には名作になるんじゃないかと心躍らせましたよ。
危険エリアに踏み込む時の恐怖と言い、目的を細かく設定して引っ張っていくシナリオ展開と言い、冗談じゃなくインフィニティシリーズから一皮も二皮も剥けています。

ところが、ルートBに入るといきなり話は平和なギャルゲー的日常に。実はこれ自体は別に問題無いのですが、「学校の授業」と言う体裁でやたらめったら設定説明が挟まるのに辟易。(私はSFが大好きですし、作中で交されるSF会話など大喜びで読んでいました。作品の元ネタについては、七瀬ふたたびたったひとつの冴えたやりかたの影響をネタに友人と語り合いながら酒飲む程度に気に入りました。)
問題は、設定を垂れ流すSFの悪癖ではありません。とにかく、冗長なのです。BC関連の設定で言えば、重要なのは潜在能力のランクと現在の能力値、それに媒介粒子がある、程度の事でしかありません。A4半分にまとまる内容です。ところが、授業と称し、またTIPSで、果ては通常会話に混ぜ込んで何度も何度も何度も同じ内容が繰り返されるため、うんざりしてしまいます。
ちなみに、設定的には、「原子力施設に偽装したらIAEAに監査喰らうから全部ぶち壊しだろ」と言う大穴があったりするのですが、これは無視できる齟齬という奴です。何が言いたいかと言うと、BC関係も、無理に細かな設定を詰め込むより、細部を濁して「この作品はこう言う前提で動きます」と言う背景としての提示に留める方が絶対に良かっただろうと言う事です。ひぐらしの火山ガス偽装と同じで、専門知識が必要なツッコミに関しては、「現実に可能かは置いておいて、これはできるって言う設定の話なんだな」と普通読者は了解してくれますから。
それ以外にも、とにかく合理的に行動し、そうでなければ生き残れない鉄火場だったルートAと比し、不合理かつ無謀な行動を繰り返すヒロインや、無能な皮肉屋の癖に何故かモテる(ルートAの主人公が、生きるために必死になり周囲を助けて信頼を勝ち得ていくキャラクターだっただけに)ルートBの主人公に辟易します。まあ、後者は好みの問題もあるでしょう。ある程度はしっぺ返しも受けますし、シナリオ上の仁義はギリギリ通されてはいます。むかつきますけどね。チート能力と口先正論が、21世紀ガンダムのあいつを思い出させますし。

しかし、冗長さはその後の本編全体に通底し、ルートB後半から「あるシーンの回想」「そのシーンにかけられていた改変の解除」「さらなる解除」と言った具合に、同じシーンをこれまた繰り返し見せられます。その情報欺瞞解除によって伏線が発動して一気に視界が開けるような演出があればいいのですが、実際は解りきった伏線を見せられたり、そもそも伏線でも何でもないただの繰り返しがほとんど。単なる引き延ばしにしか見えず、イライラばかりが募ります。

シナリオ展開も、ルートB終了後は極めて平板。何しろ、「悪役」の排除が早期に終了しており、同時に一番重要な謎は解除。あとは、悪役の残した影響を一つ一つ潰して回る過程がシナリオの大部分です。確かに、各キャラの過去が見れるのは面白いと言えば面白いのですが、それが本編に直接的に関わるわけでもなく、ただ見せられるだけ。むしろ、シナリオ1で簡便になされた説明だけで本来は十分であり、「そんな回想延々と見せられてもつまんねえよ」としか言いようがありません。

あげくに、「主要登場人物の過去」に絡まない部分は非常になおざりで、9人以外の犠牲者や国家機関等の思惑、あるいは彼らなりの正義と言った部分はまるで光が当たりません。この結果、「敵」が不在のまま進行する物語はクローズドサークルの緊張感を喪失し、垂れ流される設定文書を眺めるだけの実に陳腐な展開に堕していきます。

