2013年03月18日

気持ちの悪い宗教映画 『フライト』 感想


↑何か貼り付けようかと思ったら、AMAZONにはDVDどころかサントラすら置かれていないので、潔く空欄。
まあ、新作映画のレビューでアフィ商品が売れた事なんぞ一度も(本当に一度も)ないので、気にしない事にしましょう。



「フライト」は、2013年3月1日公開の映画です。飛行機を必死にコントロールして背面飛行で不時着に持って行く予告編で、興味を引かれた人も多かったのではないでしょうか?かく言う私もその口で、期待に胸躍らせてロードショウを見に行ってきました。
しかし、感想は表題のとおりでした。

ただし、あちこちで絶賛されているのが理解できる程度には、「良い話」ではあります。
しかしそれは、以下の内容を了解できればの話です。

この映画の内容:妻と離婚し子どもには軽んじられ、アル中でヤク中のダメ男。彼は、大きな事件をきっかけに、立ち直る事ができるのだろうか?

以上の内容に興味を引かれた方は、勇んで映画館に足を運ぶと良いでしょう。多分、あなたが満足する映画になるんじゃないかと思います。この内容に納得のいく人は、大体誉めてるみたいですし。


しかし、予告編で「大事故にまつわるサスペンス」や「脛に傷のある英雄は賞賛されるべきか?と言う主題の掘り下げ」みたいなのを期待していった人間は、渋面で映画館を後にする事になるはずです。私のように。

と言うわけで、予告編に引っかけられて興味もなければむしろ反吐が出るという感想を抱いた私による要約は、以下の通りです。


1,面白くなりそうな要素を端からはね飛ばし、下らない人間再生の物語に落とし込まれたひどい駄作
2,気持ちの悪い宗教観に裏打ちされた物語は、あくまで共感を拒む


まず1ですが、予告編で観客が期待したのは、大事故から上客を救った英雄譚の裏に隠れた事故の真相、みたいな話だったと思います。しかし、映画が始まった瞬間から「英雄の真実」は画面からダダ漏れで、いきなり肩すかしを食う羽目になります。アルコールを飲んでいたかどうかが「謎」として提示されるのではなく、それは物語の前提。そりゃこの内容で予告編作ったら観客来ないですよね。詐欺的手法でしか物が売れない興行師どもは、低品位翻訳で値段二倍の商売をSTEAMに中抜きされて滅びかけてる翻訳PCゲームと、同じ運命を辿るんじゃないですかね?

そして、真実が駄々漏れならそれはそれとして、次に面白い主題となりうるのは、「奇跡の操縦で多くの命を救ったろくでなしを、どう遇するべきか?」と言う部分でしょう。そうそうに弁護士が登場しているので、これは陪審員を交えた法廷劇か?と期待するのも当然だと思います。しかし、これまた話はそっちの方へは行きません。
「飲酒操縦の常習犯で、免許取消は当然。しかし、彼でなければこの事故から乗客を生還させる事は出来なかった。さて?」と言う部分ですね。こんな面白いテーマがあるのに、話は主人公の内面に潜り込み、彼の罪の意識に焦点を当ててウジウジとつまらない画面を連ねます。まあ、罪と恥という東西の文化的断絶がどうこうとか言う戯言(もっともらしいけど論証されたわけではない)もおありかと思いますが、ストレートにつまんないんですよ。

そして、2と合わさるのですが、何故つまらないかと言えば、「個人内面の罪」を主題にした瞬間に、話の落とし所は「主人公が悔い改める」以外になくなってしまうからです。実際、序盤でどうやらテーマがそこだと解った時点で私が予想したラストの展開と実際の展開は、寸分変わりませんでした。

結局ですね、これキリスト教の「罪を認めて悔い改めれば全部チャラ」と言う宗教観がベースと言うか、それしかないんです。実際には、彼の「罪」と「功」は非常に慎重な取り扱いを要し、単に罰とセットで運用すれば良いと言うものではありません。無罪放免は論外としても、彼しか救えなかった命があれだけあったわけですから。少なくとも日本人の観客は、篤信者のコパイロットに対して主人公が中盤で毒づく「客の命を作ったのは、神じゃない。俺だ!」と言う叫びに共感するでしょう。
つまるところ、彼は客観的には誰に対しても「罪」を犯しておらず(今までの飲酒操縦で乗客に対して与えてきた潜在的危険はありますが、それはあくまでも顕在化していないわけです)無理矢理「裁く」ためには「内面の罪」をあげつらってみるしか無かったわけです。しかし、優秀なダメ人間を裁くために、客観的な功を無視して内面をあげつらうのは、正に宗教家の反吐が出る手法です。社会に何の貢献もしていない古書の信奉者が、社会に有用な人材をつかまえて「あなたには罪がある!」とかやらかす。それはブラック企業の研修と同じ、自分(とその神)を優位に立たせるための言いがかりです。
この映画について言えば、主人公の社会に対する貢献と危険性を秤にかけて「裁く」事こそ本来の社会の機能であって、内面なんぞ副次的でしかないわけです。映画のテーマがそこじゃない、と言うのはその通りですが、では何故彼は長期の懲役を喰らっているのでしょう?少なくとも、あの事故については「過失致死」は本来絶対に成立しないはずです。恐らく主人公が取り調べ段階で「自白」し、裁判で争わなかったという事だと思うのですが、それは整備不良で機体を運用した航空会社を免責し罪のありかを覆い隠す最低の自己満足です。

あげくが、主人公が罪を告白した瞬間、晴れやかにアル中を脱却して奥さんと子どもも尊敬してくれるようになりました!と言うご都合主義たるや……
成績も上がって彼女もできて部活で優勝!みたいな進研ゼミ(あるいはパワーストーン広告)メソッドに、本当に宗教基盤の物語って唾を吐きたくなる代物に仕上がるよな、とナルニア国物語の背表紙に紙つぶてを投げつけながら呟くしかありませんでした。

まあ、各所で賞賛されてる事から解るとおり、合う人には大きな感動を呼ぶらしいので、こう言うのがお好きな人はどうぞ。力は入ってますし、主要登場人物の演技も上手いですよ。デンゼル・ワシントン、どうしようもないダメ人間でいい味出してます。
まあ、私の感想は上記の通りなわけですが。


P.S.
ところで、アメリカの事故調査委員会は、関係者が保身目的に原因を隠す事を防ぐために免責特権を持っていたと思うのですが、この映画に描かれている手法って正しいんでしょうか?あなたの証言は裁判で不利な証拠として使われる可能性が…… とか言われたら、そりゃ関係者一同口をつぐみますよね。



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タグ :映画

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