一応、最後の最後で主人公が選択を迫られるシーンだけはもの凄く面白かったのですが、トゥルーエンドでの展開が、シナリオ上の「スケープゴート」を一個でっち上げて大団円、という最低の内容なのでぶち壊しです。
あの「黒幕」(?)は単にきっかけになっただけですし、正確にはそれを口実に陰謀を巡らせてやりたい放題やっていたあそこと、それを黙認したどこぞが決定的な原因なのは自明。それなのに、「一番悪役にしても当たり障りがない」と言う理由で選んだとしか思えないショボイ組織に全部押しつけて大団円を描かれても、冷めるだけです。
これは、「国家レベルの敵が相手かと思ったら、なんか最終話では単なる暴走した一部局の仕業って事になってたんだけど、これじゃカタルシスねえよな」と言う感想にならざるを得なかった、某選択肢のない同人ゲームと全く同じパターンです。

ただ、どうにも辻褄が合っていないのと、取って付けた感が強いんですよ。なんで犯行声明が出ていないのかとか、この時に限って不祥事の原因を押しつけられていなかったのはなぜかとか。そもそもあの団体が当初穏健だったのは確かで最初の「責任」についても、ほとんど言いがかり(トラウマと前科もった爆弾を、一般人の目にも触れるような所に置いとくって、アホなの?)。完全悪に仕立てるのはちょっと無理。「自分達に被害を与えた」という点で線を引くなら、もっとごついのがいるわけで。
だので、「福島後」の情勢に鑑みて、国と自治体を全面的な悪役に仕立てるのを躊躇したのかもしれません。結果は、上記のように物語の関節が外されて興ざめなだけなのですが。

ただ、これも実は取って付けた感が否めないとはいえ、グランドエンド後のエピローグで描かれる未来へのメッセージは、「福島後」に話をまとめる綺麗な演出になっていて、上手いなと思いました。問題はやはり改変その物ではなくて、急遽行われた事なのでしょう。勿論、発売が延びている間に改変が行われた、と言うのは私の予想に過ぎませんが。

さて問題点の指摘に戻ると、折角用意された特殊な感情選択システムにしても、機能しているのはやはりルートAのみ。以後は、単なるその場その場の選択肢にしかなっていません。

とりあえず、インフィニティシリーズの頃から比べると、序盤の掴みや緊張感の盛り上げ方、そして何より文章能力は大幅向上しているので、ノベルゲームとして水準以上。しかし、推敲・刈り込みをしてないんじゃないかというレベルの冗長なシナリオと腰砕けの展開は、傑作の可能性を粉々に打ち砕いて「良作と凡作の中間?」程度の評価に落ち着かせてしまいました。
とにかく発売してくれただけでもラッキー、一定水準以上なら言う事無いじゃないか、と言う客観的評価もありかと思いますが、私としては「定価で買ったのは厳しかったかな」と言う感じです。

もっとも、ルートAは本当に面白く、システムもシナリオも実に良くできているので、予算が尽きたかそもそも製作時間を見誤ったかという感じなのですが。最初の結論でも書きましたが、序盤の面白さは正にノベルゲームの真骨頂ですよ。

本当に、絶滅が危惧されるジャンルなので、こう言う評価を付けなければならないのは残念なのです。しかし、偽らざる気持ちとしては以上のように書くしかありません。
まあ、決して駄作ではありませんから、このジャンルを愛し「次」に繋げたいと思う諸兄におかれましては、新品購入して市場から回収してあげるとよろしいかと思います。世間的な評価は、決して悪くないようですし。



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この記事へのコメント
私は既に手放してしまったので確認できないのですが、システム周りが非常に
クソだったと記憶しております。攻略に必要なあの感情を操作する奴ではなく、スキップや動作の重さです。

全くもって記事とは関係ないのですが、管理人さんもあのガンダムの主人公は嫌いだったのですね。
Posted by xibo at 2013年02月24日 17:08
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